夕方になるとショッピングモールはライトアップされ、昼間とは趣が変わって美しかった。それに見惚れていると写真を撮られる。
「累?」
「ごめん。綺麗だったから」
「うん。綺麗だよね。イルミネーション」
「ううん。結菜が綺麗だったから。離れていても結菜のこと思い出せるように」
累はそういうと撮影した写真を見せてくれた。写真の私は柔らかい優しい顔をしていた。
(私、累を見る時こんな顔をするんだ)
初めて見る表情だった。
(私、やっぱり累のことが好きなのかしら)
この表情を見るとそう思う。きゅっと胸が苦しくなった。好きなのに感情を持てないことが悲しいと感じた。また心が動く。少しずつではあるが、感情が芽生え始めている。このことは累には報告しなかった。
「結菜。他に見たいところはある?」
「ううん。もう十分。ベンチに座ってイルミネーション見ない?」
ちょうど手近にあったベンチが空いていたので二人座ってのんびりイルミネーションを見る。少し寒いけどキラキラ綺麗なイルミネーションをただ眺めているだけの時間がとても心地よかった。
「結菜ここで待ってて、この先にカフェがあるからあったかいコーヒー買ってくるよ。何がいい?」
「じゃあキャラメルマキアートで」
「了解!食べ物は?」
「コーヒーだけで大丈夫だよ」
累が遠ざかっていってから私はイルミネーションの写真を撮る。それをSNSにアップする。数件いいねがついた頃、ふと顔を上げると知らない男の人が二人目の前に立っていた。
「こんにちは。今一人?よかったら一緒にコーヒーのみに行かない?ここにはお友達ときたの?」
(ナンパ?困ったな累を待っているのに)
「ごめんなさい。彼氏と来てるんです」
「えー!君一人置いてけぼりにする彼氏なんて放っておいて俺達と一緒にモール回ろうよ。もちろんコーヒーは奢るし」
「いいえ。私は彼を待たないといけないので。ごめんなさい」
はっきり断ったのに男達はニヤニヤ笑ってひいてくれない。
「すごい可愛いね。よく言われない?ねえ。お願い。ちょっとだけでいいから」
「だから…本当に迷惑です。これ以上しつこくするなら警備を呼びますよ?」
私はスマホを取り出すと操作しようとすると手を掴まれた。
「ちょっと…少しだけでいいのにそれはないでしょ?ケチだなあ」
「もういいよ。無理やり連れて行こうぜ」
男達は私を無理やり立たそうと腕を掴んで引っ張ってきた。
「本当にやめてください!」
周りは運悪く人がいなくて助けを呼ぶこともできない。困ったと思っていると聞いたことのない声が聞こえてきた。
「ことこちゃんごめんね。お待たせ。お店混んででさ」
「え?」
見たことのない長身の男の人が走ってきて男の腕を払ってくれた。
「お前誰だよ」
「それはこっちのセリフだよ。彼女に手出ししないでもらえる?」
「くそ。だったら一人にするなよ。行こいうぜ」
男達はさっさと立ち去ってしまった。私はへたりとベンチにへたり込むと慌てて助けてくれた男の人にお礼を言った。
「助けてくださってありがとうございました。あの。ことこって?」
「ああ。飼ってる猫の名前だよ。タチ悪いのに捕まって災難だったね。彼氏さん来るまで一緒に待ってるよ」
助けていただいただけでなく、そんなことをしてもらうのは気が引けるが正直かなり怖かったのでありがたく申し出を受けさせていただくことにした。
「ありがとうございます。お願いします。あ!私、泉川結菜と言います。改めて助けていただいてありがとうございます」
「いえいえ。俺は由依雅之助(ゆいまさのすけ)だよ。美容師とメイクアップアーティストしてます」
長身だからモデルなのかと思ったら、由依は着飾る方ではなく裏方の人間であることに驚いた。
(鼻筋通ってるし、目も切れ長でかなりのイケメンなのに…以外)
と、その時累が戻ってきた。
「雅之助?なんでこんなところにいるの?」
「え?累この方知ってるの?」
「知ってるというか、大学の頃からの友達」
世間は狭い。まさか累の友達にナンパから助けてもらうなんて。
「累!この前ぶりだな。ちゃんと髪の毛セットしてえらいえらい」
由依は累に近づくと髪の乱れを刺さっと直してセットしなおした。
「でもどうして結菜と?」
「さっきタチの悪いナンパにあって助けてもらったの」
すると累は驚いた顔になり、由依に頭を下げた。
「結菜のこと守ってくれてありがとう!この子は俺の大切な人だから本当に助かったよ」
「ああ。じゃあこの子が噂の結菜ちゃんか」
由依は私のことをじっと見つめてきてニコッと微笑んだ。
「可愛いね…一目惚れしちゃった」
「ええ!?」
私は仰天した。友達の彼女に一目惚れ宣言するなんて、累の友達はやっぱり変わってる人が多いんだなとため息をついた。
「雅之助。結菜はお前のハーレムの女とは違うんだよ。絶対に手を出すなよ」
「ハーレム!?」
またすごい単語が飛び出してきたので絶句すると累が説明してくれた。
「こいつこのルックスだから、まあ、かなりモテるわけ。二番目三番目でもいいっていう女の子を何人も囲ってハーレム作ってるんだよ」
「うわあ」
助けてくれた人に失礼だがつい口をついて声が漏れてしまった。