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第38話 ストーカー?

家に着くと私はスマホをチェックする。すると累からの着信があったので急いでかけ直した。


「ごめんなさい、さっきまで良平の家で佐和子さんとご飯食べてなのはちゃんと遊んでたので気付きませんでした」


 私がそう言うと累は暗い声で言った。


「1ヶ月会えなくなったのに片想いされてるやつのところに行ったの?」


「あ…それは佐和子さんとなのはちゃんに会いに…」


「でも良平もいたんだろ?」


「あ…」


私は答えを返せなかった。累は怒っている。わたしが軽率な行動が彼を苛立たせたようだった。

確かに私が逆の立場だったら面白くない。むしろ激怒しているかもしれない。私は軽率な行動を反省した。


「俺は我慢しているのに…結菜。また会えるようになるまで良平と話さないで」


「それは無理だよ。お隣さんだから話す機会だってあるし」


そう。良平はお隣さんなので会う機会だって多い。それを無視するなんて失礼すぎて無理だった。それにそんなことをしたら佐和子さんだって心配するだろう。


「結菜は平気そうだね…俺と会えなくても」


「そんなことないです!会えなくて寂しいですもん」


寂しいのは事実だった。会えなくて寂しい。だけど累の様子がおかしいのでそのことが気になった。

(累なんだか、切羽詰まってるみたいな…大丈夫かな?)


「だったら…」


(これはきっと会わないでって言われる流れだよね)

だけど私は行動の制限をされるのは好きじゃない。むしろ嫌いだ。


「でも行動を制限されるのは好きじゃないです。私は意志を持った人間だから」


「…そうだね…結菜には結菜の意思があって、俺には俺の意思がある、わかった」


(本当にわかったのかな?なんだか不穏な空気が…)

私は少し不安になりながらも累のことを信じることにした。


「それより、なのはちゃんとっても可愛かったですよ。写真LIMEで送りますね」


「ありがとう。噂の可愛い子を見るの楽しみだよ」


私は通話を終了すると早速写真を送信した。

するとすぐに返信が来る。


『可愛い。この子が玄関まで迎えにきてくれるなんて嬉しいだろうね』


『はい。すっごく可愛かったし癒されました。1ヶ月が終わったら会いに行きましょう』


そう言うと累は

いいねスタンプを押して送信してきてくれた。


 次の日からまた日常に戻る。私は毎日会社に行き、時々佐和子さんとなのはちゃんに会いに良平の家に行った。


 だがどうもおかしい。いつも誰かの視線を感じるのだ。今もなんとなく視線を感じて周りを見渡すが誰もいない。


「結菜、さっきからキョロキョロしてどうした?」


「ん〜最近なんだか視線を感じて…気のせいだと思うのだけど」


「また栄に来てもらうか?」


「そうだね、お願いしてもいい?」


私達は話しながら良平の自宅に行く。もちろん目当ては佐和子さんのご飯となのはちゃんだ。


「結菜。栄こがれからこっち来るって」


「ええ〜急なのに申し訳ないなあ」


「いいって、栄も散々大変な思いしてるから気持ちがわかるんだろ」


 申し訳ないけど仕方ない。だってあまりに視線を感じて怖かったから。

 帰り道でもいつも後ろから気配を感じていたし。もしかしてまた累かなとも思ったが、それも違うようなのだ。

 視線はねばこくなく、でも執拗に私を見張っているようだった。


「こんばんは、結菜ちゃん久しぶりだね」


「ああ!すみませんおよびたてしちゃって」


栄さんはまだご飯を食べていないと言うので4人で食卓を囲む。

佐和子さんは急に1人増えてもすぐに料理を用意できる手腕があってさすが長年料理を作っているだけあるなあと私は感心した。


「怖いわねえ。結菜ちゃん、ねえ良平、毎日送迎してあげてよ、私、心配で」


「そうしてやりたいけどなあ。累に相談したか?」


「ううん、累さんが知ったら大騒ぎになると思うから内緒にしてる」


私たちはこれからどうするか相談をしていた。まずは今日、私が一人で玄関に入るまでを影で隠れて2人で望遠鏡を使って隅々まで探すということになった。

 できるだけ玄関でゆっくりと鍵を探すふりをして家に入るまで時間をかける必要があると言うので、うまくできるか心配だけど、ストーカーを捕まえるためには必要なことだった。

(今日で見つかればいいんだけど、なんせプロの栄さんがいるから…)


 ドキドキしながら良平の家を出て玄関の鍵を探すふりをして鞄をゴソゴソしている時だった。良平からLIMEの着信が入った。


『見つけたぞ。栄が。さすがだよなあ。今捕まえに行ってるところだからちょっと待ってろ』


そう言ってLIMEは切れた。

ソワソワしながらしばらく待っているとインターフォンが鳴った。そこには良平と栄、そしてなぜか花が写っていたのだ。


(なんで花さんが?え?私のストーカーが花さん?一体どうして…)

 私は軽く混乱したが、慌てて玄関に飛び出した。

 そこには項垂れた花と厳しい顔をした栄と良平が立っていた。


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