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『後日』-イーストサイド-

「ーお待たせしました」

「「っ!お疲れ様です」」

 それから、数時間後。俺はエリアのイーストサイドの『ゲートウェイ』に来ていた。そこには既に、ランスターの2人とー。

「ーおはようございます、オリバーさん」

『新入り』のミリアムが居た。今日の彼女は、フェスティバルの時のような『正装』ではなく布っぽい素材で出来た動きやすい格好だった。

「……?あの、どうされました?」

「いや、すみません。…良く考えれば、普段着もあって当然だなと思いまして」

 じっと見ていたせいか、彼女は首を傾げた。…なので、正直な感想を告げた。

「…え?…ああ、そういえば初対面の時から『正装』でしたものね。

 ーまさか、こうして人前で私服を見せる事になるとは思いませんでした」

「…え?これ私服なの?」

 彼女は、特に気にした様子を見せず…いや、なんだか嬉しそうにしながら言った。その時、横で聞いていたイアンが不思議そうに聞く。

「ええ。基本的に、こういった素材の服装がナイヤチでは流通しています」

「…へぇ。……」

「あ。後でお2人にも『お渡し』しましょう」

 すると、イアンは彼女の服をじっと見た。…その真意を察した当人は素敵な事を口にする。


「…え?良いの?」

「…しかも、私の分まで……」

 当然、2人は驚いたり恐縮したりしていた。けれど、彼女はニッコリと笑う。

「構いませんよ。

 …実は、お2人用の『稽古着』を用意する過程で『着慣れる為』の普段着も用意した方が良い事になり、それも作って貰っているんです」

「…へ?」

「…マジで?」

「あー、『ドウギ』って着慣れるまで時間掛かりますもんねぇ…」

 困惑する2人をよそに、俺は過去を思い出していた。…ちなみに、俺が受けた『サポート』はバーチャルトレーニングとムービーテキストだった。

「…というか、専用の『トレーニングウェア』まであるんですか?」

「まあ、カンパニーでいうところの『ユニフォーム』みたいな物ですよ。…ありがとうございます」

 当然の疑問を抱くアイーシャに、俺は分かりやすく説明した。…そして、ミリアムにこそっとお礼を言う。

「…っ。『指導役』として、当然の事をしたまでですよ。

 あ、ちなみにエリゼ博士には服の代金をお願いしてありますのでミールは大丈夫ですよ」

「「ふぇっ!?」」

「……(驚いたな。知らない内に、随分と仲良くなっていたようだ)」

 彼女の衝撃発言…ランスターは『ミール』のくだりに。俺は2人の親密さに驚いた。

「…こりゃ、しっかりと『頑張らないと』な?」

「…ですね」

「…うん」

 そして、俺はニヤリとしながら2人にこそっと言う。当然、2人は真剣に頷いた。


「…っと。話が逸れてしまいましたね。

 ーそれでは、ミリアム若獅子頭殿。『案内』をお願い出来ますでしょうか?」

「承知しました」

 すると、彼女は微笑みを浮かべて頷き目の前に広がる広大な自然に向かって歩き出した。

 ーそう。アイーシャの入手した『ファインドポイント』は、この山の中にあるのだ。勿論、登山道はしっかりと整備されているので問題はない。

「…なんか、ドキドキして来ました」

 そして、登山道を進み始めるのだがそれと同じタイミングでアイーシャは緊張し始める。…まあ、『ファン』にしてみればまさに『聖地巡礼』だからな。

「…え?…そういえば、此処の『ファインドポイント』に何があったの?」

「…イアン。…『プレシャス』はどこまで読んだの?」

 すると、姉は弟に確認を取る。…まあ、クルーになってからは忙しくて時間が取れないだろうからしょうがないんだが。

「…え?…今やっと、『ポターラン』のとこまで行った」

「…アナタにしては、随分頑張ってるのね」

『進捗』を聞いた姉は、驚きと感心を言葉にした。…いや、俺もビックリだ。

「…うん。…メカいじりとトレーニング以外で、集中したの初めて」

「…これは、凄い事ですよ。

 ーイアンは今まで、『必要な事』以外に関心が薄かったのですがまさかこんなにも『ハマる』なんて…」


「へぇ…。

 …そうなると、今回は軽い『ネタバレ』になるのか。まあ、しょうがないのかな」

「…って事は、まさか?」

 それでピンと来た弟に、俺はニヤリと笑う。

「…正解。

 ー今から行く『ファインドポイント』には、『ドラゴン』が眠っていたのさ」

