クラスメイトを見ててもわかるけど、クラフト職人は戦闘に興味持ってない人が多くて、体力を鍛えてなかったせいでLV上げるのが他のどんなジョブ志望より大変って聞いたから、金沢さんのLVが気になる。
「金沢さんはLVいくつなんですか?
うちのクラスにもクラフト専攻志望の子が結構いるんですけど、クラフト志望は入学時点で体力ない子が多くて、ついて行けずにリタイヤしちゃった人もいるんですよ」
「ああ、わかるなあ! 僕はLVは30だけど初期は地道にソロ狩りでLVを上げて、でもやっぱりステータスの伸びは悪くてね。クラフトスキルを取るにはDEXが必要だけど、実際にクラフトマンになったら、MPとDEXしか仕事に関係がないから伸びが悪いのにも無頓着になっちゃうんだよ」
そうか! クラフト志望のクラスメイトは特にブートキャンプを嫌がってるのが目立つんだけど、確かに仕事に必要なレシピを身につけられるLVだけ上げられれば、あとのステータスはどうでもいいと思っちゃうのか。
クラフトマンはまずDEX上げてスキルの「クラフト」を取得して、初期にスキルと一緒に入手したレシピで一定数のクラフトを行うとジョブとして「クラフトマン」になることができる。
しかもそこからLVを上げてDEXを上げないと大雑把なカテゴリ分けされてるレシピが習得出来ないときたもんだ。
DEXはクラフトしてればLVアップでかなり上がるらしいから、他のステータスが気にならなくなるのも仕方ない。
これが、冒険者科の専攻の中でクラフト志望が一番「厳しい」と言われる
大人になって割と長いこと苦労するか、今のうちに短期間で苦労しておくかの違いなんだ。厳しすぎるな、クラフトマン。
中には自分で伝説金属の鉱床を掘りに行く人もいて、そういう人は戦闘能力もかなり上げてるらしいけど。
「ひとりで戦うのが厳しくなってきたら、クラフト修行掲示板ってところがあって、そこでパーティー募集をしてるから数人でパーティーを組んで戦ったりしてね。それで上げられたのはLV20までかな。そこから先は高LVの冒険者に依頼を出して、一緒に戦って貰ってパワーレベリングって奴だね。
そのお金がLV30になるまで結構かかって、まだ借金を返し終わってないんだよ」
言葉の最後の方の声が悲しげだった……。
逆に高LV冒険者だと、そういう稼ぎ方も出来るってことなんだなあ。
「武器が出来たらお披露目配信の時に、金沢さんのこと宣伝しておきますね!
私はダンジョンアタック始めたばかりなので、主にショートソードを使ってるんですけど、学校で練習で使う武器はどれもいまいちこれだっていう感じがしないっていうか、それなりに持たされる武器は使えちゃうので決められなくて」
「自慢に聞こえるのは俺だけか」
「あんただけです。テイマー自体は中衛か後衛で戦闘補助をすることが多くてボウガンとか使ってる人が多いみたいなんですが、私のステータスはバリバリの前衛適正で、近接武器の方がいいかなあって4月から悩んでます」
真剣に悩んでることを打ち明けると、金沢さんは穏やかな表情でうんうんと頷いてくれた。
「そうか、じゃあ、柚香ちゃんと縁の深いこの鉱石に『何になりたいか』を訊いてみよう。きっと君に合う武器になってくれるはずだよ」
えっ!? アポイタカラに訊く!? アポイタカラって意思が存在するの?
「そんなことできるんですか!?」
「僕はできるね。これはクラフトのスキルじゃなくてもっとスピリチュアルなものなんだけども。じゃあ、ちょっと待っててね」
アポイタカラに手をかざして目を瞑る金沢さん。そうしたら後ろで蓮くんが「うっ」と小さく呻いた。
「どしたの」
金沢さんの邪魔にならないように小声でささやく。
蓮くんは顔をしかめたまま私の耳に口を近づけてきて小さい声で答えた。
「なんかオーラ? 気? アポイタカラのそんな奴が螺旋状に渦巻いてるのがぐわっていきなり強くなった」
ひえっ、そういえばここにもスピリチュアルな人がいた。さすが霊能者おばあちゃんの孫! 魔法適正ってそういうものなの? 私全然感じません!
「うん、うん……形が見えたよ。これは刀だね。反りがあって、それなりの長さがある。分類で言うと太刀ってことかな」
「日本刀ですか」
「そう。やっぱり遠距離武器じゃなくて近接武器が良かったみたいだ」
日本刀かー、確かに縁があると言えばあるんだよね。凄いな、伝説金属。
「日本刀はママに連れられて結構たくさん見てきましたよ。
「おっ、柚香ちゃんは日本刀のことはそれなりに知ってるのかな? 好きな刀とかあるの?」
「
「ははは、岡田切かあ、国宝だね。柚香ちゃんは結構目利きだね」
岡田切って言って即国宝だねって返ってくる金沢さんもさすがだなあ。そういえば、本棚の本は各種武器の本ばっかりだね。
私は興味ある物しか憶えてないから、たくさん見てはいるんだけど、その他の国宝の刀とかはあんまり名前憶えてない。
写真見ても大包平と三日月宗近くらいしか見分けられないね。あのドヤァしてる大包平と、研ぎ減りまくってる薄い三日月宗近はさすがに他とは見間違えない。
「岡田切?」
刀には全く詳しくないらしい蓮くんが尋ねてくる。
「うん。岡田切
「刀のネーミングってそんなレベルで決まるのか?」
「さあ? 必ずしもそうじゃないと思うけど」
蓮くんが尋ねてきたから岡田切の号の由来を端的に答えたけど、他の刀の号の由来は語れるほどは知らないなあ。
「刀は綺麗かどうかとか、面白そうかどうかでしか見てないから、細かいところはそんなに詳しくないんだ。聞きたいならママに頼めば2時間くらい語ってくれるよ」
「い、いや、それはいい」
「刀を綺麗という視点で見る人は多いけど、面白そうってどういう見方で思うんだい?」
興味深そうに金沢さんが訊いてくる。面白かった刀と言えば、私にとってはあの二振りだな!
「面白かった刀は
歌仙兼定は
加州清光は博物館で実物持たせて貰ったことがあるんですけど、まー持ちにくいこと。重心があちこちにばらけてる感じで、確かにこれは使いにくそうな刀だわって思って。某ゲーム内で加州清光モチーフのキャラが自分で『扱いにくい』って言ってるんですけど、そりゃそうだろうなあと。これを扱ってたなら沖田総司凄いですよねー」
私が嬉々として面白かった刀について語ったら、金沢さんがえらいこと驚いている。
えっ……もしかしてマニアックすぎた? 刀好きの基準がママだから、私もおかしくなってたのか!
「……高校1年生だよね? 随分刀は扱ってきたの? 居合いとかやってた?」
「やってません。真剣持ったのも博物館くらいですよ」
「参ったなあ、わかる子にはわかるんだねえ……うん、日本刀なのはそうなるべくしてそうなったんだと思うよ」
私たちの会話について行けず、ポカンとしてるアイドルひとり。