『……何て?』
『…-比翼の鳥-です。…以前、-フェイクアート(ミスティ)-から片翼しか持たない不思議な鳥の話を聞いたんです。
なんでも、その鳥は生まれた時から片方しか翼と目がなくオスとメスのカップルで支え合って生きて行くのだと。
…そして、円満なカップルの事をその鳥に例える事もあるんだとか』
すると、クレアは聞いた話を正確に伝えた。
『…ほう』
『…初めて聞いたな。…つまり、-アレ-はそのバードをモチーフにしているって事か』
『まあ、何にせよ助かったな。-彼ら-が来なければ今頃…』
『ーありがとう!』
クルツが冷や汗を流すなか、ふとウェンディ『トリ』達に向かって手を降りながらお礼を言った。
『…っ。救援感謝する!』
『サンキューなっ!』
それを見て、他のメンバーもお礼を言った。
『ーPYE!』
すると、『トリ』達は『返事』をしながら彼らの元に降りて来た。
『ーっ!支援行動をしてくれのかっ!助かる!』
メッセージを読み取ったクルツは、きちんとした礼をして再度『ウマ』に乗る。
『ーこれより、改めて-フェーズ2-に移行する!』
『イエス、コマンダー!』
『GO!』
そして、戦闘班は再度行動を開始した。…しかしー。
『ー………』
それから少しして、クルツと行動を共にする『イヌ』がふとキョロキョロし始める。
『(……?今度は何だ?)
どうしー』
『ー~~~~ッ!』
気になって聞こうとした矢先、他のサポーター達が一斉に『パニック』になった。
『ーお、おいっ!どうしたっ!?』
『っ!制御がっ!?』
それに合わせて、後ろに続くメンバーからも困惑の声が聞こえた。
『ー戦闘班総員!緊急停止の後、-シークレットシステム-発動!』
『っ!サー、イエッサー!』
だが、その時。遊撃部隊隊長のオットーの声が戦闘班全員に聞こえた。直後、全員安全を確認
し緊急停止を実行。
そして、『カノープス仕様』の小型端末の『シークレットシステム』を起動した。
『ー~~~~ッ………-リラックスコード-受理』
直後、パニックになっていたサポーター達は直ぐに『沈黙』し…電子音声が流れた。
『ーサポーター、再起動シマス』
それから、だいたい30秒くらい経って再度電子音声が流れた。
『ー………ッ』
すると、サポーター達はゆっくりと再起動して行く。…今度はパニックにはならなかったが、やはり何かに『怯えて』いた。
『ーこちら-ブレイブ1-。ストライク1、応答せよ』
どうしようかと考えていると、再度オットーから通信が来たので彼は直ぐに出る。
『っ!こちらストライク1、助かりました』
『メンバーは大丈夫か?』
『はい』
『…良かった。実は、先程こちらや散開しているサポーター達の所でも以上が発生したのだ』
『…やはり。…一体何が起こったのですか?』
『…先程、-巨大な振動-が発生したのは知っているだろう。
ー直後、モンスター達は激しく発光し-隔離シールド-を破壊し始めたのだ』
『…な……』
『…ウソ……』
上官から告げられた衝撃の報告に、彼らは驚愕する。
ー何故なら、その『隔離シールド』は『カノープス』…『ドラゴン』のシステムなのだから。
『ーブレイブ1、現在の位置はトレーニングパークで間違いないか?』
『(…凄い。)は、はいっ!トレーニングパーク、イーストゲート付近です』
すると、何故か上官は妙に落ち着いた様子でこちらの現在位置を確認して来た。…それを感じた彼は、尊敬の念を抱きつつ詳細に返した。
『了解した。
ー戦闘班に通達する。総員、-フェーズ2-を続行せよ!
