目次
ブックマーク
応援する
いいね!
コメント
シェア
通報

『当日・発生』-出陣-

 ーそれから数10分後。俺達は『準備』を整え、特別な格納庫に集った。

「ー…本当に、単独で活動してるんですね……」

 目の前に鎮座する『それら』を見たアイーシャは、唖然としながら呟いた。

「………」

 一方、アインはただ呆然としていた。

 ーまあ、『ウシ』と『トラ』が地上に居るってだけでも驚きなのに『カノープス無し』で活動しているのだから、驚くのも無理ない。

「……っ。…『このコ』達がこっちに居ても大丈夫なの?」

 少しして妹は復活し、不安そうに聞いて来た。なので俺は余裕の笑みを浮かべる。

「問題ない。

 宙領に展開している防衛軍には、安全運用出来るように調整して貰った『レプリカ』を配備してある。

 何より、『モーント』が居るのだから万一の事はない。…そもそも、『此処』以外に来るエネミーは全て陽動だ。ガッチリ固めていれば、まず『落とされる』事はない。

 けれどー」

「ー…『此処』が陥落すれば他の場所での防衛が全て台無しになってしまう……。

 そういう事ですよね…」

「……責任重大だね」

 俺が言おうとした事を、代わりに姉が紡いだ。…当然、妹は緊張した様子で呟く。

「ー大丈夫だ。

 この間の『手がかり』のおかげで、カノープスは更に『強化』された。その力と、俺達の力が重なれば恐れるモノなどない」

 そんな2人に、俺は自信満々に宣言した。…すると、僅かに姉妹の緊張はほどけた。


「…さあて、『ミッション』を説明しよう。

 まあ、簡単に言うと『遊撃』だ」

 それを見て、俺は『やるべき事』を説明する。

「…『遊撃』」

「…大変だね」

「大丈夫、大丈夫。

 だって『足』はあるんだから」

 2人は、やる前からお疲れ顔をした。…そんな2人に俺は気楽に言いながら『コール』を発令する。

『ーPYEEEE~ッ!』

 すると、『ウシ』の方から電子の鳴き声が聞こえて来る。…そういえば、『あのコ』を実戦投入するのは久しぶりだな。

「ー…っ!あ、あれは…」

「…『スワロー』?」

 そんな事を考えていると、『それ』は飛翔しながらこちらに向かって来ていた。…すると、アイーシャは興奮しアインはその姿を口にした。

『ーPYEEE~ッ!』

「やあ、今日は宜しくな。

 …あ、そういえば2人は見るの初めてだったな。

 ー『スプリントスワロー』、テイクオフ」

『ーPEEE!』

 オーダーを出すと、俺の頭上を旋回していた『スワロー』は素早く床に着地する。


「紹介しよう。

 俺専用の市街地戦闘用ビークル、『スプリントスワロー』だ」

『PYE!』

 俺が紹介すると、『スワロー』はペコリと頭を下げた。…うん、ホント賢い。

「…こ、『このコ』があの『地上支援の要』ですか……」

「…こんなコが居たんだ」

「まあ、初めてなのは仕方ない。…コイツの『メンテ』は、普段ティータに任せてるんだ」

「…え?…あ、確かに『先生』なら安心して任せられますね」

「…正直、今の私達の『ウデ』だとコワくて触れないし」


 ー…この時、俺は若干申し訳なく思っていたが2人は特に気にしていなかった。むしろ、自分達の『実力』をきちんと弁えた言葉を口にした。


「(…ホント、『良い』仲間に出逢たな。)

 ー『スワロー』、モードチェンジ」

『PYE!』

 そんな事を思いながら『スワロー』にオーダーを出す。直後、『スワロー』は瞬時にビークル形態に変形した。

「良し。それじゃあ…。

 ー『ミッションスタート』!」

「「了解っ!」」

『ーGAA…』

『BMO…』

 そして、俺は大きな声でスタートの宣言をした。…すると、『待ってました』とばかりに『ウシ』と『トラ』がゆっくりと立ち上がる。

『ーコール確認っ!

 第1格納庫、オープンッ!』

 それに合わせて基地の人がアナウンスを流すと、少しして格納庫のデカいゲートがアラームと共に開いていった。

『ーGO!』

『はいっ!』

『了解!』

 そして、完全に開いたのを確認し俺達は外に飛び出したのだったー。



 ○



 ーSide『カノープス』



『ーこちら-ストライク3-。ノースブロックの避難車両誘導完了!他ブロックのフォローに回ります!』

『こちら-ストライク4-。サウスブロック完全終了!

