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第27話 エリサ=フロテナーザの恋話(その3)

私の名前はエリサ=フロテナーザでフロテナーザ財団の一人娘である。今はハヤテからプレゼントされた異世界もののアニメを観ている。

明日のデートで、お互いの感想を話し合うためだ。

ちょっと、寝不足になりそうだ。


次の日、ハヤテとのデート。

いつものカフェに行き、お互い飲み物を頼んでから、早速本題のアニメの感想を言い合った。アニメの内容をお互いにおさらいした。

まずは冒頭から。


・・・・

 男と女はファンタジーの世界で宝物を探す冒険家である。彼らは山の奥深くに古代の遺物が隠されているという噂を聞きつけ、それを探しに出かけている。

「ねぇ、キャルロット。このあたりだと思うけど、合ってるかな?」

 いかにも冒険者という身なりの青年が、これまた、いかにも冒険者という身なりの女性に声を掛けた。

 「たぶん合っていると思うけど、、、、。それより、ダニエル。お酒を飲みながらの探検は止めてくれない!?」

 キャルロットと呼ばれた女性は、嫌悪感を隠さずに鋭く言い放った。

 「はははっ!ごめんよ。どうも酒の力に頼っちまう」

 ダニエルと呼ばれた青年は、嫌悪感なんて微塵も感じなかったようで、軽快に答える。

 彼らの旅は危険と驚きに満ちている。いままで、色んな冒険を共に挑んできた。その途中で、彼らの知恵は力と同じくらい試される機会があった。 トリッキーな状況から抜け出すために、お互いの巧妙なアイデアに頼らなければならないことがよくあった。お互いを信頼し合っているからこその言葉の応酬。

 それから、神秘的なアーティファクトがどこにあるかについての手がかりを山の中を彷徨い歩きながら何日も探した。

 「今回のお宝は手ごわいぜ!」

 ダニエルはこの状況を楽しんでいる。

 「私たちが、なかなか手がかりを見つけ出せないのは珍しいね」

 キャルロットの心も折れてはいない。

 太陽が沈みかけ、夕暮れが夕闇に変わろうとしている時であった。何を思ったのか、ダニエルは地面に落ちていた石を拾い、崖に向かって投げた。

 グラッ!!!

  まさか、崖が崩れて、洞窟の入り口が表れた。

 「やったね!」 

 ダニエルは陽気な声を挙げて、洞窟に走っていく。ついに、ダニエルは宝の隠れ場所に出くわした。

 彼らは多大な努力を払って洞窟の中を探検し、宝箱を開け、暗闇の中でも明るく輝くまばゆいばかりの金色の物体を取り出した。一見して、価値があることがわかる。彼らは魔法のような宝を賞賛した後、洞窟の出口へ向かうことにした。

 男と女は宝物を見つけたが、旅はまだ終わっていない。 彼らは、新たに見つけた宝物を持って安全に家に帰る必要がある。途中で、彼らはさまざまな試練に出会い、そしてさらに多くの障害に遭遇した。危険な地形を移動することから、欲深い他の冒険者たちと激しい対決することまで。 しかし、彼らが生還できたのは、お互いの信頼関係のおかげであった。

 最終的に、彼ら冒険者たちは、金や宝石だけでは決して価値を測ることのできない強い絆で勝利を収めた。この 2 人組は、これまで誰も試みようとしなかったことを成し遂げた。それは、秘密と驚きに満ちたファンタジーの世界の奥深くに隠された何かを発見することであった。真の冒険は、勇敢な者がそれを探し求めることによって発見できることを証明している。

 僕は「ダニエルとキャルロットの冒険記」を読み終えて気分が高揚している。何度読んでもワクワクする冒険記だ。ようやく僕は冒険者ギルドに登録できる年齢になった。僕もダニエルやキャルロットのように、この世界を壮大に冒険してみよう。

 高まる気持ちを抑えつつ、冒険者ギルドと書かれた看板の扉を両手で押し広げた。

「いらっしゃいませ」

 可愛らしい女性の声が僕を出迎えてくれる。これから、どんな冒険が僕を待ってくれているのだろうか。そんな期待と少しの不安を抱えて、冒険者ギルドの建物の中へ足を踏み入れた。

