人魚のララベルちゃんと、くらげのチェリーちゃんは暗い海へ向かっていました。
今、二人は暗い海の底へ続く崖に沿ってゆっくりと降りているところです。
「チェ、チェリーちゃん、怖くない? 大丈夫?」
「にゅわ! にゅー!」
ララベルちゃんの問いかけに、チェリーちゃんは元気よく答えます。
「そ、そう……怖くないの……」
「にゅー?」
あらあら、どうやら怖がっているのはララベルちゃんだけのようです。
チェリーちゃんは暗闇を恐れる様子はまったくありません。
ララベルちゃんは、チェリーちゃんの小さな体をいつも以上に力をこめて抱きしめながら進みました。
「にょ、にょわわ!」
「あ、ごめんね、チェリーちゃん。ちょっと強く抱きしめすぎちゃった……」
「にゅーにゅ!」
チェリーちゃんは明るく大きな声で返事をしました。
きっとララベルちゃんを元気付けようとしているのですね。
「チェリーちゃん……じ、実は私とっても怖いの……だから、絶対に離れちゃいやよ? おねがい!」
「にゅっ!!」
二人はさらに崖沿いを降りていきました。
不思議なことに、底に近づくにつれぼんやりと明るくなってきました。
ララベルちゃんが住んでいる浅い海ほどではありませんでしたが、それでもララベルちゃんは少しずつ恐怖が薄れているようです。
そして、二人は暗い海の底へたどり着きました。
「うわぁ……暗い海って完全に真っ暗じゃないんだね。私、来たことがないから知らなかった」
「にゅー」
「チェリーちゃん、この辺に見覚えはある? お父さんとお母さん、どこにいるかな?」
「にゅーにゅ?」
その時でした。
どこからともなく、誰かがすすり泣く声が聞こえたのです。
ララベルちゃんが驚いて周囲を見回します。
「きゃ! な、なに? 何の声? チェリーちゃん! チェリーちゃん! お願い、そばにいて!」
「にゅ!? にゅわー!」
ララベルちゃんは恐怖のあまり、チェリーちゃんを抱きしめながら、その場にうずくまってしまいました。
すすり泣く声は次第に大きくなってきます。
ララベルちゃんの震えも一層大きくなっています。
「にゅ? にゅーにゅー! にゅにゅ!」
「え、なに? チェリーちゃん?」
「うえーーーん、おかあさぁん、おとうさぁん! どこぉ~~~」
ララベルちゃんとチェリーちゃんの前に、タツノオトシゴの子供がやってきました。
すすり泣く声の主はこの子だったのですね。
ララベルちゃんもそれに気が付いて、ようやくチェリーちゃんを解放してあげました。
「この子も迷子かなぁ? ボク、どうしたのかなぁ?」
「うぇーーーん、お、お姉ちゃんは……誰?」
「お姉ちゃんは人魚のララベルよ。後ろにいる子はくらげのチェリーちゃん。ボク、迷子なのかな?」
「ぐすっ、おかあさんと、おとうさん、さっきまでいたのに、いなくなっちゃった」
「そっかそっか。寂しかったね。でももう大丈夫だよ? お姉ちゃんたちが一緒に探してあげるから!」
「でもぉ……ずっと探してるけど、どこにもいないの……」
「そうだったの……あ、そうだ! ねぇねぇ、おなかすいてない?」
「……すいたぁ……」
「ちょっと待ってね。お姉ちゃん、いいもの持ってるんだ!」
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はぁ……はぁ……おおっ……ララベル……いいよぉ……ララベルゥゥ……うぁっっっっっ!!!!!!!!
はぁ、はぁ……はひぃっ…………あ、あれ?
あらら、あちゃぁ参ったな……このタイミングで繋がっちゃった?
あー……いやぁ、おじさん、恥ずかしいなぁ……ごめんねぇ、なんか……とんでもないもの見せちゃったね。
いや、でもね、ララベルちゃんも悪いよね?
あんなに胸の谷間を見せたり、おっぱいを当てたりしてくるんだもん。
おじさん、さすがに勘違いはしないけど、ムラムラしちゃうぜ?
最近ララベルちゃんもいるから適切な処理もできなかったし……
そんで今さ、ララベルちゃん、そこの子供と一生懸命喋ってるけど、ずーっとこっちにケツ見せつけてるじゃん?
いや、人魚にケツないんだけど。
プリプリプリプリと……なんなの? どういうことだよ。
こういうことは保健体育の授業できっちり教えないといけないよね。
性の象徴だよ。性の暴力だよ。セックス事故じゃん。
こんなのセックスシンボルだよ。
これはもうセック……え? 使い方違う? いや、感覚の話ね。分かる?
……そんな顔しないでよ。
おじさん、悲しくなっちゃう。
分かった分かった、おじさんが悪いね。ララベルちゃんのせいみたいに喋ってごめんね。
え? 迷子の子供?
あー、ね。ララベルちゃん、必死に何とかしようとしてるね。
いいんじゃん?
え、おじさんは何もしないのかって。
やだよ。おじさん、子供嫌いだもん。おじさんからしてあげられることは何もないかな?
……そんな顔しないでよ。
だって嫌いなものは嫌いなんだもん。
ロリコンよりマシくない?
え、そういう話じゃないって?
……長年生きてるとね……どうしてもね。今更自分を変えることは出来なくなるよね。
まぁまぁ、この話はまた今度でいいじゃない? ね?
そ、それよりさ、おじさんの特技見てよ!
絶対驚くぜ? な?
じゃあ、いく───
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「にゅわっ!? ………………にゅ」
「どう? おいしい?」
「うん! とっても甘い!」
「ふふ、よかった。お母さんもお父さんも、きっと今頃ボクのこと探してくれてるわ。だから大丈夫。お姉ちゃんも一緒にいてあげる」
「……うん! ありがとう、おねえちゃん!」
「ごめんね、チェリーちゃん。先にこの子のご両親を探してあげてもいいかな?」
「……にゅ? に、にゅ! にゅーにゅ」
「ふふ、ありがとう。ごめんね?」
ララベルちゃんは迷子の子を胸に抱きしめて泳ぎ始めました。
その後をチェリーちゃんがついていきます。
「…………にゅわ…………」
こうして、ララベルちゃんとチェリーちゃんは、迷子のタツノオトシゴ君のお父さんとお母さんを探し始めたのでした。