ただし、各自決して無理をせず続行が難しい場合は至急戦域から離脱するように!』
『ーっ!イエッサーッ!』
『イエッサーッ』
そして、オットーは改めて戦闘班に忠告を添えてオーダーを出した。勿論、班長含めた全員がその場で敬礼するのだったー。
◯
ーSide『プリンセス』
(ーっ!…何だか、『イヤな』予感がする……)
『緊急事態宣言』が発令されて、間も無く1時間が経つ頃。
『後援会』のメンバーと共にホテル地下のシェルターに避難していた皇女リーリエを、とある『異常』が襲った。
ー胸元にある『ヘビ』の指輪が、微かに振動していたのだ。…まるで、『怯えて』いるような現象に彼女は更に不安になってしまう。
「…殿下、どうされました?」
すると、専属騎士のオリビアが小さな声で聞いて来たので彼女は服の上から『それ』を指差した。
「…っ。やはり、外では相当な異常事態が発生しているようですねで」
それだけであらかた『察した』専属騎士は、天井を…その先に広がるであろう地上を見据える。
「……(『彼ら』はー)」
「ー大丈夫ですよ、殿下。
『彼』とその『サポーター』達なら、必ずやこの事態を『最良』の結果に導いてくれるでしょう」
皇女も上を見上げつつ、オリバーや『サポーター』を心配する。…すると、専属騎士は落ち着いた様子で安心させた。
「…そうね。…私は、そんな『彼』の後ろ楯になると決めたのですから誰よりも『信じる』べきね」
「その通りでございます、殿下。
ーっ、少々失礼致します。………え?」
皇女の決意に、専属騎士は微笑みを浮かべた。…そんな時、ふと騎士の端末が振動したので当人は断りを入れてからメールを確認する……のだが、直ぐにその表情は唖然としたモノに変わっていった。
「…どうしたのー」
専属騎士の滅多に見せないその表情に、皇女はまた不安になってしまい聞いてみるが…。
ーその時、シェルター内部の照明が一斉に消えた。
『ーきゃあっ!?』
『な、なにっ!?』
当然、共に居るメンバーはパニックになってしまう。…だがー。
『ー皆さん、落ち着いて下さいっ!』
ふと、広いルーム複数箇所からメガホンによってボリュームアップした指示が流れた。それに合わせて、ルームの中に十分な数の『明かり』が出現する。
『ー……あ』
『…たった今、ホテルの方から連絡がありました。
現在、ホテルの-シールド-に生命維持システム以外のリソースを回した影響で照明が停止したそうです。
ですが、このように-非常用-の照明システムがありますのでどうか落ち着いて下さい』
『……』
それに気付いたメンバーに、誰かはアナウンスを流した。…すると、メンバーは徐々に落ち着きを取り戻していった。
(…あれは、『トラ』と『トリ』よね……。…一体、誰が?)
皇女は安堵しつつ、『非常用照明』の正体を正確に見抜いていた。…そして、専属騎士の腕を指先で突っつく。
「ーイエス、マイロード」
すると、今回ばかりは騎士も非常に素直に『オーダー』に従う。…どうやら、2人の意見は同じのようだ。
『ーっ!?』
そして、2人は静かにたまたま『近く』に居たその人物の元に移動する。…当然、ルームの中は別の意味でまたざわざわした。
「ー先程は、どうもありがとうございました。
…えっと、確か『レーグニッツ』さんで宜しかっですよね?」
「「………」」
その人物…オリバーの『弟』であるロランと、たまたま傍に居た『妹』のリコリスは突然発生した事態にアワアワしていた。
「ー…っ。き、恐縮です……」
「……」
しかし、ロランは直ぐになんとか言葉を口にした。…一方、リコリスは固まったままだった。
(…いろいろ『聞きたい』けれど、これ以上はよろしくないわね。まあ、後で『彼』にでもー)
「ー…皇女殿下、彼がどうかしましたか?」
皇女は2人に気を遣って話を切ろうとした。そんな時、『いろいろ知ってそうな』アイリスがメンバーの中を通って近付いて来る。
「ああ、アイリスさん。
実は、先程の『アナウンス』に対してお礼を言っていたんですよ。…っと、そういえば貴女もでしたね。
フェンリーさん。先程はありがとうございました」
「…恐縮です、殿下。まあ、ほとんど『アレら』のおかげですが…」
「ーっ。…あの、フェンリーさん。
もし差し支えないようでしたら、その『アレコレ』を聞かせては頂けないですか?」
礼を言われたアイリスも、やっぱり恐縮した様子で応える。…その際、皇女は『いろいろ知っている』と判断し聞いてみる事にした。