「ー来たか…」
そして、満点の星空が広がる頃。
『サポーター』の一体が、こちらに向かって来るのを確認した。
『ーグラビティフィールド、展開します』
すると、『ウシ』に乗るクローゼが『足止め』を発動させる。…直後、大きな『トラのレプリカ』がだいたい同じサイズの『グラスホッパー』を引き連れて来るというなかなかに『グロい』光景が映った。
「「…うわぁ……」」
「……。
ー『セーフティ・アンロック』、『ブレイクモード』発動っ!」
ランスター達は、案の定ドン引きする。…俺も、若干気持ち悪くなっていたが気持ちを切り替えて『トラ』にオーダーを出した。
『GAUuuu!』
それを聞いた『トラ』は、まるで『待ってました』とばかりに高らかに吠えた。それに合わせて、モニターの壁紙になっている『黄色のトラ』が『金色のトラ』に変化した。
ーいや、何度見ても『カッコいい』な。
「ー…っ。
カウント、30ッ!」
俺と同様に見惚れていたアイーシャは、慌ててカウントを設定する。…そして、それからきっかり30カウント後ー。
『ーGAO!』
『レプリカ』は『ウシ』のフィールドの手前でジャンプし、そのまま軽々と俺達の頭上を飛び越え後方に待機した。…そして、後ろから来ていた害虫はまんまとフィールドに入って行き地面に叩き付けられた。
「ー…ひっ……」
「…ムリィ……」
しかし、『害虫』はその中で必死にもがき出したのだ。…その光景は、女子のランスター達でなくてもマジで生理的に無理だろう。
「『ブレイクブラスター』ッ!」
『ーGAU!』
故に俺は、半ば叫ぶようにオーダーを出す。…直後、『トラ』から金色のビームが発射された。
ーそして、ビームはフィールドに入った瞬間偏光のような現象を起こし軌道を変えて醜くもがく『害虫』に命中した。…当然、『害虫』は一撃で消滅した。
「ー…ふう」
「…はあ、マジでヤバかったですね……」
「…『アレ』を後数回は見ないといけないの?」
おかげで、俺達のメンタルは少し良くなった。…けれど、妹の言葉でちょっと憂鬱になる。
「…これが片付いたら、次は『楽しい冒険』だ。
なんとか、頑張ろう」
「…ですね」
「…うんー」
俺達は、気をしっかり持ち『次の事』を考えた。…けれど、まるで俺達を嘲笑うかのようにー。
『ーGAU!GAU!』
不意に、『トラ』が慌てたように『2回』吠えた。…これは、『警告』の合図だ。
そして、モニターにはエリアに展開中の『サポーター』の姿が映るのだがー。
「ー…こりゃ一体?」
どういう訳か、いつの間にか『サポーター』が『害虫』を追い掛けていたのだ。…その状況に、俺は困惑と『嫌な予感』を抱く。
『ー…マスター。もしかしたら、我々は何か大きな勘違いをしているのではないでしょうか?』
『…私も、同意見です』
「「……」」
当然、ライトクルー達も同じだった。…だから、俺は直ぐに『対処』を考えた。そしてー。
「ー…カノン、今こちらの手元にある『マーカー』で『害虫』達を『飛ばす』事は可能だろうか?」
『…っ!…直ぐに、シャロンに繋ぎますー』
直後、モニターの映像は切り替わりシャロンが映し出された。
『ーえっ!?ど、どうしたんですか?……っ。
…あ、-なるほど-』
まあ、当然彼女はびっくりするが直ぐに事情を『把握』したようだ。…ホント、彼女達の『ネットワーク』って便利だよなぁ。
『…とりあえず、シミュレートしてみますねー』
そして、彼女は直ぐに確認に取り掛かった。…そうこうしている内に、数体の『害虫』は『サポーター』を徐々に引き離し始めエリアのイーストサイド…『ホテルブロック』に近いて行く。
恐らく、狙いは『後援会メンバー』だろう。
『ーマスターへ報告。防衛軍司令より、通信が入っています』
「っ!直ぐに繋げてくれ」
『了解ー』
『ーこちら、ナイヤチ防衛軍本部司令レティだ』
