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『後日』-ドラゴンの寝床-

 ーそれから、およそ1時間後。山道を進んでいると木製の建造物…古いナイヤチの意匠を感じさせる『ゲート』が見えて来た。

「ー…うわ、スゴ……」

「……」

「…はあ、まさか本物を目にする日が来るなんて……。…あ、『コレ』って撮影オーケーですか?」

 そして、だんだん『ゲート』が近くにつれ岩肌に直接くっ付ついた巨大な『ゲート』に圧倒された。…そんな中、姉はブレなかった。

「ええ、大丈夫ですよ」

「じゃあ、まずは『個人』で撮影しましょうか。…1番手は、アイーシャさんです」

「えっ、良いんですか?ありがとうございますっ!あ、コレでお願いします」

 撮影許可が出たので、俺は素早く提案を出した。…すると、姉はキラキラした笑顔を浮かべてお礼を言って来た。そして、お馴染みのトラベルカメラをこちらに渡しダッシュでゲートの前に移動した。

「ー撮りますよ~っ!」

「はーいっ!」

 俺もベストポジションに移動し、彼女に声を掛けてから『決定』を押した

「オッケーですっ!」

「ーっ!」

 無事に撮影出来た事を伝えると、彼女は再度ダッシュで戻って来た。…ちなみに、今回彼女は本当に幸せそうな笑みを浮かべるだけでポーズは取っていなかった。


「ー……。…ありがとうございました。また、私だけの『プレシャス』が増えました」

 フォトを確認した彼女は少しの間それを凝視する。…そして、顔を上げた時には僅かに瞳が潤んでいた。

「…っ。じゃあ、オリバーさんのは私が責任を持って撮影しますね」

「お願いしますー」

 彼女はハッとして、撮影を申し出てくれた。なので今度はこちらのトラベルカメラを渡しダッシュでゲートの前に移動した。

「ーはっ!」

 そして、ゲートの前に立った俺は持参していた『紅天棍』を取り出しポーズを決める。

「ーっ!と、撮りますっ!」

 すると、また彼女はハッとして慌てて撮影した。…そんなに、『ハマッて』いただろうか?

「…お、オッケーですっ!」

「(…まあ、良いか。)

