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第367話 GWなので遠出してみた

 5月3日、私たちはなんと日光にいた。

 ダンジョンどこに行こうと相談してたんだけど途中から修学旅行の話になってしまい、軌道修正できないまま修学旅行の話をしていたら「そういえば日光にダンジョンあったよね」というところに着地したのが4月下旬。


 本当はちょっと足を伸ばしたところに観光ついでに前泊して、翌日ダンジョン攻略して戻ってくるつもりだったんだよね。

 でも4月下旬にGWの宿が取れるはずもなく……。


「ホテルが取れないならダンジョンに泊まればいいじゃない?」


 そんなことを言い出したのがバス屋さんだったので、みんな最初は当たり前に「えー」と反対した。

 でも考えてみれば上級ダンジョンで最下層に行こうとしたら、ダン泊は仕方ないんだよね。実際奥多摩ダンジョンの時やったし。

 幸い、あの時買ったシュラフとかエアマットとかが5人分あるし。バス屋さんはバス屋さんで自分の持ってるそうだし。


 と、反対できる要素があまりないままずるずると話が進み、Y quartet+1とダンジョンエンジニアのあいちゃんというメンバーで日光ダンジョンを攻略することになったのだ。



「こんにちワンコー。Y quartet+1のダンジョン配信はっじまっるよー! はい、今日はなんと日光に来ています。小学校の修学旅行以来です」


 いつものお約束の挨拶をすると、ヤマトが私にぴょんと飛びついてきた。慌てて抱き留めると、カメラの方を向いて柴スマイルをしながら尻尾をぶんぶん振っている。

 こ、これは、もしかしてファンサですか!? とうとうヤマトはファンサまで覚えたのー!? 最強可愛いがこれ以上加速するの? 尊死する人が出ちゃうよ!


『わあ、ヤマト可愛いいいい!』

『こんにちワンコー』

『日光? 日光杉花粉?』

『杉並木だよ』

『花粉症なんだろ……(´;ω;`)』

『私も小学校の修学旅行は日光だったよ』


「あー、俺も小学校の時は日光だったわー」

「というか、神奈川って私立以外は日光じゃないですか?」

「むしろ、関東は大体日光って話」


 しみじみと「俺も日光」アピールで馴染み感を見せてくるバス屋さんに対して、聖弥くんと蓮がバッサリ切り捨てていた。うん、なんか小学校の修学旅行は専用の電車に乗っていったもんね。他の小学校も一緒でさ。


『お年寄りをいじめちゃあかん』

『察しておあげ……』

『ひとりだけ歳が違うの気にしてるから混じりたいんだよその人』


「ねー!? 俺まだ22なんだけどー! なんでお年寄りとか言われてんの!?」


『他が高校生なのに、ひとりだけ大卒新入社員でもおかしくない年やんけ』


「だ、大卒新入社員……」


 視聴者さんからの扱いに物申したバス屋さんが、コメントに返り討ちされてがくりと崩れ落ちたー!

 ていうか、大卒新入社員か……そう考えると凄く大人な気がするのに、バス屋さんを見てると全然そうは見えないな。年齢だけ見たら、「高校生と先生」でもおかしくない歳の差だったのか。


 そしてバス屋さんを無視して、彩花ちゃんは隣にいるあいちゃんを肘でつついた。彩花ちゃんが雑な扱いをする女子って、激レアなんだよね。それだけ気心が知れてるってことだけども。


「あいっちさー、武器持ってないけど戦う気あるの?」

「ないけど?」


 今日は自前の布防具を着てきたあいちゃんだけど、武器はダガーだけだね。それを見て彩花ちゃんが半眼で問いかけたけど、あっさり戦う気はないと言い返されてる。


「戦ったらメイク落ちるじゃん。私はそういう顔出しはNGだから」

「じゃあなんで来たのさ~」

「だって聖弥くんがいるし、Y quartetと一緒にいて私が戦うことになるのおかしくない?」


 ……前回諏訪ダンジョンで、思い切り戦って「ヘビビターン事件」を起こしたくせになあ。

 まあ、あの時はダンジョンエンジニアを除くと3人だったけど、今は5人。死角も減るしあいちゃんが戦う必要は確かにない。あいちゃんが戦う必要に駆られないように行動するのが私たちの正解だよね。


「GWに日光一泊するのに、逆になんで着いて来ちゃダメなわけ?」

「リア充滅せよ……リア充滅せよ……絶対ふたりきりにさせるもんか」


 あいちゃんは腰に手を当てて堂々と開き直った。それに被せるようにバス屋さんの声がお経のように響く。普段は見るからに明るい人なのに今は暗い表情だから、コメントも「www」がよぎっていくね。


「バス屋さん、特急のチケット取りに行ってくれてありがと~♡ 展望車スイート豪華で凄かったね、アイリ感動~」

「うっそ、Y quartet+1に入ってから初めてねぎらわれた! 俺感動ー! いいよいいよ、アイリちゃんのためなら俺頑張る!」


 今日は家出してないらしい白猫を即座に被ったあいちゃんが、営業ぶりっ子で可愛くバス屋さんにお礼を言う。そしたら瞬時にバス屋さんは陥落した。

 むしろどこに陥落できる要素があったのかこっちが驚くわ!


『チョロチョロのチョロさんじゃねーか』

『白猫に騙されおって』

『目の前にそいつの彼氏いるぞ』

『バス屋さんのこういうところ可愛いね』


 あまりに鮮やかな手のひら返しすぎて、ツッコミの嵐だよ……。


 うん、ここに来るとき特急に乗ったんだけど、バス屋さんがチケット取ってくれて、しかも先頭車両の凄い個室を押さえてくれたんだよね。元々ヤマトがいるし個室がある電車だから、個室取れたら個室の方がいいよねって言ってたんだけど。


「6人プラス犬って言ったら、展望車スイート空いてるからどうですかって言われてそれもそうかーって」


 バス屋さんがすっごい軽く言ってたからこっちも軽い気持ちでいたら、乗った展望車スイートは思ってたよりはるかに豪華でビビったんだけどね。電車好き羨望の的なやつでは? よく空いてたなあ……。まあ、追加料金も結構するから、私たちみたいに大人数じゃないと取りにくいのかもね。


「というわけで、今回のゲストのダンジョンエンジニアはアイリちゃんです」

「えへへっ、よろしくニャン!」


『もう猫被らなくていいよ。てか、今の今まで普通にしゃべってたやろがい』

『存じております』

『大丈夫、諏訪のヘビビターン事件は忘れてない』

『おもしれー女が増えてるwww』

『よろしくワン』

『こうしてれば普通の可愛い子なのになあ』

『中身は益荒男ますらおなんよな……』


 聖弥くんがあいちゃんを紹介し、あいちゃんがウインクしながらあざといポーズを取ったら続々と「存じております」とツッコミのコメントが。

 聖弥くんは笑顔でいるけどあいちゃんはピキッと青筋立ててるし、私と蓮と彩花ちゃんは遠い目をしてしまった。

 いやー、うん、ヘビビターン事件があったのに今更猫を被ったのにはさすがの私もちょっと驚いたよね。


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