チェリーちゃんは一人、暗い海を漂っています。
あら? ララベルちゃんと、タツノオトシゴの子供はどうしたのでしょうか。
大変、もしかしてチェリーちゃん、ララベルちゃんたちとはぐれてしまったのでしょうか。
かわいそうに、だから力なく漂っているのですね。
「にゅ~にゅにゅ~」
チェリーちゃんは、暗い海をどんどん先へ進んでいきます。
途中、チョウチンアンコウや、なんだかよく分からないお魚とすれ違います。
それでも物怖じすることもなく、チェリーちゃんはふんわりですが真っ直ぐ泳ぎました。
「にゅ~にゅにゅにゅ~。……にゅわ?」
遠くのほうで、誰かの叫び声が聞こえました。
とても悲痛な声です。
チェリーちゃんがしばらく進むと、タツノオトシゴが二人、おろおろしていました。
叫び声の主はどうやらこの二人のようです。
「タツロウ~! どこだ~! お父さんはここだよぉ~!!」
「タツロウちゃーーーん!! お母さんはここよぉ! いるならお返事して~!」
二人はどうやら迷子のタツノオトシゴちゃんのお父さんとお母さんのようですね。
ララベルちゃんとはぐれてしまったチェリーちゃんですが、偶然にもご両親を探し当てることができたようです。
本当に良かったですね。
「おお~~~い! タツ……ん? クラゲ……の子供?」
「もし、クラゲの坊や。知っていたら教えてほしいんだけど、私たちのタツロウ……タツノオトシゴの子供をどこかで見かけなかったかしら?」
「にゅ?」
チェリーちゃんに気が付いたタツノオトシゴ夫婦は、一目散にチェリーちゃんのもとへやってきて尋ねました。
「クラゲ君、どうだろう? もしタツノオトシゴの子供を見かけたのなら教えてほしい。僕たちの子供なんだ」
「ああ……神様……お願い……!」
「にゅわ」
しかし、チェリーちゃんは喋ることができません。
知っていても教えることが出来ないのです。
ああ、どうすればいいのでしょう。
「知らないみたい……だな……そうか。いや、ごめんよ。もう少し探してみるか……」
「アナタ、この子が泳いできた先にはいないってことよ。浅い海域にでたらどうかしら?」
「そうだな、よし、そうと決まればすぐに浮上しよう!」
「クラゲの坊や、ありがとうね。坊やも早くお父さんとお母さんのところへお帰りなさい。心配させてはだめよ?」
「にゅ?」
それだけ言うと、タツノオトシゴの夫婦は足早に浮上していきました。
なんということでしょう、そっちにはタツノオトシゴの坊やはいないというのに──
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なみ~だにはぁ~いくつもぉの~おもいでがぁ~あるぅ~。クラ~ゲにもぉ~……って。
………………ありゃ? 聞こえてる?
おっとと……
どもども、おじさんだよ。
いや~、暗い海ってじめっとしてて暗いから落ち着くね。
おじさんこういうところ、大好きだな。
………………ん? ……ララベルちゃんはどうしたのって?
…………あー…………その話、しちゃう?
……うーん、何て言うのかな。
うーん……あのね、語弊があるかもしれないけどね、何て言えば伝わるかな……
まぁ、一言で言うと彼女、尻軽ビッチだよね。
……いや、語弊があると困るんだけどさ。
勘違いしちゃ嫌だぜ?
なんかね…………飽きちゃった。
……
…………
いやいや、そういう意味じゃないよ?
えっとね、乳輪のブツブツとかはおじさん好みだったよ?
いやいやいやいや、そうじゃなくてね?
あー、言葉が通じるのはそれはそれで難しいな。……俺、こういうの初体験だな。
…………うーん、まぁつまり、そういうことなんだ。分かるでしょ?
だからまぁ、そろそろ……ね。……潮時かなぁって……一服したかったしね。
またのんびりシャングリラを探す旅に戻るよ。うん。おじさんはいつも自由でいたいんだ。
え?
タツノオトシゴの子供?
……うん、大変だよね。
え? 親に教えてやらないのかって?
ヤダヨ……あ、やだよって言っちゃった。
いやいや、おじさん喋れないもん。仕方ないじゃん?
教えるも何もなくない? ね? ね? 仕方ないんだ。それにもうどっか行っちゃったし。
会えるんじゃん? その内。知らないけどさ。
ねね、それよりもさ。
ナレーションのおばさん、どう思う? おばさんって言ってもおじさんと似たような歳だと思うけど。
そう言えばナレーションのおばさんも、おじさんのこと子供だと勘違いしてるよね。
おじさんがおじさんだって分かってるのは作者の人と読者のみんなだけだから、お願いだから内緒にしておいてね?
コメント欄とかに書かないでね?
多分ナレーションのおばさんは見れないと思うけどさ。念の為ね。
でね、でね、おじさんが思うにはね~、多分だけどおばさん、二人くらい子供がいると思うな。小学生の子供ね。
旦那は出版社とか、そういう系だと思う。
イメージだよ?
おじさんの勝手なイメージね?
身体のラインがね、崩れ始めてるんじゃないかなぁ……と思うわけよ。
Bカップね。黒乳首。これmust。
ケツはね~、「ダルンダルン」の「最初のダルン」の「ン」に差し掛かったくらいの時期にいると思うんだ。
分かる?
こう、女を完全に捨てきるには少し早いくらいの歳だと思うわけ。
分かる?
よく女性はさ、ケツや太ももが垂れてきたら嫌がるけど、あんなのおじさんに言わせたらエボリューション以外の何者でもないからね。
分かる?
エボリューション。
あの異常な柔らかさといったらないからね。
分かるでしょ? ね?
これが未亡人にでもなったらもうラストエボ──
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「にゅひっ!? ……にゅわぁ…………」
チェリーちゃんは悲しそうに、タツノオトシゴ夫婦の去ったほうを眺めています。
もうチェリーちゃんが追いつけるような距離ではありません。
かわいそうなタツノオトシゴ夫婦、かわそうなチェリーちゃん。
チェリーちゃんも力なく、その場を立ち去ります。
「にゅわわ~」
チェリーちゃんはララベルちゃんに会えるのでしょうか。
チェリーちゃんは、暗い海を先へ先へと、泳いでいきました。