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第4話

 少し視線を斜め上へ向けると、街の向こうは山の尾根。

 鉄塔みたいな展望台が見える。


 きっと眺めがいいだろう。

 いつも夢を見ているだけ。

 希望が砂になってこぼれるような感触。

 どんなに悲惨な結末を想像したとしても、ある種の希望となる。

 だって、おれが失敗すれば父は嘆くから。

 嘆かせてやる。

 だって、おれが失敗すれば母は落ち込む。

 ざまあみろ。

 でも姉貴は兄貴と揃っておれを喫茶店で他愛ない会話。

 なんだろう、この安心。

 なんでかな、その笑顔。

 失敗したんだよ?

 世間体を壊しちゃった。

 恥さらし、なんでしょう?

 言いたいけれど言えなかった。

 これ以上、自分を卑下したくない。

 情けなくも、おれはおれを見下せなかった。



 いつか登った記憶がある。

 いつだったっけな。

 またいつか、登りたいけどな?


 『いつかって、いつだよ!』

 自分の中から叫び声。

 そうだよ、いつかなんて思っていたら時が経過するのを見送るだけ。


 おれは歩き続ける、

 いま歩いてきた道を、

 この延長線上、

 本来ならば帰宅につながる舗道をそれて、

 ガードレールに区切られた狭い歩道を、

 ゆっくり、さっきまでと同じペースで、

 進む。


 ああそうさ、いまから行こう行くよ登るよ、

 展望台へ。

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