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望郷

 あれから半年が経ちました。

 チェリーちゃんとイカ頭さんは色んな町に立ち寄りながら基本的に南を目指しています。

 旅らしいというか。

 目的に向かって近付いているというか。

 チェリーちゃんが一人のときよりもずっと健全になったような気がします。


 相変わらずチェリーちゃんの指示で軽犯罪もしていますが、回数はぐんと減り、立ち寄った街で日雇いのバイトをすることもありました。主にイカ頭さんが、ですが。


 食べたいときに好きなものを食べ、行きたいところへ行く。

 寝るところはその時々で、必要があれば働く。

 得た金銭で風俗に行ったりお酒を飲んだり。


 私からすれば考えられないような生活ですが、それでも二人とも笑顔が絶えることがありません。

 自由を謳歌し、その自由の代償も払い、そしてのんびりと旅をしています。



「それでさ、その女の子があまりに家族を大事にしない発言をするものだから、私、ついついお説教しちゃってね」


「にゅわ~!」


「そしたら何て言ったと思う? 風俗に来て説教する男ほど面倒くさいものはないだって」


「にゅ!?」


「頭にきて思わず墨をかけちゃったよぉ」


「にゅはははは! にゅ~わにゅ~わ!」



 半年前のイカ頭さんからは考えられないような発言ですね。

 いいことなのか悪いことなのか、判断の難しいところです。

 ふと、それまで笑って話していたイカ頭さんの顔が真剣なものになりました。



「……実はね、チェリー君」


「にゅ?」


「その子ね、墨をかけた後……私のお説教をよく聴いてくれてね……」


「にゅ」


「故郷を思い出して大泣きしちゃったんだ……」


「……にゅわ」


「抱きしめて慰めてやったらね、おじさんみたいな人、初めてだって……その……」


「にゅ?」


「私ね……思わず一緒についていってやるって言っちゃって……その、ご、ごめんよ! シャングリラには先に行ってて欲しいんだ。後から必ず追いかけるから!」


「…………!」



 イカ頭さんは深々と頭を下げました。

 これにはさすがのチェリーちゃんも困惑しているようです。

 チェリーちゃん……一体どうするのでしょうか。

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