「はえっ!?」
驚いているところで柴犬にどーんと体当たりされて、それを受け止めると顔中をべろんべろんとなめ回される。犬好きの至福タイム! じゃなくて、私は今頭の中で聞こえたアナウンスに困惑していた。
「お座り。うん、グッド。ちょっと待ってて」
勢いで落ちてしまったスマホを拾って、慌ててダンジョンアプリを立ち上げる。
このアプリはダンジョンが世界中に出来た後、アメリカの有名IT企業に送られてきたらしい。
内容はダンジョンアタックする人間には必須の項目ばかりで何故かダンジョン内情報とも紐付けられていたので、「ダンジョンを作り出した何者かが作った」と言われてる。
――まあ、誰が作ったかは私には興味ない。これがないと困ると言うことだけはわかるけど。
ゆ~か LV2
HP 44/45
MP 5/5
STR 8
VIT 12
MAG 3
RST 2
DEX 6
AGI 11
ジョブ 【テイマー】
装備 【初心者の服】【初心者の盾】【初心者の剣】
従魔 【個体α】
「えっ!」
アナウンスの通りに、私のジョブがテイマーになっていた。
自分の名前の所は変更出来るので、配信用の名前。そして、従魔の欄が新しくできていて、そこにさっき言われた【個体α】が表示されている。
慌ててスクショを取って、それを配信アプリの方に流した。
「見て! これ見て! なんか私テイマーになっちゃった! てことは、この子はモンスターなの? どう見ても柴犬なんですけどー!」
『うP主GJ! とりあえず名前変えてやれ』
『もしかして:柴犬じゃないのかも……』
『仕込みやろ。元々テイマーだったんちゃうか』
『いいや、ゆ~かたんは昨日まで正真正銘の無職だった!』
コメントがざーっと流れていく。あ、常連さんがいるんだ……なんか女子高生としては嬉しい反面複雑な気分になるね。とりあえず、画面に向かって笑顔で手を振っておく。
「こんな何も出来ない配信者なのにいつも見てくれてありがとー!」
『ゆ~かたんはドジっ子だから目が離せない。見てないとどこかで落とし穴に嵌まったまま誰にも気づいてもらえなさそうで』
「ぐぬうっ!」
コメントが痛い。小さい頃実際に似たようなことをやったことがあるから刺さる!
そして、待ちくたびれたのか足下で柴犬がキューキュー言い始めた。
「そうだ、君にも名前を付けようね。はい、ちょっと立って。オスかな、メスかな? うん、オスだから名前はヤマトで決まり」
『なんでこんな速攻で名前が決まるん』
『ゆ~かたんが昔やってた牧場ゲーム実況のシリーズの定番だな、柴犬は雄がヤマトでメスがヒカリ。オスで2匹目がいるときはタケル』
「なんでそこまで知ってるの!? 常連さん逆に怖いよー」
『怖くないよ~^_^』
チャリーンと言う効果音と共にスパチャが入る。いや、このタイミングで入るのが怖いんだってば! パパ活とか絶対にしないから!