・・・・


私とハヤテはお互いに冒頭の感想を言い合った。特に「ダニエルとキャルロットの冒険記」から始める導入部は激アツであるという意見で一致した。

私はハヤテと感性が合うようで嬉しかった。

「まぁ、エリサもしっかり楽しめたみたいだな」

ハヤテは得意気に言っている。きっと、自分があげたプレゼントを相手が気に入っていることが嬉しいようだ。

「ハヤテのおかげだよ!」

私は素直に感謝の言葉を述べた。そして次にアイテム交換の場面について語り合った。


・・・・

とある異世界に王様が納める国があった。

多くの冒険者がその国で過ごしていた。


雪が降り始めたある日、王様が国民に向かって、こんなことを言い出した。

「我々は日常的に出会う人達が限定されている。これは、社会の階層化の要因だ。果たして、これでいいのだろうか。相互理解が大切だ」


真剣な顔の王様は声を張り上げた。


「だからワシは新たな法律を作った。ランダムで決められた男女が建国祭の日に強制的にプレゼント交換しなければならないという法律を!」


そんな法律ができてしまって、最初の建国祭が訪れようとしている。

お嬢様の魔法学校に通う私のもとに届いた相手の男性は、、、、県内一と呼び声が高い不良高校に通う戦士の男子生徒だった。


どうやら高校生は高校生の相手から選ばれるらしい。

せめて同じ魔法学校の中から選ばれて欲しかった。


次の日、魔法学校に行くと、クラスメイト達は相手が誰になったかの話題で盛り上がっていた。貴族が多い学校、神官学校、鍛冶屋の多い学校などなどクラスメイト達の楽しげな会話が聞こえてくる。

 クラスメイト達に私のプレゼント交換の相手が不良高校に通う戦士の男子だと言うと、みんな揃いも揃って微妙な表情になる。

「えっと、、、、、」

と、困惑している様子を示す友人はまだマシな方だ。


「絶対、木から削り出した棍棒こんぼうが贈られるよ」

「いやいやいや、鎧でしょ、鎧!なんか音の凄いうるさいやつ」

「戦士と言えば、斧でしょ。ついでに鎖に繋がれた鉄球がついてるやつでしょ」

「刀じゃな!?きっと護身用とかで持ち歩いてるんだよ」


口の悪い友人達は、妄想を膨らませて勝手に盛り上がっている。

他人の気持ちも知らないで、、、、。まぁ、実際、他人だしね、、、、。


そんな気持ちが重くなる日々が続いて、ついに建国祭の日。

私は指定された場所に向かった。

ちなみに、このプレゼント交換の儀式をサボると、強制的に留年になるらしい。とんでもない法律を作ってくれたものだ。

王様に対する、怒りと諦めが混じった感情で私は沸々していた。


グルルルッ!


野獣の雄叫びが響き渡り、四足歩行の野獣が近づいてくる。

野獣の上には戦士風の男子が乗っている。

色々な光で点滅するライトで野獣が飾られている。イルミネーションだろうか。

野獣の到来に私はすっかり気負ってしまった。


野獣から降りてきた金髪で長身の戦士はぶっきらぼうに言った。

「あんたが、俺とのプレゼント交換の相手?」

私は怖くて目を合わすことができない。とりあえず、こくりっと頷く。

「はい、これ。プレゼント」

彼は紙袋を私の前に差し出した。

「あっ、、、ありがとう」

私の声は掠れ掠れだ。私も勇気を振り絞って、持参したプレゼントを相手の前に差し出す。

私が選んだのはスカーフ。

果たして戦士がスカーフなんか使うのだろうか。そんな疑問もあったけど、他に何も思い浮かばなかったので、スカーフにした。赤色のスカーフ。


「俺、何を選んでいいのかわからなくて、、、、。色々と探したんだけど、、、、」

彼の声が聞こえる。もう一度ありがとうを言おうと思って、顔を上げると、既に彼は野獣に乗っていた。

「じゃあ」

彼は素っ気なく言って、野獣と共に走り去ってしまった。私は心臓の鼓動が徐々に落ち着いていく様子を感じながら、彼からもらった紙袋の中を、恐る恐る覗いてみた。


紙袋の中から、可愛いドラゴンの縫いぐるみが表れた。

ドラゴンのあどけない表情に癒される。

彼が、この縫いぐるみを選んでいる様子を思い浮かべると、思わず笑みがこぼれる。

紙袋からドラゴンの縫いぐるみを取り出してみると、首輪のところに手紙らしきものが挟まっていることに気がついた。


手紙を開いてみると、彼の連絡先と、そして短くこう書かれていた。

「良ければ、一緒にパーティーを組んでください」


冷たい風を頬で感じながら、未知の冒険の到来を感じていた。

そして、手紙に向かって、私は呟いた。

「よろしくね、戦士さん」

・・・・


ここまで話をして、私とハヤテは気がついてしまった。

「この物語って、私達の出会いとそっくりだね」

私とハヤテは自然に笑顔となった。


カフェの窓から子猫たちが楽しそうに遊んでいる風景が見える。

小鳥のさえずりが聴こえる。

「あぁ、幸せだな」と、私は心の中でつぶやいた。

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