 ーそれでは、『皆』で撮りましょうっ!」

「ーっ!はいっ!」

「……」

「…えっ!?」

 とりあえずスルーし、俺は『クルー』に声を掛けた。すると、ランスターの2人は直ぐに駆け寄って来た。…しかし、『新入り』のミリアムは困惑する。

 まあ、『撮影者』が居ないのにどうやって撮影するのか…という事を気にしているのだろう。勿論ー。


「ー宜しく~っ!」

『ーPYEEE!』

「っ!?」

 俺は『後方』に向かって手を振る。…すると、後方から『トリ』の鳴き声が聞こえて来た。

 当然、ミリアムはぎょっとして振り返る。

 ーまあ、後方からはチルドレン『ワープ』が飛んで来ていたのだ。

『PYEE!』

 そして、『トリ』は一旦近くの木の枝に止まると足元に向かって『フィールド』を展開する。…直後ー。

「ーっ!?」

 フィールドの中にカノンが出現し、深く一礼した。…まあ、ミリアムは更にぎょっとする。

「ー……っ」

 けれど、カノンが丁寧な所作でこちらを指し示すとミリアムは直ぐにこちらに向かって駆け出した。

「…すみません、お待たせしました」

「いえいえ。…こちらこそ、驚かせてすみませんでした。

 ーあ、彼女も私の船のクルーの1人です」

『ーマスター。ご準備は宜しいでしょうか?』互いに謝っていると、カノンからメッセージが来た。なので、とりあえず撮影を優先する事にする。

「…じゃあ、適当に並んじゃいましょう」


「はい」

「…うん」

「分かりました」

 すると、自然な流れでアイーシャとイアンは俺の左右に立ちミリアムは姉の横に立った。…うん、なんかちょうど良い並びになったな。

 それを確認した俺は、カノンに合図を送る。直後、彼女は撮影を実行した。

『ーありがとう』

『どういたしまして。それでは、私はこれにて失礼致します』

 そして、撮影は無事に終わり俺は直ぐにカノンに感謝のメッセージを送る。…勿論、凄い速さで返信が来た。

 そして、彼女は向こうで一礼し再びワープした。

「…あの方は、一緒に撮影しないのですか?」

 すると、ふとミリアムが純粋な疑問を抱いた。…まあ、気になって当然だろう。

「…実は、彼女の存在は『トップシークレット』なのですよ。

 というか、ウチの船は『秘密』だらけですからね~」

「…へ?」

「…あはは」

「…まあ、そうだね」

 俺はコソコソ話の体勢で、軽く事情を説明した。…まあ、やっぱり彼女は驚愕し『該当者』の2人は苦笑いを浮かべる。


「…っ。…それが、お2人の『事情』ですか……」

 そして、『新入り』はこの時ようやく誓約の真意を理解した。…まあ、口約束よりも正式な誓約書を持って締結させた方が2人も安心出来るだろうからな。

 それに、彼女とエリゼ博士はランスター達の『指導役』だ。…つまり、『真の姿』のランスター達と過ごす時間が多いから特に注意を促す必要がある。

 まあ、ヒューバートにも一応話すつもりだが『真の姿』までは見せる必要がないだろうし…『自らクビ』になるマネは、『絶対』にしないだろう。

「ーまあ、その辺りは出発前にしっかりと話しますので、今はとりあえず中に入るとしましょう」

「っ、はい。

 …じゃあ、すみませんがちょっと離れていて下さい」

「分かりました」

 彼女の言葉に従い、俺達は少し離れた所に移動する。…そして、彼女はポケットからおもむろに『銀色』のナイヤチ発祥のアクセサリーを取り出した。

「ーっ」

 彼女がそれをゲートにかざした、次の瞬間。ゲートの右側に機械が出現しそこから光が照射された。…歴史を感じさせる見た目だが、しっかりとした『管理システム』が搭載されているようだ。

 そして、『照合』が終わると今度は左側の下部に『通用口』が出現する。


「ーお待たせしました」

「…凄く、厳重ですね」

「まあ、『ドラゴン』が離れたとはいえ此処が我々にとって神聖な場所である事に変わりはありませんから。…では、お入り下さい」

 アイーシャの感想に、ミリアムはにこやかに返す。…そして、彼女は通用口を開け『入場』を促して来た。

「ありがとうございます(…多分、先に彼女が入ってしまうと問答無用で『ロック』が掛かるのだろう)」

「すみません、ありがとうございます」

「…どうも」

 なので、俺達は速やかにドアをくぐり抜け洞窟の中に入った。そして、最後に彼女も入ると予想通り通用口が『消えた』。

「ーっ、暗…」

「ああ、ちょっと待ってて下さい」

 当然、閉まった瞬間から周りが見えなくなる。…けれど、案内役は慌てずにそう言った。

「ーっ!」

 時間的には、ほんの数秒後。不意に洞窟内にライトが灯る。それも、かなり明いライトが等間隔に奥まで伸びていた。

「…え、なんか『ハイテク』?」

「…だね」

「ーそうでもないですよ?…現に、『ドラゴン』が離れた時から『此処』には一切手を加えてませんから」

 ランスターの2人が『外』とのギャップに驚いていると、案内役は衝撃発言をした。


「「…え?」」

「ああ、やっぱり『サポーター』のシステムでしたか」

 2人は更に驚くが、俺はピンポイントで答える。…てか、さっきから『コンパス』が反応してるんだよな。

「…あっ」

「…なるほど」

 俺はポケットから『コンパス』を取り出す。…すると、『それ』は淡い光を放っていた。

「……。…っ。

 ー足元が悪くなっておりますので、十分気をつけて下さい」

 初めて見たミリアムは、一緒唖然としていたが直ぐに役割を思い出し注意喚起してくれた。

「ありがとう」

「はい」

「…了解」

 そして、俺達は洞窟の中を進み始めるのだったー。

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