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第36話 突発配信 ゆ~かのステータス講座 その2

「ストレングス、通称STRスター。力です。力isパワー。STRが高いと力士をお姫様抱っこしたりもできます。攻撃力直結でそれ以上の意味はないけど重要ステータス。

 これが低かったら魔法の素質がある人はそっちを鍛えるか、でなければVITを鍛えてタンクやるしかないですね。

 蛇足かもしれないけど、タンクって壁役のことね。重装備で盾とかで敵の攻撃をガチで止める盾タンクと、高いAGI・DEXを活かして攻撃されながらも避けてダメージ回避する避けタンクがいます。ゲーマーのママは、私のステなら避けタンクで使うって言ってました。


 ヴァイタリティ、通称VITヴァイト。スタミナと生命力の両方の意味合いがあって、これも前衛の必須ステータス。これが高いと物理攻撃のダメージを通しにくくなるし、連動してHPも高くなります。やっぱり走り込みとか、あとモンスターの攻撃を受けまくることでも多少上がります。


 マジック、通称MAGマグ。魔力です。これは鍛えることもできるけど初期値が完全に本人の素質次第で、私みたいに低いと鍛える方法もないというやっかいなステータスです。蓮くんは相当高いですけど、血筋依存の事が多いらしいよ。蓮くんのおばあちゃんもバリバリ霊能者だったって。

 回復魔法での回復量と攻撃魔法での威力に関係するよ。蓮くんは見ての通り完全に魔法使い系ステータスですね。癒やし系やってるのは正解です。同じ【ライトヒール】でも、他の人より回復力があるはず」


『癒やし系アイドル……』

『口の悪い癒やし系……』

『癒やし系……蓮くんになんて似合わない言葉』


「悪かったな」


 顔は完全にイラッとしてるんだけど声は抑えめで蓮くんがスマホに近付いた。声が大きくなかったのは寝ちゃったヤマトへの配慮だね。よしよし。


「レジスト、通称RSTレスト。魔法に対する抵抗力。VITと対を為すような能力ですね。これが低いと魔法を食らったときのダメージが大きかったり、状態異常系の魔法にかかりやすくなったりします」


『察しました』

『ゆ~かが低い理由はお察し』


「なんで!? 何を!?」


 なんで私がRST低い理由を察せられるの!?


『ヤマトを見たとき完全に魅了されてた顔だった』

『それなー』

『犬にチャーム掛けられてたのか』

『今蓮くんもヤマトにチャーム掛けられてる』

『それなー』


「ぐっ……そ、それは【チャーム】じゃなくてただの犬好きだからです! 見てよこの蓮くんの高いRSTを! これは魔法を食らうことで鍛えられるんだけど、箱根の大涌谷ダンジョンにいるプチサラマンダーのファイアーブレスを食らいまくった結果だそうです」


『あった! そんな事件!』

『SE-REN火祭り事件!!』

『あの時本気でヤバかったよね。ふたりとも死ぬんじゃないかと思った』


 火祭り事件……そんな物騒な名前まで付いて……。あの社長の指示なんだろうけど、本当に後先考えてなさ過ぎでしょ。


「あの時は……【ライトヒール】使い切って俺のMP尽きて、持ってたポーションも全部使い切って、本気で逃げて3層まで逃げ切れたから良かったけど、死ぬかと思ったな……マジで。ポーション補充出来てないのあれからだったな」


 凄く遠い目をして語る蓮くん。おおおお……そんなところに私行ったら死ぬじゃん。装備がきちんとできあがってから行こう。


「私RST低いので、アポイタカラかミスリル製の防具ができてからRST上げしようと心に誓いました。


 次、デクステリティ、通称DEXデツクス。器用さです。攻撃の当てやすさ、特に弓系の命中で特に如実に反映されます。

 クラフトの人はこの数値でまずスキルとしての【クラフト】を取得して、スキルに付随してくるレシピを何度も作るとジョブの【クラフトマン】を取れるそうです。戦闘系の人にも重要だけど、クラフトの人にも重要っていう地味だけども大事なステータスですね。


 私はSTRよりもDEXが高いので、ヤマトの支援で後方からの弓攻撃ってのも有りなんだけど……それをすると防御担当の前衛がいなくなって蓮くんを守れなくなるので、やっぱり近接武器かなあ? 武器に関しては今悩み中です。


 最後、アジリティ、通称AGIアジ。素早さですね。走るスピードとか攻撃の速さに関係します。これが全然違う居合いの人が同時にやると、刀抜いて切るスピードが全く違うんだって。

 低いとモンスターから逃げようとしたときに逃げ切れないこともあるステータスです。これも走り込みとか、瞬発力を鍛えるようなトレーニングで上がります。

 こんなもんかな?」


『アホの子だと思ってたけど見直した』

『ゆ~かちゃん凄い!』

『上げ方まで解説してくれるとは』


「私のことアホの子だと思ってたの!? そのコメの人、1時間正座してて!」


『実はずっと正座してた。そろそろ痺れてきたところ^^』


 ぐぬう……。正座して配信見てる人もいるのか。お詫びのつもりかスパチャがはいる。


「詫びスパチャいただきましたー。くるっくさん、ありがとう。憶えました!

 これで一通り解説したわけですが……蓮くん、ちゃんと理解した?」


 私が横を向くと、そこにはヤマトを抱っこしたままチャームの状態異常になってる人がいた。


「あ? ……やべえ、ヤマトが可愛すぎて右から左に流れてた」

「はァン? 半分以上誰のために解説したと思ってんの?」


 ママがキレたとき並に低い声が出た私に、蓮くんがぴしりと背筋を伸ばす。


「申し訳ありません、ゆ~か様。後で正座してアーカイブ見直します」


 私に向かって深々と頭を下げる蓮くん。くっ、このイケメンヒーラー、先回りを憶えたぞ。


『尻に敷かれてる……』

『これは色恋ないね』

『完全にお笑いコンビ』

『蓮くんの敬語レア』

『でもボケとツッコミがいい塩梅なんだよ……SE-RENちゃんねるから見てたんだけど』

『叫ばないで怒るゆ~かもレアだぞ』


 た、確かに。私が低い声出る怒り方するってのはレアだ。それだけ頭にきたってことだけどね!


「じゃあ、ゆ~かのステータス講座は以上で終了です! 今後も質問とかがあったらX‘sの方とかに書き込みしてください。

 それと、明日は蓮くんの特訓配信を夕方やりますので、可愛いヤマトと可哀想な蓮くんを見たい方はそちらもよろしくお願いしまーす!」

「んっ? おい、俺可哀想なことになるのか!? マジか!?」


 最後に蓮くんの悲鳴が入ったけど、私はそのまま笑顔で手を振りつつ配信を終了した。

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