ーそれから数10分後。俺達は『準備』を整え、特別な格納庫に集った。
「ー…本当に、単独で活動してるんですね……」
目の前に鎮座する『それら』を見たアイーシャは、唖然としながら呟いた。
「………」
一方、アインはただ呆然としていた。
ーまあ、『ウシ』と『トラ』が地上に居るってだけでも驚きなのに『カノープス無し』で活動しているのだから、驚くのも無理ない。
「……っ。…『このコ』達がこっちに居ても大丈夫なの?」
少しして妹は復活し、不安そうに聞いて来た。なので俺は余裕の笑みを浮かべる。
「問題ない。
宙領に展開している防衛軍には、安全運用出来るように調整して貰った『レプリカ』を配備してある。
何より、『モーント』が居るのだから万一の事はない。…そもそも、『此処』以外に来るエネミーは全て陽動だ。ガッチリ固めていれば、まず『落とされる』事はない。
けれどー」
「ー…『此処』が陥落すれば他の場所での防衛が全て台無しになってしまう……。
そういう事ですよね…」
「……責任重大だね」
俺が言おうとした事を、代わりに姉が紡いだ。…当然、妹は緊張した様子で呟く。
「ー大丈夫だ。
この間の『手がかり』のおかげで、カノープスは更に『強化』された。その力と、俺達の力が重なれば恐れるモノなどない」
そんな2人に、俺は自信満々に宣言した。…すると、僅かに姉妹の緊張はほどけた。
「…さあて、『ミッション』を説明しよう。
まあ、簡単に言うと『遊撃』だ」
それを見て、俺は『やるべき事』を説明する。
「…『遊撃』」
「…大変だね」
「大丈夫、大丈夫。
だって『足』はあるんだから」
2人は、やる前からお疲れ顔をした。…そんな2人に俺は気楽に言いながら『コール』を発令する。
『ーPYEEEE~ッ!』
すると、『ウシ』の方から電子の鳴き声が聞こえて来る。…そういえば、『あのコ』を実戦投入するのは久しぶりだな。
「ー…っ!あ、あれは…」
「…『スワロー』?」
そんな事を考えていると、『それ』は飛翔しながらこちらに向かって来ていた。…すると、アイーシャは興奮しアインはその姿を口にした。
『ーPYEEE~ッ!』
「やあ、今日は宜しくな。
…あ、そういえば2人は見るの初めてだったな。
ー『スプリントスワロー』、テイクオフ」
『ーPEEE!』
オーダーを出すと、俺の頭上を旋回していた『スワロー』は素早く床に着地する。
「紹介しよう。
俺専用の市街地戦闘用ビークル、『スプリントスワロー』だ」
『PYE!』
俺が紹介すると、『スワロー』はペコリと頭を下げた。…うん、ホント賢い。
「…こ、『このコ』があの『地上支援の要』ですか……」
「…こんなコが居たんだ」
「まあ、初めてなのは仕方ない。…コイツの『メンテ』は、普段ティータに任せてるんだ」
「…え?…あ、確かに『先生』なら安心して任せられますね」
「…正直、今の私達の『ウデ』だとコワくて触れないし」
ー…この時、俺は若干申し訳なく思っていたが2人は特に気にしていなかった。むしろ、自分達の『実力』をきちんと弁えた言葉を口にした。
「(…ホント、『良い』仲間に出逢たな。)
ー『スワロー』、モードチェンジ」
『PYE!』
そんな事を思いながら『スワロー』にオーダーを出す。直後、『スワロー』は瞬時にビークル形態に変形した。
「良し。それじゃあ…。
ー『ミッションスタート』!」
「「了解っ!」」
『ーGAA…』
『BMO…』
そして、俺は大きな声でスタートの宣言をした。…すると、『待ってました』とばかりに『ウシ』と『トラ』がゆっくりと立ち上がる。
『ーコール確認っ!
第1格納庫、オープンッ!』
それに合わせて基地の人がアナウンスを流すと、少しして格納庫のデカいゲートがアラームと共に開いていった。
『ーGO!』
『はいっ!』
『了解!』
そして、完全に開いたのを確認し俺達は外に飛び出したのだったー。
○
ーSide『カノープス』
『ーこちら-ストライク3-。ノースブロックの避難車両誘導完了!他ブロックのフォローに回ります!』
『こちら-ストライク4-。サウスブロック完全終了!
