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第6話

 雨あがりで心配だったけれどもう乾いていた。

 カンカンカンと乾いた音を響かせて進むのが鉄階段の魅力。

 これが住宅街だったなら騒音になるのは間違いない。

 ここは山の中……といっても町外れの丘みたいなものだけれど。

 おれだけの秘密の憩いの場所。

 と言うのは、おおげさであり、なにさまだよな。

 現実には、訪問者。それも気まぐれで気ままにふらりと、たまにだけ。


 「あ」


 という声が頭に降ってきた。

 見あげると逆光の少女。

 ふわりと風にひるがえる長い髪、つけねのあたりまで短い短パン。

 影になっているのに、よくわかる。

 細くて頼りなさげにも見えるのに、あらがえない魅力的な太もも。


 「あ」

 おれも思わず声に出る。


 「ひょっとして、よく来る?」


 え?

 なんて言った、なんでこんなに、距離を詰めてくる声なんだろう。

 顔がよく見えないし、見ようとすればするほど、まぶしい。

 思わず手をかざしてしまった。


 「あ、ひょっとして、まぶしい? ぅフフフ」


 その特徴的な語尾でピンと来た、ああ知ってる、よく知ってる、でもまさかこんな場所で。


 「そっちこそ」

 おれは思わず言い放つ。

 カンカンと鉄階段の響きがして、陽射しの角度が変わった。

 およっ、とよろけるように身をひるがえす彼女。

 急いだわけではないけれど、スピードの加速で自己制御が外れてしまった。


 「っと!」

 おれのほうこそ、よろける。



 「あぶないよー」

 と気の抜けた炭酸な、声。間違いない、その話し方は君。

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