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第135話 合宿のお釣り

 マユちゃん進化後、全員が一気に上がったLVのせいもあって、私たちは快進撃を続けた。

 正直、素のパラメーター的には中級の適正と言われてる範囲内なんだけど、装備による補正がエグいわ、ヤマトとマユちゃんが強いわ。


 結局、5層まで潜って私以外はLV18まで上がった。マユちゃんは17、私とヤマトは20だね。


「これ、いい貯金ができたんじゃない?」


 ダンジョンハウスに戻ってからステータスチェックしつつ、口元の緩みを抑え切れないあいちゃん。


「うん、ステータスが上がってるから、これからは通常装備で戦い方の方を練習しつつ、地道に経験を積めばいいと思う」


 今回はまっとうな事を言っている須藤くん。


「DEXが上がったー。レシピも増えてるし嬉しい」


 寧々ちゃんは半泣きに近い顔で……DEXの伸び、そこまで気にしてたんだね。


「てか、ツノウサってテイムしやすいじゃん? テイムして修行させたらこんな使える従魔になるなら、テイムしようかなって私も思い始めたよ」

「……こんだけでかいウサギの餌代って凄そうだね」

「私は当分マユちゃんの餌代のためにダンジョンに潜ります」


 クラフトズ、三者三様の意見。

 これが肉食動物ならやってられないけど、幸いにもウサギだもんね。

 中級ダンジョンで戦えれば、うまくいくと日給数万円行くこともあるらしいからなあ。

 今日は……ゴーレムの魔石を始めとして魔石系がヤマトによってほぼ全滅したので、途中でドロップした「蜘蛛の糸」4個くらいしか儲けが無い。

 ヤマトがまだ食べてなかったゴーレムの魔石は3つくらい回収できたけどね。


 蜘蛛の糸はそこそこのお値段になるけど、また、これがクラフト素材になるもんだから、紛糾するよね。


「今日は経験値も入ったし、元はと言えば僕が合宿で最初に足を引っ張ったのもあるから、僕以外の4人で戦利品を分けて」

「いや……そもそも儲けが出なかったのはヤマトが魔石をバリバリしちゃったせいだから、私以外でひとつずつドロップアイテムが取り分って事で……」


 紛糾っていうか、私と聖弥くんの遠慮のしあいだよね。

 今日追加でダンジョンアタックすることになったのは、聖弥くんが原因寧々ちゃんもちょっとだけ原因

 儲けが出なかったことに関しては、私が原因。


 しばらく聖弥くんと私の間で話し合った結果は、「クラフトの3人はクラフト素材にもなる蜘蛛の糸をひとつずつ。後の1個とゴーレムの魔石は売り払って、何か食べて帰ろう」って事になった。


 結果、儲けは16000円。交通費を引いて、ちょっといいご飯を食べてちょうどいい金額。

 ヤマトとマユちゃんはダンジョンハウスで預かってもらい、しゃぶしゃぶ食べ放題のお店でお寿司も頼めるコースにして、ワイワイと楽しい夕飯を食べました。


 かき氷器とソフトクリームメーカーがあったんだけど、須藤くんが器にソフトクリーム作ったところに白玉を載せて、抹茶シロップ(多分かき氷用)を掛けてからきなこ掛けてて、天才かと思ったね!

 真似して食べたら美味しかったー。


「そういえば、柚香ちゃん、この前配信で次行くダンジョンのヒント出しちゃったよね」


 ソフトクリーム載せたワッフル食べつつ、聖弥くんがそんな事を私に言った。


「ヒント……出したっけ?」


 普通に覚えがございませぬなあ。夏らしく、とは言った気がするけど。


「鎌倉ダンジョンでしょ? 夏らしくって言ってて中級だったら、活動範囲からいってもうあそこしか無くない?」


 うげっ、あいちゃんまで看破してる! そんなにわかりやすかったかなあ?


「事前に配信日告知もして、ダンジョンも割れてるってまずくないの?」


 す、須藤くんまで……。


「まずいと思う。まずいと思うから、それを利用しようかなーって」


 溶けかけのソフトクリームを口に運びつつ、聖弥くんの王子様スマイル。うわあ、真っ黒だ!


「だったら……サポーターは私じゃなくて五十嵐先輩にお願いした方がいいね」


 えっ、寧々ちゃんも何か作戦が見えてるの!?


 私だけポカンとしていたら、「ここで説明するのも何だから、ダンジョンハウスでね」って聖弥くんに笑顔で言われた。

 あ、これ絶対ヤバい奴ですわ……。



「OKOK! じゃあ今度の日曜ね、私サポーターするよ! 楽しみー」


 1回目の登校日、聖弥くんから説明を受けた事を五十嵐先輩に相談したら、ノリノリで引き受けてくれた。

 ちょうど、サポーター用装備もできたんだよね。これがまた、汎用性がすっごい高いの。


「よろしくお願いします!」

「私はダンジョンエンジニアに徹するって名目で、武器持たないで行くね。……んっふふふふ、楽しみー。うまく引っかかってくれるかなあ」


 ある程度名前が知られてて、「強くない」ことが知られてる寧々ちゃんよりも、実力完全未知数のダンジョンエンジニアである五十嵐先輩の方が、聖弥くんの計画には都合がいいらしい。


「とりあえず後の打ち合わせはLIMEでね。そろそろ冒険者科集合だから」


 登校日、と言っても実質体育祭の打ち合わせである。

 体育祭の出場種目の割り振りと係決めをして、3年生作成の気合いの入りまくったマスゲーム資料を渡された。


 マスゲームってなんぞや、と思ったら、各チームごとにテーマを決めて、衣装やダンスの振り付けなどを自分たちで作り、ストーリーを見せるらしい。

 ……そのための背景ボードとかも作るらしくて、作業量凄くない?

 というか、ダンスの振り付けができる人って何? いや、私はそこそこできるけど、そんな人が普通にいること前提なの?

 しかもクラフトがいない普通科の人でも、衣装デザインして型紙起こしとかできるの?


 一応去年のマスゲーム優勝チームの映像とか見せられた。

 これは……テーマはカルメンかな。カルメンの衣装凄っ! これ手作り!?

 カルメンどころか、全員参加だからカルメンの背後で踊る50人以上の女子が、ちょっとグレードは落ちるけど似たような衣装着てるし……。


「これが去年の赤組なんだよね。ボードも優勝だったし衣装賞も振り付け賞も総舐めして、他のチーム全員ぐぎぎぎぎってなったの」

「毎年クラス替えがあるからメンバーは替わるとしても、『赤組』は今年他チームから負けねえぞ! って気合い向けられてるから」

「ちなみに、冒険者科は黒組ね。恐ろしいことに一般競技も含めて今まで優勝経験がありません」


 3年生が口々にしてくれた説明に、1年生がざわめいた。

 冒険者科なのに、体育祭で優勝経験が無いですと!?



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