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不条理

「ささ、早くブラをはずしな! セイッセイッ!」


「わ……分かりました……」



 ああ……見ていられません。

 こんなイソギンチャクがまともな医者なわけがないのです。

 あら? チェリーちゃんがなにやら大急ぎでメモをしたためています。



「にゅわ! にゅにゅ!」


「え、チェリー君? な、何? メモ? えっと……『マンモグラフィには専用の機械が必要』……専用の機械?」


「アーハー? 俺様ほどになると機械なんて、アンッ、アンッ! イェ! 必要ないぜ。セルフマンモ!」


「先生……ここにはマン毛の機械、ないんですか?」


「ホワット!? な、なんだよマン毛の機械って……」


「え、あたしそんなこと言ってません!」


「ノノノ! 今確かにマン毛って言ったぜ! オン、イエァ! 世の中言っていい事と悪いことって、アゥイェ! あると思うぜ!」


「言ったのは先生でしょ!? あたしはそんな下品な言い間違えはしないもん!」


「ナンチューフジョウリ……カモッ!」



 ……確かにアスカちゃんが言ってましたね。でも、黙っておきましょう。



「診て欲しくて我慢してたけどもう無理……やっぱりあたし、都会の大きな病院に行きます!」


「オーノー! そんなこと言わずに俺のマンモ受けとけって! イッショウイッショニイテクレヤ!」



 そのとき、チェリーちゃんがアスカちゃんの腕をちょいちょいとつつきました。

 チェリーちゃんはイソギンチャクの横にある事務机を指差していました。



「なに? チェリー君……あっ!」



 チェリーちゃんの指差す先、机の上には食べかけのたこ焼きが置いてありました。

 あら……どこかで見覚えがありますね。

 あのタコ焼きは、居酒屋でウツボの店員に恵んでもらったたこ焼きですね。

 そういえば、チェリーちゃん、アスカちゃんに会ったときに身体の中に隠したのでした。



「ちょっと! 先生!! あれはたこ焼きじゃないですか!! あんなもの食べるなんて……最低です!」


「ウェ、ウェーッ!? いや、俺、たこ焼きなんてアイドンノゥ!」


「うるさい! この、タコの敵! タコ生活協同組合に通報しておきます! あと無免許医師ってことも言っておきます」


「ファーーーーーーーーーーー!!!!???? 酷くない!? チョマテヨ!」


「行こう、チェリーちゃん!」


「にゅーわにゅーわ」



 あらあら、おそらくこれはチェリーちゃんの仕業ですね。

 さすがにこれは、チェリーちゃんを褒めてあげなければいけませんね。


 こうしてチェリーちゃんとアスカちゃんはイソギンチャクの巣を後にしたのでした。

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