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第43話 雑談配信で文殊の知恵を狙ってみた

 お昼ご飯を食べていたらテッテレッテレ~ライム! とちょっと間の抜けた通知音が入る。開いてみたら蓮くんからのメッセージだ。


『ゆ~か様、中級か上級ポーションください』


 率直だなあ、おい! こういうときだけ丁寧語なんだよね、奴は!

 しまった、おととい国分寺ダンジョンにいったとき、ママにお金を借りてでも上級ポーションを渡しておけばよかったなあ。


 これは真面目に限界までの走り込みをした結果、疲労が溜まりすぎて普通のポーションでは間に合わなくなってるとみた……。そういう同級生は4月にたくさん見たから知ってる。


「ごめん、今日買ってくる! あと、ダンジョン以外で効率の良い訓練場所がないか雑談配信で聞いてみる」

『ありがとう』


 犬が土下座するアニメスタンプが送られてきた。これ、私も持ってるなあ。こういうところは妙に被る。犬好きの運命って奴かな。


 現在、私と蓮くんのステータス上げについて若干行き詰まっている。

 ヤマトを連れないでダンジョンに行くと、私が倒せないモンスターが出たら危ないし、私が倒せるモンスターだと経験値が入ってしまう。


 蓮くんはもう初歩の初歩である走り込みをとりあえずしてるしかない。


 その辺を悩みながら「ステ上げで相談に乗って欲しいことがありますので雑談配信しまーす」とX‘sに書き込んでおいた。ついでにママに、「上級ポーション買って蓮くんの家に届けてください」というメッセージも送っておく。



「こんばんワンコ~。ゆ~かの雑談配信、はっじまっるよー!」


 今日はママの乱入がないように私の部屋のベッドの上だ。後ろはカーテンだけで、他には特に見える物はない。このために必死になって片付けましたよ!

 映る範囲はバストアップに指定してあるから、ベッドに座ってるというのも多分見えない。抜かりなし。


『こんばんワンコー』

『こんばんはー』


 こんばんワンコーとしばらく返しつつ手を振って、ピシッと私は真顔になった。


「このチャンネル、冒険者で見てる人もいるんですよね。3人寄れば文殊の知恵っていうでしょ? きっと良い方法があると教えて貰えると信じてます!」


『いきなり何を』

『突然のリスナー持ち上げ』

『ゆ~かちゃん、どうかした?』


 戸惑う声に、私を心配してくれる声。今日は相談って書いておいたから、視聴者さんになんか心配かけたっぽいね。


「えーとね、今経験値を入れないように、ダンジョン外でのトレーニングを主にやってるんです。だけど、それだと配信ができなくて。

 蓮くんの事務所の社長さんに、『好きにやらせて貰う代わりに定期的に配信はする』って約束しちゃってるんですよね。

 それで、ダンジョン内で経験値を入れないようにしながらトレーニングをする方法はないかなーと思って」


『クラフトスキル取得時に取れるレシピの【なまくらの剣】を使って戦うと攻撃力補正が-5だよ。別名ダンジョンダンベルって言われてる』


 うおっ! いきなりいい情報聞いた! なまくらの剣の使い道なんてないだろうと思ってたけど、わざと攻撃力を落とすために使うのか!

 初心者の剣ですら+3はあるから、今の私だと初心者ダンジョンの敵は大体一撃で倒しちゃうんだよね。最悪拳で殴るか? でも痛いのやだなって思ってたけど-5ならギリいける!


「うわー、なまくらの剣ってそんなトレーニング向きの剣だったんだ!? ありがとうございます!」


『パーティーを組まないで、LVだけ上げたい人と一緒に行って、とどめだけその人に刺させるのもあり。俺はクラフトマンの用心棒やってるときにそうやってた』


「な、なるほどー! パーティー組んでなければ低LVモンスだったら経験値も入らないもんね! さすがにシーサーペントは入っちゃったけど」


 クラフト志望はスタミナない人が多いからLV上げは苦労するって聞いたんだけど、この方法なら私たちはステータス上げができて、クラフト志望の人は経験値が入る。まさに一石二鳥!


