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第13話 助けた亀は駆け出しアイドルでした

「まっかせてー! 戦うの私じゃないけど! ゴー、ヤマト!」

「ワン!」


 元気のいいお返事が響いて、ヤマトはギャラ○スもどきに向かって駆け出した。

 波打ち際でジャンプして、敵の首元に飛びかかるとがぶっと噛みついて、全身を振り子のように振る。


 ボキッと、鈍い音が響いた。まさかあれ、首の骨折ったの?

 体を振った反動で更に飛び上がったヤマトは、モンスターの頭を思いっきり蹴り飛ばした。


「グァワァァァァ……」


 きらきらと光の粉を振りまいて消えるギャラ○ス。おお、ボスモンスターは消え方も違うね。


 そして、何かがボチャンと海の中に落ちた。ヤマトは足場にしていたモンスターが消えて、そのまま海に落ちる。


「ヤマト!」


 どうしよう、そういえばあの子が泳げるか確認してない!

 私が焦っていると、一度見えなくなったヤマトが何かをくわえて、犬かきで戻ってきた。


「ヤマトぉ! 君泳げたんだねー、よかったよぉぉぉ!!」


 喜んで抱きつこうとした私をすっとかわして、ヤマトは再び海へダイブ。そして、今度は青い魔石をくわえて戻ってきた。……知ってた。柴犬ってときどきこうだよね。

 ブルブルして水を飛ばすなり、ヤマトは伏せの状態で前脚の間に魔石を挟んで、ガリガリと骨ガムみたいにかじり始めた。やっぱり食べるんだね……。


「お、おい。その犬魔石かじってるぞ、平気なのか?」


 倒れた仲間のところに駆け寄ってた青年が、ちょっと青い顔で私に尋ねる。

 平気なのかと言われましても、私にもよくわからないんだけど。


「うーん、よくわからないけど、多分平気? 昨日もゴブリンとスライムの魔石食べまくってたし」

「わかんねえのかよ! 止めろよ!」

「止めようとしたけど無理でした! 見たでしょ? この子すっごい強いの」


 ああ……と頭を抱えて悩んでしまう青年。よく見ると結構なイケメンだね? 私には刺さらないけど、目力が強くてキリッとしてる。

 私も倒れている人のところへ行って、リュックからポーションを出した。


「意識は?」

「戻ってない」

「とりあえずポーション掛けてみるね」

「悪い、助かる」


 私はポーションの瓶を開けると、倒れている聖弥さんという人の全身にザバッとポーションを掛けた。どこに怪我があるかわからない場合、全身に掛けろって学校で習ったから。


「……うっ」


 呻きながらうっすら目を開ける聖弥さん。でも凄く苦しそうだ。


「聖弥! 大丈夫か? どこが痛い?」

「大丈夫じゃないっぽい……背中が痛くて、あと肋骨多分折れてる。胸がすっごい痛い」

「大変、ポーション1本しか持ってきてないし、体の内側の怪我とかには効かないんだよ。とりあえず地上に出て救急車呼ぼう?」


 そこで聖弥さんは私に気づいたらしく、あれっ? という顔をした。


「聖弥がやられた後、そいつとあの犬が来て、シーサーペントを倒してくれたんだ。ポーション掛けたのもそいつ」


 イケメンヒーラーが私のことを説明する。オウオウ、口が悪いなあ。命の恩人相手に「そいつ」って。

 それにしても、あのボスはシーサーペントだったのか。10層に来るのはまだ先だと思ってたから調べてもいなかったよ。考えてみればギャラ○スなわけないもんね。


「私はゆ~か。その激烈可愛い柴犬は私の従魔でヤマト。ヤマトが私をここに連れてきたの。――もしかしたら、ふたりが戦ってるのに気づいてたのかも」

『人命救助凄い! ヤマト凄い!』

『しかもイケメンだ』

『全然実力足りてなかったっぽいけどな』

「実力足りてなかったって言われてるよ」


 私のスマートウォッチでコメントを見せると、イケメンヒーラーは悔しそうに顔を歪めて舌打ちした。


「俺はれん安永やすなが蓮。それでこいつはせい。俺たちはふたりで『SE-RENシーレン』ってユニット組んでるアイドルだ。今日は事務所の社長に言われてここのシーサーペント倒しに来たんだけど、やっぱりLV7じゃ足りなかったな……」

「えっ、私よりLV高いの!?」

「俺よりLV低いのか!?」


 何故か私たちはふたりして叫ぶと、ダンジョンアプリ開いてステータスを確認した。

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