『ーっ!?そ、そんなっ!反応はなかったハズなのに…』
『…何処から』
『考えるのは後だっ!
ーシールド展開っ!』
『っ!-エレキシールド-展開っ!』
『…エレキシールド展開』
アイーシャ達が驚愕する中、俺は並走する『トラ』にオーダーを出した。すると、2人は直ぐに切り替え俺と同じ行動を取る。
『ーGAO!』
直後、俺達のオーダーを受けた『トラ』達はシールドを展開した。
ー次の瞬間、俺達と『害虫』達は真正面からぶつかる。…だが、俺達は大群に壊滅的なダメージを与えつつその中を悠々と突っ切って行く。
『ー良し、何とかなったな…』
『…正直、かなり怖かったです』
『…全くその通り。
…ところで、何で-ウサギ-は反応しなかったんだろ?』
そして、無事に増援を突破し俺達はとりあえずホッとした。…そんな時、ふとアインは後回しにした疑問を口にした。
『…多分、地上に仕掛けられた-トリ-のワープシステムを使ったんだろう』
『…あ……』
『…それなら、予兆はないか。
…でも、-レプリカ-って……』
すると、アイーシャは直ぐに納得した。…けれどアインはまだ何か引っ掛かっていた。
『確かに、レプリカはオリジナルに性能が劣る。…だから、恐らく何処かにマーカーがセットされているハズだ』
『……。…本当に、-連中-って呆れるほど念入りに準備しますよね』
『…しかも、今回は-八つ当たり-なのにね』
その予想に、2人は非常に呆れた様子になった。…本当、非常に『面倒くさい』奴らだ。
『…どうします?』
『それはサポーター達にお願いしよう。…俺達は、先程判明した-重要拠点-を叩く』
そして、姉は『私達でそこを潰しますか?』と聞いて来たので俺は即サポーターに任せる事にして、『やるべき事』を告げた。
『分かりました。
ーこちら、シルバーサポーター。情報班、応答して下さい』
『ーはいっ、こちら情報班レギュラーレディ。…どうやら、無事なようですね?』
すると、姉は直ぐに情報班に通信を入れる。それに応じたのは『レギュラーレディ』ことイリーナ班長だった。…情報班もさっきのイレギュラーを知っていたようで、班長はホッとした様子だった。
『ええ、-シールド-で何とか無事に切り抜けました』
『…やはり、貴方は凄い人だ。…っ、失礼。
報告をお願いいたします』
『あ、はい。…実はー』
俺が答えると、班長は尊敬の念を向けて来るが直ぐに切り替えて報告を促して来た。…そんなに、『凄い事』だろうか?
『ーなるほど。貴重な情報、感謝します。
…っ!-彼-が直接話をしたいそうです』
『(…おや?)分かりました。繋いで下さい』
『了解ー』
『ーあ、すみません。…あの、その件でお伝えしたい事があります』
『…流石だな。もう、調べ始めていたか』
『…どうもです。
ー…あ、出ました。……え?』
そうこうしている内に結果が出たらしいが…ヒューバートは『それ』を見て困惑した声を出す。
『…どうした?』
『…どうやら、連中は随分と-ストーンエイジ(原始的)-な手段を使ってるみたいです』
『…まさか、敵がマーカーそのものを持っているなんて言わないよな?』
『…そのまさかですよ……』
俺は、恐る恐る確認する。…それに対し、ハッカーは呆れた様子で返して来た。
『…どうして連中は、こうも絶妙に-手を抜く-んだろうか……』
『…多分、-アレ-をケチりたいからじゃないですか?』
思わず呟いてしまうと、ハッカーは私見を口にした。…なるほど。
『…えっと、連中は-手掛かり-を多く所有しているんですよね?