「……。…そんな『スゴイ』所に、私も入って良いの?」

 すると、弟は急に不安そうになった。…けれど『案内役』は弟に笑顔を向ける。

「大丈夫ですよ。

 ー『初代殿』が『ドラゴン』の主となるまでは、この山全体は文字通り『聖地』でした。当然、『許可を得た者』以外立入禁止です。

 …ですが、今はアーツ道場の門下達の修行の場としてだけでなくトレッキングコースとしても解放されています」

「…そうなんだ」

「…あ、そういえば自然スポット番組『ザ・ナチュラル』で此処が取り上げられてたな」

 それを聞いた弟は、ホッとしたようだ。一方、俺はふとそんな事を思い出していた。

「…なんでそういうニッチな情報を持ってるんですか?」

「まあ、実家の『メインテレビ』の『チャンネル権』は祖母ちゃんが握ってたからな。

 だから、そういう番組を見る機会が多かったんだよ」

「…あ、ウチとおんなじだ」

「…まあ、ウチの場合は『トレジャーハンター系』が多かったですが。

 ー…って、ちょっと待って下さい。今、『メインテレビ』って言いませんでした?」

 すると、2人の家庭も同じだったようだ。…そして、姉はしっかりと突っ込みを入れて来た。


「ああ、ウチは祖母ちゃん以外『個人用のテレビ』持ってるんだよ」

「…へ?」

「…さすが、『ブランドファーマー』ですね……」

 サラッと返すと、2人は唖然とした。…けれど、俺は首を振りこそっと言った。

「…ああ、違う違う。

 ー実は、祖父ちゃんの『古い友人』のプレゼントなんだよ」

「…はえ?」

「…わあ、『ソッチ』でしたか……」

「…オリバーさんのお祖父様ってどれだけ『顔が広い』のですか?」

 当然、2人はまた唖然とし案内役は純粋な疑問を抱いた。…なので、俺はニヤリと笑う。

「…なら、若獅子頭殿も『プレシャス』を読んでみてはいかがです?

 ーきっと…いや確実に、『答え』を知れるでしょう」

「…っ!でしょうね」

「…っ。…そうですね。

 分かりました」

 俺と姉の『プレゼン』に、彼女はニッコリと

 笑い『読んでみる』と言った。…きっと、自分で答えを知る方が『面白い』と思ったのだろう。


「……。…ん?」

 そんな、和やかな空気のなかふとイアンは何かを発見した。…ん?…って、おいおいあれはー。

 俺も気になって見てみると、進行方向にトレッキング集団が見えた。…というか、その集団に物凄い見覚えがあった。

「…っ!あれって、『後援会』の方々では?」

 姉もそちらを見て、集団の正体を口にする。…まあ、多分当初予定されていた観光をしているのだろう。

「ー…って、ええっ!?」

『……?…ふぇっ!?』

 すると、向こうの最後尾のメンバーがこちらに気付き…驚愕の声を出す。…当然、他のメンバーも後ろを振り返り驚愕した。

「ーあ、おはようございます」

「「「おはようございます」」」

『…お、おはようございます』

 そのせいで彼らの足が止まってしまい、その間に容易に追い付いた。…とりあえず俺達は挨拶すると、向こうは緊張しながら返して来た。

「ーおはようございます、キャプテン・ブライト。キャプテン・アイーシャ、イアン様。

 それに、リーベルト若獅子頭殿も」

 けれど、彼らの先頭を歩くトレッキングルックの皇女殿下はいつも通りの優雅な挨拶をしてきた。


「おはようございます、皇女殿下」

「「「お、おはようございます、皇女殿下……」」」

 俺は普通に礼節を持って返すが、残りのクルー達が緊張しながら返した。…いや、混乱も混じっているのだろう。

「…そういえば、殿下のご趣味の中に『アウトドア』がありましたね」

「あら、ご存知でしたか。…ところで、皆様はどうして此処に?」

「…まあ、ちょっとした『ヤボ用』って所ですよ(…良しー)」

 当然、殿下はこちらの『メンツ』を見て疑問を浮かべる。…なので、俺は周囲に居る彼らに対してボカして話す。無論、護衛のオーガス卿にはメッセージを送る。

「ーっ。…殿下。スケジュールに遅れが出てもいけませんので、そろそろ進みましょう」

「…っ。それもそうね。

 ーさあ、皆さん。進みましょうっ!」

『イ、イエス、ユア・ハイネスッ!』

 そして、殿下の掛け声で彼らは進み初め分岐を左に進んで行った。それから少しして、俺達は『後援会』とは反対のルートに入った。

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