直後、画面は切り替わり女性の指揮官が表示された。…その表情は、かなり緊迫していた。
「こちら、キャプテン・プラトー」
『…キャプテン・プラトー、率直に聞きたいのだが-アレ-をどうすれば良い?』
「ご安心を。
ー『アレ』は、私が『処理』しますので…。…今、クルーにその為の『計算』をさせています」
『ーマスターッ!-ギリギリ-行けますっ!…でも、その為には1つ問題があります』
すると、ちょうど良いタイミングでシャロンから『答え』が来た。…だが、彼女は厄介そうな感じでそう言う。
「何だ?」
『…あの装置を、-ドラゴン-にシンクロする必要があります。
ー…-大丈夫-でしょうか……』
恐らく、あのマーカーに『トラップ』が仕込まれていると考えているのだろう。勿論、『ドラゴン』にチェックはさせているが『カノープスや俺達にとって物理的に危険なモノ』以外だと、判定が出にくのだ。…ただー。
『ー多分、-大丈夫-だ。…きっと連中は、-そこまで周到には-準備はしていない』
『……』
…そもそも、あのマーカーには『自壊システム』すらなかったのだ。それなのに、『小賢しいトラップ』を付けるだろうか?
いや、きっと『こうなる事』さえも連中は想定していないだろう。
『…分かりました。
至急シンクロを開始します』
「頼んだ。
ー…ああ、すみません」
『…いや、構わない。…それにしても、素晴らしいクルーがいるのだな。
…っ。そうだ、我々に何か出来る事はないか?』
「…そうですねー」
ふと、司令殿はそんな質問をしてきたので俺は素早く考える。…そんな時、遂に『害虫』達はホテルを取り囲んだ。
「ー……?」
『…何だ?』
だが、どういう訳か『害虫』達は一向にホテルを守る『サポーター』達とぶつかり合わなかった。…けれど、その『理由』は直ぐに分かった。
「…っ、おいおいおいおいっ!嘘だろっ!?」
『…ま、まさか……』
すると、またしても何処からともなく超巨大な『ボックス』が出現し、『害虫』は勿論ホテルや『サポーター』までもをスッポリと覆い隠してしまった。
「ーシャロンっ!」
『申し訳ありませんっ!後、120カウントで……え?』
「…どうした?」
俺はシャロンに確認をする。けれど、まだ時間は掛かるようだ……と思っていたその時。
彼女は、『信じられない』と言った声を出した。…俺は、何故か『確信的な予感』を抱きながら聞く。
『ー…マスターに報告。
-たった今-、アドベンチャーカノープスに新たな-リンクシステム-が生まれました…』
そして、それを証明するようにカノンは『最高』の報告をして来た。
「カノンッ、シャロンッ!
直ぐに-それ-を使って、『害虫』共を『宇宙』に飛ばせっ!」
『イエス・キャプテンッ!』
『-リジェクト・ワープ-発動しますっ!』
直後、ホテル上空に『白とオレンジ』の光が降注ぎ…『ボックス』は忽然と姿を消した。
「司令殿っ!『転送完了』後、『エネミー』を『この地点』に誘導願いますっ!」
『ーっ!了解したっ』
そして、司令との通信は切れたので再びカノンがモニターに映る。
『それでは、マスター達を転送致します』
「頼んだ」
「「お願いしますー」」
直後、俺達の乗る『トラ』は光に包まれたかと思ったらいつの間にか『ドラゴン』の中に居た。
「良し。それじゃ、行ってくる」
「はい」
「…頑張って」
そこで俺は2人と分かれ、コクピットに向かう。……ん?
その道中、ふと『ドラゴン』と『トリ』が俺の元にやって来た。…しかも、何故か片方は『ドラゴシューター』を。もう片方は、『紅天棍』を運んでいたのだ。
「(…何だろう。…とても、『面白い事』が起きそうな気がする。)
ー『ありがとう』」
気付けば、俺はこんな状況にも関わらず『ワクワク』していた。だから、自然とサポーターにお礼を言ってからそれらを受け取った。