なのに、消費を凄く惜むってどういう事ですか?』
すると、話を聞いていた姉が疑問を口にした。…いや、彼女も若干呆れているようだ。
『…もしかして、-実は残数が少ない-とか?』
『…あ、十分考えられますね。それか、別の-深刻な事情-でしょうか?』
『…まあ、何にせよ-チャンス-なのは間違いないが、今は-目の前の問題-を片付けるとしよう。
…んで、位置は?』
『あ、今シルバーサポーターの-ウマ-に位置情報を転送しますねー』
『ーHIN!』
すると、少し間を置いた後妹の『ウマ』が短く鳴いた。…どうやら既に、『レッグコンタクト』を使いこなしてるようだ。
『位置確認完了。ナビゲーションを開始します』
『頼む』
そして、姉はきちんと情報をインプットし前に出たのだったー。
○
ーSide『サポーター』
『ー……』
直前まで窮地に追い込まれていたミリアム達だったが、突如上空から降注いだ白い光によって『安定』な場所に避難していた。
ーけれど、彼女達の心情は安堵よりも『不甲斐なさ』でいっぱいになっていた。
(ー…分かっていた『つもり』になっていた。…これから私が、『どのような戦い』に身を投じるのかを。
けれど、現実は非情だった…)
『ーバイタルチェック完了シマシタ。
-メンタル-ノ数値ガ不安定デス。戦闘ノ続行ハ控エテ下サイ』
ミリアムがそんな事を考えていると、彼女達を包んでいた白いバリアが消え電子的なアナウンスがながれた。
『……っ』
(…はあ、『ドクターストップ』まで出されてしまったか……)
それは、『現実を突き付ける』事に他ならなかった。…だから、彼女達はどんよりと落ち込んでしまう。
『ー皆さん大丈夫ですかっ!?』
『……』
直後、避難ルームのモニターに彼女達のトップであるグラディスの姿が映った。…当主の滅多に見せない慌てた様子に、彼女達は驚いていた。
「…大丈夫ですよ。グラディス流バトンアーツメンバー、全員無傷です」
すると、若獅子頭は素早く当主に全員の無事を報告した。
『…そうですか。…本当に良かった』
それを聞いた当主は、心底安堵した。…恐らく、当主の元にも彼女達が窮地に陥ったと報告が流れたのだろう。
「…まあ、結局『大して役に立たず』にこうして安全な場所に避難してしまったのですがね」
その反応は、彼女達を更に追い込んでしまった。…だから、ミリアムは代表してふと心中を吐露する。
『ー何を言っているのですか?
貴方達は、-きちんと役目-を果たしたではありませんか』
すると、当主は意外そうな顔をした。…実際、彼女達を含めた『現地サポーター』は増援の『潜伏ポイント』をしっかりと制圧していたのだ。
つまり、『敵の重要拠点』だけが最後に残っていた事になる。…だからこそ、敵は一時的に『拠点』の周辺に『戦力』を集中させたのだろう。
ー恐らくは、『やられる前にやれ』の精神で行動したのかもしれない。
『ー先程、キャプテン・プラトーよりお言葉を頂戴致しました。
彼は、-皆様のおかげで敵の重要拠点を割り出す事が出来ました。感謝します-…と仰っていましたよ』
『……っ』
「…そんな……。…なんと、勿体なきお言葉でしょうか」
彼女達は、その言葉に震える。…ミリアムに至ってはその瞳に涙を浮かべていた。
『…ですから、貴女達は胸を張って堂々としていなさい。
そもそも、我々はあくまでも-現地の有志-に過ぎませんし-厄災そのもの-に抗う力なども持たない人間です。
ですから、-そういう事-はプロにお任せしてしまえば良いです』
『……っ』
「…あ……」
言われて彼女達は、ハッとさせられた。…いつからか、『自分達に勝てない相手は居ない』と思っていたのかもしれない。
『大事なのは、誰一人怪我なくこの事態を乗り切る事です。
ーそれこそ、紛れもない-勝利の証-なのですあら』
『……』
当主の力強い言葉に、いつしか彼女達からマイナスの感情は消えていた。
『…どうやら、自分達が-勝ちの条件-を整えた事を理解したようですね?』
『ーはいっ!』
『ーならば、引き続き-協力-を続けなさい』
「…っ!もしかして、まだ『私達』に出来る事があるのですか?」
『ええ。…良く聞きなさいー』
すると、当主は彼女達に『次にやるべき事』を伝えるのだったー。