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第290話 修行の結果は

 蓮と颯姫さんが起きてきたので、部屋を出る前に軽く予定の確認をすることになった。


「これからあと1層戦って、お昼休憩を挟んでまた戦うわけなんだけど、今日の夕方を目処に一度外に出てみよう。出入りが面倒だから今までしてなかったけど、そろそろ成果の確認もしたいしね」


 ライトさんが「成果の確認もしたい」と言ったから、急にドキドキし始めたよ。

 確かにここって1層から5層までを突っ切らないと外に出られないからそれが面倒なんだよね。

 敵が弱いダンジョンならモンスターなんて無視して走って行けるんだけど、それなりに敵も強いし。


「ステータス確認して、もう少しLVあげした方がいいと判断したら、また戻ってこよう。それでいいかな」

「はい、それでお願いします」


 正直、どれくらいLVが上がってるのか、全く見当が付かない。

 LV80を超えてるライトニング・グロウが現在進行形で攻略してる層とかで戦ったりしたし、でも人数は多いし……ってな具合で。

 電波が通ってればダンジョンアプリで簡単にチェックできたんだけど、それもできないんだよね。


 だから、今日の夕方をひとつの区切りにすると言われて、なんだか緊張するんだ。

 本当だったら、5日掛ける予定だった。

 でも、今日はまだ4日目。しかも昨日は蓮が寝込んだりしてるし……。まあ、その寝込む前までに5層戦ったわけだから凄い経験値は入ってるのは間違いないんだけどね。


 アースドラゴンとかも経験値凄そうだし。普通のダンジョンで倒せばドロップが凄くて、魔石だけでも数千万で売れるっていうから、経験値オンリーに換算したら……想像つかない。


 でもさっきアースドラゴンと戦ったとき、みんなで一斉に攻撃を仕掛けようとしたら一番最初に私が着いたんだよね。

 ということは、AGIは相当上がってる……はず。


「予定では5日でしたよね? まだ4日ですけどいいんですか?」


 私がちょっと心配だったことを、聖弥くんが代わりに口にしてくれた。ライトさんは顎を撫でながら、珍しく上機嫌そうに笑っている。


「予想以上に進みがいいからな。元々Y quartetは強さの割にLVが低かったから、俺たちがLVを10上げるのと、LV30台の君らのLVを10上げるのじゃ必要な戦闘数が全然違う。ましてゆ~かちゃんはLV1まで戻っちゃったから、補正のことも考えれば元のLVまで戻るだけでも十分だし」


 ライトさんの説明に私は頷いた。とにかく私たちは装備の補正が大きいから、元のLVに戻れれば上級ダンジョンを戦い抜ける強さはあるはず。


「まあ、でも不確定要素が多すぎる。アースドラゴンはボーナスだったけど、寧々ちゃんの時は彼女自身はあまり強くなかったし、ここまで下層で戦ってなかったからなあ」

「うん、むしろゆ~かちゃんのLV上げを兼ねて、私たちがここの攻略を進められてるくらい助っ人としては心強い。このペースだと、今日中に75層は行けそうでびっくりよ」


 そうか、ライトさんや颯姫さんの最初の想定よりもずっとハイペースで進んでるんだ。だったら、確かに一度LVは確認してみた方がいいよね。


「じゃあ、午前の1戦と午後の戦闘、頑張ろう。作戦は当初の通り、スリープ&パラライズを基本にして」


 その一言で確認は終了し、私たちは72層へと降りて行った。



 午前は72層。そしてお昼休憩を挟んで午後は73層から75層。……無事に、攻略できちゃった!

 アースドラゴンが71層にいたせいで「ここから連続でドラゴン四天王との戦いだったらどうしよう」なんて思ってたんだけど、あれは本当に純粋なレア湧きだったみたいで、魔法使いふたり体制でのスリープ&パラライズはとても有効に働いたのだ。


 これ、本当に蓮と颯姫さんという高MAG魔法使いがふたり揃わないとできない戦術だから、幸運だったよね。RSTさえ競り勝てれば、本来自分たちが倒すのにはちょっと面倒な相手でも安全に戦うことができる。


 まずは一度外に出て電波の入る場所でダンジョンアプリを確認しようということになり、私たちは夕食の前に6層へ跳んで敵を適当に蹴散らして5層への階段へ向かった。

 そこからは、敵も格段に弱くなるし、9人もいるから進むのは楽!


 地上に出てダンジョンの入り口を見て改めて思ったのは「本当に邪魔なところに作ったな……」だった。

 ダンジョンハウスもないから着替える場所とかもないし、ドロップもないから本当に過疎ダンジョンなんだよね。


 さて、私のステータスはどうなったかなとスマホを取り出し、久々に「圏外」じゃなくて電波が届いてる表示を見て感動!

 ちょっと震える指でダンジョンアプリを立ち上げて、自分のステータスを表示。ああ、緊張する!


「は? バグってる?」


 思わず一言目に言ってしまったのはそれだった。まずLVが52とか想定外にも程があるんだけど。あれ? でも「特訓が終わる頃にはLV50は軽く超えてる」とかいわれたような気も?


「LV64! うわー、倍近く上がってる!」


 いや、でも蓮がLV64って言ってるから、私のLVが52でもおかしくはないのか……。

 でも、これは――おかしい。絶対おかしいよ!


ゆ~か LV52

HP 624/624(+250)

MP 156 /156(+170)

STR 218(+165)

VIT 197(+150)

MAG 130(+95)

RST 94(+100)

DEX 239(+185)

AGI 276(+165)

装備【村雨丸】【アポイタカラ・セットアップ】【オリハルコン・ヘッドギア】【毒無効の指輪】


「ねえ、私のステータスおかしいんだけど!?」


 周囲に一般人がいる状況なのに、思わず叫んじゃったわ!

 寧々ちゃんがLV54だったのをこの前見たばかりだもん、LV52でこんな数値になるわけない!


「何これ!?」

「MAG130!? ゆ~かちゃんが!? え、私より先にワイズマンになれるの?」


 みんなが私のスマホを覗き込んで、騒然とした。

 確かに最初のうち魔力の指輪は装備してたから、前よりはMAGは伸びると思ってたけど……他の数値も明らかにおかしい!


「ちょっとダンジョンに入ろう。1層なら通行人の邪魔にならない」


 ライトさんが私の背を押して、全員ぞろぞろとダンジョンに戻る。

 アプリの方は表示させたままなら電波入らなくなっても見られるし。


「改めて、何このステータス。強すぎるわ」


 ママが私の右腕をガッと掴んで、スマホを凝視している。


「……えーと、まずこれがゆ~かちゃんだけに起きてるかを検証しよう。蓮くんと聖弥くん、ステータスは異常に伸びてるかい?」


 タイムさんが額に手を当てて若干の混乱を示しつつ、それでも冷静に問題を切り分けようとしてる。


「いや、LVは前から見ると倍で、ステータスもほぼ倍に近いです」

「僕も」

「わかったー!!」


 蓮と聖弥くんがお互いに画面を覗き込みながらタイムさんに答えたところで、彩花ちゃんが凄い大声で叫んだ。


「何が!?」

「何がじゃないよ、この場の謎といったらゆずっちのステータス成長率がおかしいって事だけじゃん!」


 私が思わず尋ねたら、すっごい呆れた顔された。

 え、彩花ちゃんにはこのバグったとしか思えないステータスの理由がわかったの!?


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