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『後日』-晩餐会、そして…-

 ーそれから時間は流れて、美しい黄昏がファイターエリアを包む頃。

 現地放送局は勿論、帝国国営放送等の大手テレビ局も中継した『表彰式典』も無事に終わり、俺や『民間サポーター』達はセントラルブロックにある高級ホテル…そのファーストフロアにある、イベントホールに来ていた。

『ー………』

 そして、今俺達の目の前には豪華な『ナイヤチグルメ』と『ルランセルトグルメ』の数々が並んでいた。…そのせいで、俺以外のメンツはガン見したりヨダレが垂れそうな表情をしていた。

『ーさて、皆様お揃いのようですし…何よりこれ以上引き伸ばすとヒンシュクを買いそうですので乾杯をさせて頂きます』

 すると、ホール内の空気を察した『皇女殿下』がステージに上がる。…その手には、スパークリング系統のノンアルコールドリンクが注がれたワイングラスがあった。

 ー…なんで、あの方が居るのかというと『感謝』を示す為だ。何せ、此処に集っているメンツのおかげで自身や『後援会』に大事がなかったのだから。

 まあ、だから他のメンツは目の前のご馳走に食らい付くのを必死にガマンしていたのだ。…流石、帝国の威光は凄まじい。

 尚、料理はこのホテルやナイヤチの高級レストランで腕を振るう一流シェフ達よって作られ、アルコールやソフトドリンクはナイヤチや帝国生まれの物が多数取り揃えられている。

 そして、一番はその『ミール』がナイヤチ政府と帝国政府が半分づつ出している点だ。…早い話、『タダ』なのだ。


「(…正直、俺や『プレシャス』メンバーも彼らの立場だったら今頃おかしなテンションになっていただろうな…。…まあー)。

 …あの、大丈夫ですか?」

 そんな事を考えてながら、同じテーブルに座るランスター達とヒューバートに声を掛ける。…3人は、今なお非常に緊張していた。

 まあ、やっぱり『事情』を知っている『俺達』はこういう反応になるよな…。

『ーそれでは、皆様のこれからの活躍と帝国ナイヤチの永久の栄光と友好を願い乾杯させて頂きます!

 乾杯っ!』

『乾杯っ!』

 そうこうしている内に、皇女殿下は乾杯の挨拶をした。…直後、ホールに居た関係者達は返事をし『晩餐会』は始まった。

「「「………」」」

「…ほら、さっさと食べましょう。せっかくの美味しいディナーが冷めてしまいますよ?」

 他のテーブルでは、『民間サポーター』達がマナーを忘れてガツガツとディナーを食べていくなか、同席者達は口当たりの良いドリンクをなんとか一口だけ飲んでまた緊張していた。…なので、俺はとりあえずナイヤチのスープ料理を軽く食してから3人に促す。

「……っ」

「……あ」

「………」

 すると、3人は俺と同じスープを口に運びゆっくりと飲む。…すると、3人の緊張は少し和らいだ。

 ー多分、優しい味のおかげだろう。


『ーはあ~、ウメェ~ッ』

『…うわ、このお肉の料理意外とさっぱりしてる……』

『…あ、こっちの帝国の料理も美味しい』

「ー…っ」

「…私達も、食べましょうか」

「…ですね」

 そして、3人に周りに目を配る余裕が生まれた。…尚、周りのテーブルでは『現地サポーター』達が感動しながらディナーを味わっていた。

 それを見た3人は食欲を刺激され、それぞれ気になった料理を取って食べ始める。

「…やっぱり、一流シェフが作ると凄いクオリティになりますね」

 まず、帝国のサラダ料理を食べた姉はそんなコメントをした。…なので、今食べている辛口のライス料理を食べる手を一旦止め同じサラダを口にした。…あ、これ『ホワイトメル』にあった『ヘルシー料理』と似ているな。

