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第164話 久々ですがダン配です

 定期テストは、冒険者科もそれなりに勉強する。

 とはいえ、普通の教科の難易度はそれほどでもないし、時間割の圧倒的な部分を体育や実技系が占めているから、普通科に比べたらテスト科目自体が少ないんだよね。


 でも私は大学進学も視野に入れてるので、勉強は頑張らないといけない!

 てなわけで、ダン配はテスト後までお預けしつつ、サツキとヤマトからの「遊べ」という圧力を受けつつカリカリとテスト勉強ですよ。


 蓮と聖弥くんは冒険者科よりちょっとだけ偏差値が上の学校から転校してきたので、勉強に関していうと私と同じくらいか、科目によっては上。

 なので「おまえにも苦手ってあったんだな」とか言われつつ、ボイトレの後はうちで勉強会。


「苦手というほどじゃないけど、好きじゃない科目くらいあるよ……」

「数学と英語な。……ん、まあこれくらいなら俺にも教えられるからいいけど」


 なんか! なんか! 今まで一方的に教える側だったから、蓮から教わるって微妙に屈辱なんだけども!

 でもちょっと困っているときにすぐヒント貰えるのはありがたいし……複雑な気分ですよ。


 聖弥くんはオールラウンダーだから勉強もできるって事は簡単に想像できてたけど、以外にも蓮がいろいろできる。悔しいけど、ほんっと悔しいけど!!


「テストが終わったら、鎌倉ダンジョン本格攻略しよ」

「はいはい、わかったからそのページ終わらせちゃえよ」

「うーーーーーーーー」


 自分の勉強をしつつ私の進み具合をチェックしてくる蓮に頬を膨らませて不満を表したら、聖弥くんが妙にゆるい目でこっち見てニヤニヤしてた。何その目。


 テストが終わったら鎌倉ダンジョンでスケルトンを木刀でバラバラにしてやる!

 そうだ、今回はダンジョンエンジニアは滝山先輩に頼んでみようかな!

 ……なんて思いつつ、私はテスト勉強を頑張った。



「こんにちワンコー!! Y quartetでーす! 今回も懲りずに鎌倉ダンジョンに来ていまーす!」

『こんにちワンコー』

『本当に久々だな』

『お待ちしておりました』

『全裸のままだったから風邪引いた』

『ゆ~か、いつもより弾けてないか?』


 コメント欄が流れていく。全裸待機の人、雑談配信からずっと全裸だったみたいな言い方やめなさいよ。

 そして私が開放感に満たされていることは、挨拶だけでもうわかっちゃったみたい。


「昨日までテストだったからさ」

「ゆ~かちゃん、ダンジョンにいけなくてストレス溜まってるみたいだから、今日は凄いことになりそうだよ」


 蓮と聖弥くんがすかさず補足すると、「なるほどー」が弾幕の様に通り過ぎていった。


「私は普通の人間なんで、得意科目と苦手科目くらいあります! 全部できる聖弥くんとか、特定科目に関してはクラストップじゃないかっていう蓮がおかしい」


『そりゃ、複数人数がいれば誰かがトップになるんだぞ、当たり前に』


「ぐう」


 正論のコメントが流れてきて、私は思わず呻いた。


『ゆ~かの得意科目は?』

「生物です! あと音楽と体育」

『予想を裏切らないな……こんな時だけ』

「あんまりうちの可愛い妹をいじめないでやって-」


 私が膨れていたら、五十嵐先輩にフォローされてしまった……。

 滝山先輩を誘ってみたんだけど、「志望を芸大に変えた関係で、これから勉強漬け。模試を受けてみたらギリギリ行けそうなんだよねー」と輝く笑顔で言われちゃって、前回と同じく五十嵐先輩にダンジョンエンジニアをお願いしたんだよね。

 寧々ちゃんはもうちょっと知識とか付けないと怖いって。


 五十嵐先輩の武器はボウガンだ。サブ武器というか近接用として、体育祭練習期間中にゲットしたミスリルダガーを貸している。売るの忘れたままアイテムバッグに入りっぱなしになってたんだけど、使い道があって良かったよ。

 そして、防具は初心者の服に例のアポイタカラ製緑ゼッケン……なんか、五十嵐先輩は芋ジャーがウケるのが楽しいらしくて、このままうちのダン配に出る時はこれで貫き通しそうだなあ。


 ヤマトは例の暴走犬Tシャツね。でもアグさんに言い聞かせてもらってから、半分近く言うことを聞いてくれるようになったから、前に比べると凄くいいんだけどね。


「今日はー、いけるところまで、できればボスまで行っちゃいたいと思います」

『ヤマトの暴走で行けないのに1000円』

「いやー、それが実はすっごい今更だけどヤマトを暴走させない方法に気づいちゃって」

『なんと!?』


 驚きの声がめちゃくちゃ溢れかえってるけど、実は簡単なことだったんだよね。


「聖弥くん、ラピッドブーストお願い」

「オッケー。ラピッドブースト!」


 その場にいた4人とヤマトにラピッドブーストがかかると、私はヤマトのお腹の下に手を入れてひょいと持ち上げた。


「こうして抱っこすると足が踏ん張れないので、バタバタされてもこのまま連れて行けるんですよ。本気で暴れられたら無理なんだけど、マスターの私が抱っこしてるときは私が怪我する様な暴れ方はしないですね」


『目から鱗!』

『小さいからこそできる技だな!』


 うん。小さいからこそできる技。

 ヤマトがステータスに相応しいくらいでっかかったり、サモエドみたいにでっかかったりしたら、ちょっと無理だったね。

 左手で抱えたまま右手で村雨丸を振りつつ移動できるくらいだもん。


「じゃあ、少なくとも10層まではこのまま走るって事で!」

「いつものだな。了解」

「行ってきまーす!」


 体育祭までやってた「鎌倉ダンジョン1時間RTA」でも、これに気づいた途端10層まで簡単にいけるようになったんだよね。

 中級ダンジョンは20層までだから、今日はそこを目指すぞ!


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