ミノカサゴの毒にやられてしまったチェリーちゃんは、アスカちゃんと一緒に大きな病院へやってきました。
元々病院へいくつもりだったので丁度良かったですね。
「にゅわぁ、にゅわぁ……!」
「チェリー君、大丈夫? もうすぐ呼ばれると思うからもうちょっと辛抱だよ?」
「にゅわ……」
「あたしの検査は……また今度にするね。だってどう見たってチェリー君のほうが重症だよ? 気にしないでいいから」
アスカちゃん……なんていい子なのでしょう。
チェリーちゃんは放っておいてもいいので、検査を受けて欲しいです。
「チェリーさん、診察室へどうぞ」
「あ、呼ばれたよ! あたしも付き添ってあげるから!」
「にゅ~……」
チェリーちゃんは、さっきよりも赤く腫れあがった触手を引きずるようにして診察室の方へ泳いでいきました。
「じゃあ次だね。チェリーさん、どうぞ」
「にゅ~」
「失礼しまーす」
診察室は明るく清潔にされていました。
闇医者のところとは大違いです。
白を基調にした岩で壁も器具も揃えてあります。
チェリーちゃんを呼んだお医者の先生は、アスカちゃんと同じくタコの人魚の女性でした。
ふくよかで大きな体は少し威圧感を覚えます。
先生は厳しい目つきでチェリーちゃんを睨みました。
「それは……ミノカサゴの毒だね? どれ、診せてごらん」
「にゅひっ! にゅわぁぁぁ!」
「なんだい、男の癖に情けない声を出すんじゃないよ! ……ふむ、大したことはないね。とりあえずお湯で応急処置をしておこうかね」
「え、先生、それだけでいいんですか?」
「アンタ、この男の付き添いかい? どんな関係かは聞きゃしないけど、このクラゲが子供じゃないことは分かってるね?」
「あ、はい。それは分かってます。本当はあたしが診てもらうつもりだったんですが、チェリー君が大変になっちゃって……」
さすがはお医者の先生です。
チェリーちゃんの実年齢を一目見て分かってしまったのですね。
この前の偽医者とは違って信頼できそうな人です。
「アンタもどこか悪いのかい?」
「あたしは……その、胸にしこりがあって……それで調べて欲しかったんです」
「そうかい。おーい! 至急この子を検査してやりな!」
先生が後方に向かって叫ぶと、看護婦の魚たちがやってきて、アスカちゃんの手を引っ張っていきました。
「せ、先生!?」
「構わないさ。不安だったろう? 検査してやるからとっとと向こうへ行きな」
「あ、ありがとうございます!」
あらあら。
良かったですね。
このお医者様、腕も信用できそうですが、人間的にも出来たお方のようですね。
「さてと、クラゲのアンタも毒の治療のついでに健康診断をしてやろうかね……」