ゆ~か LV2
HP 44/45
MP 5/5
STR 8
VIT 12
MAG 3
RST 2
DEX 6
AGI 11
ジョブ 【テイマー】
装備 【初心者の服】【初心者の盾】【初心者の剣】
従魔 【ヤマト】
ステータスを確認して私はうんうんと頷いた。HPが1減ってるのは、多分ヤマトにどーんと体当たりされたときに尻餅付いたからだね。今の私は紙防御だから、些細なことで案外HPが減ったりする。
「うん、ちゃんとヤマトの名前の所も変わりました! ヤマトはうちに連れて帰るけど、ダンジョンに連れてくるのは無理だよねえ……って言った側から!!」
「ガウッ!」
「ステイ! ヤマト、ステイ! ノー! うわー、そもそも躾が出来ていないから言うこと聞いてくれなーい!」
このダンジョンの最弱モンスター、スライムを見つけてヤマトが突撃していく。確かにスライム弱いし、私でも倒せるくらいだけど酸を吐き出したりするし……。ヤマトが怪我したら嫌だよ!
「ヤマトー! 止まってー!」
ヤマトを追いかけて全力で走る! 走る! 走る事しか私にはできない!
これでも高校に入ってから冒険者科は週5で体育があるから、スタミナだけは自信あるんだ!
『テイマーの定義が俺の中で変わった瞬間』
『やばい、このテイマー全然言うこと聞いてもらえてない』
『柴犬可愛いよ柴犬。もし火傷したらこれでポーション買ってあげな』
チャリーンとスパチャのSE。スパチャありがとー! とおざなりに叫んで私はなんとかスライムの直前でヤマトに抱きつき、左腕に装備した盾でスライムを自分の下敷きにして倒した。
酸が飛んで火傷の危険があったけど、「確実に火傷する」よりはまし。ヤマトの確保が最優先で、腰に下げてる剣を抜く余裕なんて無かった。
「はーはー……今、盾を使ってスライムを倒しました。魔石だけ残ってます。ヤマトを捕まえたまま剣とか出せなかった。ヤマトは無事です……って、ステイ! ちょっとこの柴犬、中犬なのに力が強いー!」
私が抱え込んでいるにも関わらず、私をずるずると引きずってヤマトが潰れたスライムの残骸に向かう。そして、そこに落ちている黒くてギザギザしている魔石を――食べた!
まるでおやつ感覚で、カリカリと噛んでいる音が聞こえる。噛み心地どうなの!? あんなにとげとげしてたけど! そして、ごくんとヤマトは魔石を飲み込んだ。
「ぎゃー! 魔石食べちゃった! 吐いて!」
私はヤマトの口に手を突っ込んで魔石を出させようとする。ヤマトはいやーんって顔をして私の手を前脚で邪魔しようとする。
くっ! 犬の口に付いてるゴムパッキンが邪魔をする!
『おちつけ!』
『あれって人体に有害とは言われてないから犬も平気かもしれないけど、ギザギザしてるから飲み込んだら腹痛起こしそうだな』
『がんばれ、ゆ~かたん!』
『ダンジョン配信を見ていたはずなのに、何故かJKと犬の取っ組み合いを見ている件』
『それな。世界は平和だな』
私はとうとうヤマトに魔石を吐き出させることを諦めた。ヤマトは私の前でお座りしてピンク色の舌を出し、首を傾げて「なにがいけなかったの?」という顔をしている。
『我テイマーですけど、従魔のステがあるから確認してみるべし。もし状態異常とかあったらそこに出るから』
そんなコメントを見て、アプリをチェック。私のステータスからヤマトの名前の所を押すと、
ヤマト LV1 従魔
HP 100/100
MP 60/60
STR 120
VIT 130
MAG 80
RST 80
DEX 120
AGI 160
種族 【柴犬?】
マスター 【ゆ~か】
はい?
とりあえずスクショして配信で流してみる。真顔で。
この私の混乱を、視聴者さんにもお裾分けという名の押しつけをしたくて。