「…うん、やっぱりこれくらい味が濃いのが良い」

 そんな感想を抱いていると、濃厚そうなソースが掛けれた料理を食べた弟はそんな事を言う。…やっぱり、『ガッツリ系』がお好みのようだ。


「…っ。……」

 一方、新入りはナイヤチ独自の『テンシン』を食べ…直後に驚いた。

「…ああ、最初は『ビックリ』しますよね」

「…っ。…知ってたんですか?」

「ええ。…実は、道場で良く振る舞って貰っていたんです。

 ー肉汁が飛び出す、お店顔負けの絶品『テンシン』を」

「…うわあ。…それは、なんとも贅沢ですね」

「…良いなぁ」

「羨ましいです」

 それを聞いた3人は、心底羨ましい顔をした。…いや、本当に道場には何から何までお世話になってしまった。

「…あ、ならー」

 すると、ヒューバートはとある料理を指差した。どうやら、気になっていたようだ。

「ああ、それはー」

 ーそんなやり取りをしながら、俺達は極上のディナータイムを楽しみ(ガッツリ食べたのは俺とイアンで姉と新入りは小食)最後に2:2でナイヤチスイーツと帝国スイーツを堪能するのだったー。



 ○



 ーそして、翌日。

『ー皇女殿下~っ!後援会の皆様~っ!

 サヨウナラ~ッ!』

 宇宙港の1画…軍用のブロック前のゲートには沢山の人達が詰め掛けていた。…彼らは皆、本当に名残惜しそうに手を振っていた。

『サヨウナラ~ッ!』

 勿論、皇女殿下をはじめ後援会のメンバーも皆満面の笑みで返しブロックの中に入って行く。…さてー。

『ー警護メンバー第2陣に通達。間も無く、出発時間となる。各員、準備は宜しいか?』

 船内のモニターで地上の様子を確認していると、映像がオートで切り替わり通信兵の顔が映し出された。

「問題無しです」

 なので、俺や他のメンバーは速やかに応答していく。

『良し。それでは、今しばらく待機せよ』

 それを確認した通信兵は、そう告げた後に通信を切る。…すると、そのタイミングでコクピットのドアが開いた。 

「ーお。良く似合ってますね」

「…どうも」

「…ありがとうございます」

 入って来たのは、カノープスの新入り達…ミリアムとエリゼ博士だった。…2人は、『それぞれのポジション』に合わせたカノープスの『クルージャケット』を身に付けていた。

「…えと、それで私達はー」

「ああ、2人共適当なシートに座って下さい」

 ミリアムの質問に、俺はそう返す。…まあ、ミリアムはパイロット資格を持っているとはいえ『サポート』は慣れてないだろうし、博士は船のコクピット自体初めてだろうしな。


「…すみません」

「まあ、ほとんど『マネージャー』とかがやってくれるしな。…それに、2人には『優先して欲しい役割』もありますから」

「…あ」

『ー護衛チームに第2陣に通達。

 これより、先に軍港より出発した第1陣メンバーが第1宇宙港周辺に展開する。その後、後援会の方々を乗せた遊覧船が港を出発。

 諸君らは、遊覧船出発から5分後に細心の注意を払いつつ港より出発し合流せよ』

「了解」

 そうこうしている内に、予定時刻となったので再度通信兵がモニター映し出された。…そして、もう一度出発の段取りを説明された。

「…なんか、凄く大変そうですね」

 その通信も終わると、シートに座ったミリアムがふとそんな事を行った。

「まあ、なかなかこの規模での移動はないからね…」

『ー護衛チーム第1陣。第1宇宙港周辺に到着!展開しますっ!』

 軽く返していると、別の通信兵からの伝達が聞こえた。

『了解!遊覧船、出発します!』

 そして、通信の後遊覧船は港から出発した。

『ー第2陣、ライトサイドより随時出発せよっ!』

「了解!

 ーカノープス・リスペクト、出発します!」

 それからきっかり5分後。第2陣の出発許可が出たのでたまたまライトサイドの端に居た俺から出る事になった。


「ー……。うわ、壮観ですね」

 その後、宇宙港周辺に展開していた本隊と合流するのだが…様々な護衛船や有名な船乗りの船が結集している光景に、博士は溜息を吐いきそんなコメントをした。

『ー第2陣、合流完了!

 それでは、帝国への帰還を開始する!』

 そして、第2陣もトラブルなく合流を完了し護衛船団は帝国に向けて出発するのだったー。

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