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第56話 「どうもー破れ鍋でーす」「どうもー綴じ蓋でーす」

 告知動画を撮ってX’sにアップしよう! と思ったので、紫芋ソフトを買ったところで、金沢さんにも入って貰って動画撮影開始。もちろん、片手にはソフトクリームだよ。


「こんにちワンコー! ゆ~かでーす! 今日は鎌倉に武器を作って貰いに来ました。こちら、武器クラフトマンの金沢さんです! はい拍手ー。わー。私今片手が塞がってるので拍手出来ないけどね!」

「あ、あ、あ、アイスが溶ける! やべえ、垂れてくる!」

「うそっ! もう、だから6月やだよー。ちょっと待って、ソフトクリーム食べさせて」


 しばし3人でアイスベロベロ。うん、紫芋ソフトはシャーベットっぽくって安定の美味しさ! しかもこれ、普通のソフトクリームよりお腹に溜まるんだよね。

 むう、このソフトクリーム割と溶けにくい方なんだけど、気温が……。


「というわけでー、武器ができあがったので私たちは金沢さんと一緒に食べ歩きしてから帰ります! 明日の夜8時からゆ~かチャンネルで新武器お披露目配信しますので、見に来てくださいねー」

「あ、俺はお披露目配信無しってことで!」

「だそうですー。バイバーイ」


 溶けかけのソフトクリーム持って、カメラに向かって笑顔で手を振って録画終了。


「よし、後でアップしよう」

「だな。現在地がバレるし」

「はー、慣れてるねえ。僕なんかこんなの初めてで緊張しっぱなしだったよ」

「その割にはずっとアイス食べてましたよね」


 私はしゃべってたから。蓮くんは一応「今映ってる」って意識があるから。溶けて垂れてきたときには慌てて食べたけど、それ以外の時は食べてない。

 でも金沢さん、ずっとアイス食べてた! 緊張したとかダウト!


「ははは、もう、何していいかわからなかったからね」

「動画見た人には、このずっとアイス食べてる人が武器クラフトマンの人なのかって認識されますよ」

「うーん、それも締まらないなあ」


 おしゃべりしながらソフトクリーム食べて、小町通りの方に入ってさらなる食べ歩き。食べ歩き配信とかも楽しそうだけど、人が映りすぎるのがちょっと問題かなあ。


 駅前店で鳩のサブレーの一番大きい缶を3つ買い、その場でアイテムバッグに入れて見せたら店員さん凄い驚いてた。

 究極のエコバッグですよ! いいでしょ!


 鎌倉駅前で金沢さんとはお別れして、蓮くんと横須賀線に乗り込んで――そういえば。


「帰り道は怖いとか騒いでなかったけど、卵の中イメトレでバリア張れたの?」


 行きは散々怖いよー、前歩いてくれー、手繋いでくれーって騒いでたのに、帰りはすんなり駅まで来たんだよね。


「そういえば……多分だけど、ゆ~かバリアが範囲広がったっぽい。金沢さんが何かしてた気配も無かったし、俺もさすがにイメトレちょっとでバリアは習得出来ねえし」


 なんと、私の幽霊跳ね返しバリアが強化されてる!?


「なんで?」

「いや、俺に訊くなよ。多分村雨丸の持ち主になったからじゃねえの? それでなければ、バッグの中にあっても俺のロータスロッドが効果発揮してるとか」

「これに魔除けの力あるの?」

「わかんねえ」


 わかんねえとか多分とかばっかなのに、いろいろ言うなあ……。スピリチュアルな人の言うことは私にはわからないわ。


 そして乗り換えて藤沢駅に着いたとき、悲劇は起きた。


「じゃあ俺ここで――あーっ! 杖入れて持ち帰れるような袋持ってない!」


 電車から降りた瞬間、ホームで振り向いて蓮くんが叫ぶ! 慌ててロータスロッドを出して差し出す私!


「迂闊すぎじゃない!? 剥き出しのまま持って帰れ! 持ってるだけならこの杖なら銃刀法引っかからないから! もし職務質問されたらアプリ見せなよ!」

「ちょ、ちょっと待って、ゆ~か!」


 発車メロディが鳴って、最後のロロロロロ~♪ってなったところで、蓮くんが私の腕を掴んでぐいっと引っ張った! とととっと思わずホームに降りてしまう私。背後で閉まる電車のドア!


「バカ!」

「いや、そのまま乗せてたら俺の武器持ったまま帰ることになるんだぞ、おまえ! わかってんのか!?」

「次のダンジョン特訓の時に渡せばいいだけじゃん!」

「……あ、そうか」

「バカ!! てか、私も出すの遅かった。それはごめん!」


 私はロータスロッドを蓮くんに押しつけた。――うん、バカバカ言っちゃったけど、渡すの忘れたまま藤沢に着いたのは間違いないんだよね……。


 蓮くんは「無理矢理今渡されなくても大丈夫だった」事実を忘れていたショックで。私は次の電車を待たなきゃいけなくなったショックで、それぞれその場でしゃがみ込む。

 東海道線は大体10分間隔、運がいいとそれよりは早く次の電車が来る。次の電車は――10分後!


「はー……じゃあ、俺帰るわ。無理矢理電車から降ろして悪かった」

「海より深く反省して。今日もちゃんと走り込みと打ち込み忘れないでね」

「お、おう。じゃあな」


 蓮くんはふらふらと階段へ向かって歩いて行った。

 私はため息ついてベンチに座って、告知動画をX‘sにアップ。家に帰ってからやればいいやと思ったけど、手持ち無沙汰なんだよね。



 家に帰ったら、ヤマトと猫たちがお出迎えしてくれた。カンタだけはまだヤマトに慣れないらしくて、遙か後方でやんのかステップしてるね。


 多分パパはゴルフの練習かな。ママは朗読劇だから、帰ってくるのは夕方か。


「よーし、ヤマト、これから遊びに行こう!」

「ゥワンッ」


 リードを見せるとヤマトが嬉しそうに飛び跳ねる。今日も私のヤマトは可愛い!

 遊びと書いて走り込みと読む! ランニングしてフライングディスクで遊んで、汗掻いてスッキリしてこようっと。

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