 フォローに回りますっ!』

『-ストライク1-了解(…ふう、残りは半分か)』

『ストライク3』と『ストライク4』…レオノーラとゼノからの報告を聞いた、『ストライク1』こと戦闘班班長のクルツは少し安堵した。

 だが、街中には未だにけたたましいアラームが鳴り響いたので彼は適度な緊張感を保ちつつ『合流地点』に向かって進む。

(…出来れば、『アレら』が出てくる前に避難を完了させたい所だがー)

『ーBOWBOW!』

 そんな僅かな希望を抱いていた彼の耳に、『厳しい現実』を告げる『警戒の鳴き声』が聞こえた。

(…まあ、そう簡単には行かないかー)

『ーBOW!』

(『右注意』!)

 彼はサイドカーに収まる『イヌ』の指示に従い、『ウマ』のハンドルを左にハンドルを切る。…直後、車道に爆炎が発生した。

(…っ!『質量兵器』…。…なんとしても、『邪魔者』を排除する気だな)

『BOW!』

(今度は『左』!)

『敵』の形振り構わない行動に彼は若干冷や汗を流す。…直後、『イヌ』は警告を出したので今度は反対にハンドルを切る。

 ーすると、今度は腹の底に響くような重い音が聞こえた。


『ーBMO!』

(ー『グラビティ・レプリカ』…か)

 彼は嫌な予感を抱きつつも、振り返らないで進む。…そんな彼の耳に、『ウシ』の鳴き声が聞こえた。恐らく、『教えて』くれたのだろう。

(…つくづく、『優秀』だな……。…やはり、『疑いよう』がないだろう)

『サポーター』の凄まじい性能を幾度となく見て来た彼は、着実に『その正体』に近いていた。…けれどー。

(ー『カノープス』が銀河連盟において『トップシークレット』である以上、軍人たる自分が踏み入る事は許されないだろう。

 例え、『彼』が許可を出したとしてもー)

『ーGAU!』

(ー…っ!本当に『厄介』だなっ!)

 思考の途中、後部シートに座っていた『トラ』が警戒の鳴き声を発しながらドーム状の『バリア』を展開した。

 ー直後、彼の頭上から『サンダー』が降注くがバリアのおかげで事なきを得た。

(…次は何だー)

 彼は意識を『戦場』に戻し、『備える』。…だが、今度は『アクション』が発生しなかった。

(…諦めた?…いや、エージェント・プラトーの『忠告』を思い出せー)

『ーBOW!BOW!』

 気を抜かずに備えていると、『イヌ』が『慌てたよう』に鳴き出した。それに合わせて、彼の身を守る『ウサギ』も警告を発した。


(ーこれは『ヤバい』。…だが、『何処』から……っ!)

 明らかに異常な状況に、彼は周囲を警戒する。…そんな時、彼は『自分の周囲』が『巨大な影』に覆われいた事に気付いた。

(なっ!?嘘だろっ!?)

 彼は思わず頭上を見上げると、いつの間にか頭上に巨体な何かがあった。…しかも、『それ』は徐々に彼に向かって『落下』をー。

(ーっ!)

 彼は直ぐにトップスピードで離脱を図るが、気付いたのが遅かった。…しかし、諦め掛けたその時彼の周囲に『白いバリア』が展開した。

『ーえっ!?班長!?』

 そして次の瞬間、彼は『集合地点』に到着していた。…すると、そこには既に戦闘班のメンバーが居た。

 ーそんな彼らを、激しい振動が襲った。

『ー……助かったな』

『…あ、あの、もしかして班長も-転送-されたのですか?』

 それの正体を察した班長は安堵のため息を吐いた。…それを近くで聞いたミハイルは、確認する。

『…という事は、君らもか?』

『…はい』

『…ですね』

 すると、その場に集って居るメンバーは頷く。


『…正直、-星になる事-を覚悟しました』

『……一体、-何が-起きたんでしょうか?』

『ーPYEE!』

 その答えは、直ぐに分かった。…彼らの頭上に、複数の『トリ』が飛んでいたのだ。

 ーその『トリ』達は、非常に不思議な姿をしていた。…まるで『ツガイ』のように、2つの『トリ』が支え合って飛んでいるのだ。

 それもその筈。何故なら、2つの『トリ』は片翼しかないのだから。

『ー…あ、-比翼の鳥-……』

 彼らはそれを不思議な目で見ていると、ふとクレアが呟いた。

この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?