そもさん! そもさん! そもさんそもさん!!!!
はぁ、はぁ………………ふぅ。
「にゅ?」
こほん。
失礼致しました。持病の発作が出てしまったようで。お気になさらず。
チェリーちゃんとアスカちゃんは歓楽街とは違う、綺麗に整備された大通りを泳いでいました。
行き交う魚達も忙しそうです。さすがは都会ですね。
「チェリー君、迷子になっちゃダメだよ?」
「…………」
「チェリー君? ど、どうしたの?」
アスカちゃんが振返ると、チェリーちゃんが青ざめた顔で震えていました。
「どうしたの、チェリー君? どこか、具合……悪い?」
すれ違う魚並みの一点を、チェリーちゃんは凝視していました。
なんでしょうか?
「……? チェリー君、あの女の人、知り合いなの?」
「にゅ……わ」
あっ!
間違いありません!
あれはララベルちゃんです。
ララベルちゃんはきっとタツノオトシゴの夫妻を見つけて、街に帰ってきていたのですね。
よかった。チェリーちゃんを追いかけなくて。
それにしても……
「……チェリー君、いこ?」
「…………にゅわ」
「隣、男の人、いるね……」
「……………………にゅわ」
「とっても幸せそう……だね」
「……………………………………にゅ」
ララベルちゃんの隣には、オスのマグロが泳いでいました。
ただ泳いでいるだけではありません。
ララベルちゃんと寄り添って泳いでいます。
アスカちゃんの言うようにとても幸せそうにしています。
誰がどう見ても仲のいいカップルにしか見えません。
ララベルちゃんの幸せそうな姿を見て、チェリーちゃんはとてもショックを受けているのですね。
自分でお別れした女性に、新しい男性ができたと知ったらショックを受けるとか……
…………ぷぷっ。
「チェリー君……」
そのとき、チェリーちゃんの下をミノカサゴが忙しそうに泳いでいきました。
チェリーちゃんの触手に、ミノカサゴの背びれが触れました。
「おっと、失礼! 急いでるもんで!」
「あ、ちょっと! ……行っちゃった。んもぅ! 都会の人ってなんだかみんな忙しそうだね、チェリー君。……チェリー君?」
「にゅわぁああああああああああああ!!!!!!!!」
チェリーちゃんのいやらしい触手の先が赤くなっていました。
あ……そういえばミノカサゴには毒がありましたね。
これは大変ですね~。
「にゅわっ! にゅわっ! にゅわぁぁぁぁ!」
「チェ、チェリー君、どうしたの!? 大丈夫?」
ふふっ……ミノカサゴの毒がどの程度のものか、私は知りませんが、多分大丈夫でしょう。
……あと二回ですね。