『シーサーペントは……あれは普通LV10が4人以上で倒すものだから』

『ヤマトが強すぎた』

『ヤマトのステ、人間でいうとLVどのくらい相当かな』

『STR120だったっけ? LV上がるときにSTRが2ずつ上がったとしても……ガチ前衛職のLV45から50相当か。しかもLV2に上がったんだよね?』


「ひえっ!」


 そんな換算考えたことなかったけど、ヤマトの強さやっぱりおかしいわ! シーサーペントもあっさり倒すわけだ。


『そりゃあ、シーサーペントも瞬殺だよ……』

『禿同』

『禿同』

『逆に、初級ダンジョンでもそこそこ強い敵なら、わざとステ下げしたゆ~かちゃんだったらワンパンでは倒しきれないはず』


「そっか! 強い敵と戦った方が効率よくステータス上がるっていうし、ダメージだけ与えて離脱、別の人がとどめで行けるんだ!」


『そういうことー』

『やっぱりガチの冒険者は経験が違うな』


 これで、これで勝てる! いや、何と戦ってるんだって話だけど。

 あいちゃんは元々高DEXだった上に私よりLVあげてるから、クラフトのスキルはもう取れてるんじゃないかと思う。

 インゴットはダンジョンハウスで売ってるし、買ってその場でクラフトして貰えばいい。


 あいちゃんじゃなくても、クラスのクラフト志望の人に声かければ多分行ける!


「アドバイスくださったみなさん、ありがとうございます! うちのクラス女子にクラフト志望が多いから、友達に聞いてみます! 助かったー!」


『どういたしまして^^』

『解決してよかった』

『うむ、ダン配がないと芋ジャーが見られないからな』


「芋ジャー目当てだったんかーい!」


 温かいコメントの中に混じる芋ジャーコメ。私は見逃しません。


「本当に助かりました! みんなありがとー! ラヴ!」


 SE-RENチャンネルに出た時みたいに顔をアップにしてウインク&指ハートをしたら、何故かスパチャを貰ってしまった。お礼を言いたいのはこちらだったのに。


「あ、そうそう、スパチャで思い出した! アポイタカラたくさん売って、お金がたくさん入りました! 桁が多いので直視するのはやめたけど!」


『直視したくない桁だと……』

『うはあ、お金持ちだねえ』

『あやかりてえ、あやかりてえ』


「待って、今うちのクラスの男子みたいなコメント入った。私を拝んでも別に金運アップしないからね? 拝むのはヤマトにしておいてね。

 これから武器と防具を私と蓮くんの分作ることになるので、それにいくらかかるかわからないので使うのは控えてるんですが、基本的には余ってるお金は寄付しまくろうと思ってます!

 だから、スパチャでの応援は私じゃなくて他の配信者さんに入れてあげてください。具体的にはSE-RENとかSE-RENとかSE-RENとか」


『SE-RENしかないじゃねーかw』

『アイドルの武器防具もゆ~か持ち!?』

『募金か、いい心がけだ』


「だって、武器防具はパーティーの共有財産だから。蓮くんが弱すぎて足を引っ張られたら困るのは私だし。SE-REN、社長にドロップ品と魔石売ったお金も渡してて搾取されてて、ダン配は全部自腹だったんだってー」


 私の突然の告発にコメント欄がざわつく。爆弾を投下してやったぜ。さあ、アホウドリ社長よ、燃えるがよい。


「今日はみなさんの温かいコメント、本当に本当に助かりました! 次はダンジョン配信ね! それじゃあ、もしよかったらチャンネル登録、高評価、よろしくお願いしまーす。じゃあねー、おやすみなさーい」


 にこやかに手を振って配信終了。早速あいちゃんにLIMEして、一緒にダン配してとどめだけ刺してくれないか頼んでみたら――。


『ノーメイクで動画に出ることはNGにしてる。ダン配なんて言語道断』とバッサリ……。


 くうっ……コメントは温かかったのに、友達が世知辛いよ……。

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