フォローに回りますっ!』
『-ストライク1-了解(…ふう、残りは半分か)』
『ストライク3』と『ストライク4』…レオノーラとゼノからの報告を聞いた、『ストライク1』こと戦闘班班長のクルツは少し安堵した。
だが、街中には未だにけたたましいアラームが鳴り響いたので彼は適度な緊張感を保ちつつ『合流地点』に向かって進む。
(…出来れば、『アレら』が出てくる前に避難を完了させたい所だがー)
『ーBOWBOW!』
そんな僅かな希望を抱いていた彼の耳に、『厳しい現実』を告げる『警戒の鳴き声』が聞こえた。
(…まあ、そう簡単には行かないかー)
『ーBOW!』
(『右注意』!)
彼はサイドカーに収まる『イヌ』の指示に従い、『ウマ』のハンドルを左にハンドルを切る。…直後、車道に爆炎が発生した。
(…っ!『質量兵器』…。…なんとしても、『邪魔者』を排除する気だな)
『BOW!』
(今度は『左』!)
『敵』の形振り構わない行動に彼は若干冷や汗を流す。…直後、『イヌ』は警告を出したので今度は反対にハンドルを切る。
ーすると、今度は腹の底に響くような重い音が聞こえた。
『ーBMO!』
(ー『グラビティ・レプリカ』…か)
彼は嫌な予感を抱きつつも、振り返らないで進む。…そんな彼の耳に、『ウシ』の鳴き声が聞こえた。恐らく、『教えて』くれたのだろう。
(…つくづく、『優秀』だな……。…やはり、『疑いよう』がないだろう)
『サポーター』の凄まじい性能を幾度となく見て来た彼は、着実に『その正体』に近いていた。…けれどー。
(ー『カノープス』が銀河連盟において『トップシークレット』である以上、軍人たる自分が踏み入る事は許されないだろう。
例え、『彼』が許可を出したとしてもー)
『ーGAU!』
(ー…っ!本当に『厄介』だなっ!)
思考の途中、後部シートに座っていた『トラ』が警戒の鳴き声を発しながらドーム状の『バリア』を展開した。
ー直後、彼の頭上から『サンダー』が降注くがバリアのおかげで事なきを得た。
(…次は何だー)
彼は意識を『戦場』に戻し、『備える』。…だが、今度は『アクション』が発生しなかった。
(…諦めた?…いや、エージェント・プラトーの『忠告』を思い出せー)
『ーBOW!BOW!』
気を抜かずに備えていると、『イヌ』が『慌てたよう』に鳴き出した。それに合わせて、彼の身を守る『ウサギ』も警告を発した。
(ーこれは『ヤバい』。…だが、『何処』から……っ!)
明らかに異常な状況に、彼は周囲を警戒する。…そんな時、彼は『自分の周囲』が『巨大な影』に覆われいた事に気付いた。
(なっ!?嘘だろっ!?)
彼は思わず頭上を見上げると、いつの間にか頭上に巨体な何かがあった。…しかも、『それ』は徐々に彼に向かって『落下』をー。
(ーっ!)
彼は直ぐにトップスピードで離脱を図るが、気付いたのが遅かった。…しかし、諦め掛けたその時彼の周囲に『白いバリア』が展開した。
『ーえっ!?班長!?』
そして次の瞬間、彼は『集合地点』に到着していた。…すると、そこには既に戦闘班のメンバーが居た。
ーそんな彼らを、激しい振動が襲った。
『ー……助かったな』
『…あ、あの、もしかして班長も-転送-されたのですか?』
それの正体を察した班長は安堵のため息を吐いた。…それを近くで聞いたミハイルは、確認する。
『…という事は、君らもか?』
『…はい』
『…ですね』
すると、その場に集って居るメンバーは頷く。
『…正直、-星になる事-を覚悟しました』
『……一体、-何が-起きたんでしょうか?』
『ーPYEE!』
その答えは、直ぐに分かった。…彼らの頭上に、複数の『トリ』が飛んでいたのだ。
ーその『トリ』達は、非常に不思議な姿をしていた。…まるで『ツガイ』のように、2つの『トリ』が支え合って飛んでいるのだ。
それもその筈。何故なら、2つの『トリ』は片翼しかないのだから。
『ー…あ、-比翼の鳥-……』
彼らはそれを不思議な目で見ていると、ふとクレアが呟いた。