「いい映画だったね」
累は私に優しく語りかけてくる。私は頷きながら涙を拭った。
「最後感動しすぎて涙が止まらない。おかしいよね。感情が死んでるのに映画には感動できるなんて。本当にどうなってるんだろう。私の感情」
本当にどうなっているのだろう。こんなに感情が動くなら人に対しても動いていいものを。頑なにそれを拒んでいる自分の感情にイライラした。
(累にももっと感情を持てるようになりたいのに。いつまでも中途半端で申し訳ない。過去色々あったけど、せっかく私のために改心してくれたのに。私ももっと努力して累への感情を取り戻さないと)
そう意気込んでいると、累は私の手を優しく握って言ってくれる。
「無理して感情を戻そうとしなくても大丈夫。俺はいつまでも待つから、結菜のペースでいいんだよ。無理をして悪化したら、そっちの方が怖いから」
「うん…ごめんね。本当に。私自身のことなのに思い通りにいかなくて…」
しゅんとすると累は私の頭を優しく撫でてくれる。その優しくて大きい手の感覚がとも心地いい。
「それ、安心する。撫でられるの好きみたい」
「そっか。それならよかった。そろそろお昼だしフードコートに行かない?ここは色々美味しいお店が入ってるので有名だから」
「あ!ホームページで調べたけど食べたいお店があったんだ。席空いてるといいね」
2人はフードコートに向かったが、やはりお昼時で混雑しており、ようやく見つけた席に目印にコートをおくとそれぞれお目当てのお店に注文に行った。
「累は何を頼んだの?」
注文が終わって席に戻ると私は累に聞いてみたが累はニコニコ笑ってできるまで内緒と教えてくれたなかった。
「楽しみだね。それにしてもすごい人。お昼時だからだけどどこも行列がすごい」
「結菜のとこも時間がかかったみたいだね。俺より後に帰ってきたから」
「うん。有名なラーメン屋さんが初めてフードコートに出店したんだって。だからどうしても食べてみたくて」
そう。事前に調べていた時。前々から気になっていたラーメン屋が出店しているのを知って、絶対にそれにすると決めていたのだ。
「ちなみに家系?」
「うん。結構ガッツリした感じ。せっかくだし全部のせにチャレンジしちゃった」
もう二度と食べられないかもしれないので思い切って全部のせにしたのだが、食べ切れるのだろうか。少し心配ではあったが、きっとなんとかなるだろう。
「はは。食べきれなかったら俺が食べるから大丈夫だよ」
「そういえば累って細いのにすごく食べるよね。最初一緒にご飯食べた時びっくりしちゃったもの」
そう。累は見た目に反してかなりの大食漢なのだ。お店で食事する時はテーブルが埋まるくらい注文してそれらを全てペロリと食べてしまう。カロリーは大丈夫か心配になって聞いたことがあるが、その分運動しているし、体質的に太りにくいから大丈夫と言っていてた。非常に羨ましい体質の持ち主だった。
「よかった。累にお願いできたら安心してラーメンを楽しめそう。無理して食べて気持ち悪くなったら悲しいから」
「うん。美味しく食べて、無理になったらいつでも言ってね」
その時2人の呼び出しベルが鳴った。
受け取りに行って帰ってくると累は特盛海鮮丼を頼んでいた。巨大な器にたっぷりの海鮮が盛り付けられていて、美味しそうだが、どうみても2人分はありそうなボリュームだった。
「累…それにしたんだね…すごい…」
この大ボリュームがあのスリムな体に全て収まるのだから驚きだった。
「でも結菜のも結構なボリュームだね。半分くらいかな?食べられるの」
「うっ…確かに半分くらいかも。でもでも。美味しかったらもうちょっと…」
「ふふ。この後モール内を散策して休憩するためにキャラクターカフェを予約してあるんだけど…その分のお腹を残しておいた方がいいんじゃないかな?」
「ええ!予約してくれたの?嬉しい!ちょっと興味があったの」
このモール内でイチオシなのがそのカフェで、完全予約制のため、行きたいけど難しいかと思って諦めていたのだ。それを予約してくれていた累に感謝だった。
だがそれは後のこと。今は目の前の美味しそうなラーメンに集中したい。
「いただきます」
2人で手を合わせて早速食べ始めたらあまりの美味しさに感動した。累も美味しかったようで巨大な丼がどんどん減っていく。私も慌てて食べ進めるが、やはり限界がきてもう無理になった時、累は完食していたので、私は累にお願いした。
「ごめん。もうこれ以上入らない」
「了解。じゃあもらうね」
そう言ってあっという間に完食してしまった。
「毎回思うけど、累の食べっぷりは気持ちいいね。それで太らないから本当にすごい」
「はは。まあ、結菜にそう言ってもらえるのなら大食いもたまには役に立つんだね」
累はそう言って笑った。
その笑顔を見て私は少しだけ、愛しさを感じた。
「あ…今、ちょっとだけ愛おしいって思った。少しだけだけど」
そういうと累は私の手を強く握った。
「本当!?少しでも嬉しいよ!ああ…結菜に愛おしいって思ってもらえたんだ。嬉しい…」
累は目に涙を溜めて喜んでくれた。