ー試合からおよそ1時間後。俺は会場内にある『特別なルーム』にて、人を待っていた。
『ーランスターです』
「お疲れ様」
最初に来たのは、ランスター達だった。そして、ドアが開きアイーシャとイアンとヒューバートが入って来る。
「お疲れ様です、ボス」
「…お疲れ様」
「…こ、こんばんは」
3人は挨拶をした後、ラウンドテーブル(円卓)の上に置かれたネームプレートを確認し指定されたシートに座る。
「…あ、済まないがもうちょい待っててくれ」
「「…はい」」
「…わ、分かりました……」
すると、ランスター達は少しソワソワし始めた。…まあ、予め『用件』を聞かされているから当然だろう。
『ー失礼します、リーベルトです。…アルジェントさんも一緒です』
「どうぞ、お入り下さい」
それからさほど時間が経たない内に、残りのメンツも来た。
「…失礼します」
「…し、失礼しますっ!」
中に入って来た2人は、凄く真逆なリアクションをした。…リーベルトさんは『慣れ』ているのか、静かに礼をする。一方、アルジェントさんはガチガチな様子で入って来た。
「すみません。お疲れの所、足を運んで頂いて」
「…っ。…いえ、休息はしっかりと取ったので問題ありません。
お気遣い、ありがとうございます」
「…っ!…だ、大丈夫ですっ!」
まずは、きちんと立ってから出迎えの言葉を口にする。それに対し2人は、少し意外そうな感じで返して来た。
「(……?)あ、申し訳ありませんがこちらでシートを指定させて頂いておりますので、ネームプレートをご確認下さい」
「…分かりました」
「は、はいっ!」
そして、2人も指定させたシートに座った。…なので、俺は直ぐに『用事』を済ませる事にする。
「さて、早速本題に入るとしましょう。
…まずは、『私』に関わる事からですー」
「「…っ」」
「「………え?」」
俺はそう前置きをした後、『変装』を解除する。…ランスターの2人とリーベルトさんは小さく息を飲むだけだったが、ヒューバートとアルジェントさんは頭が追い付かないのか唖然としていた。
「ー…改めて、自己紹介をしましょう。
帝国政府直属特務捜査官兼『秘宝』ハンター同盟『プレシャス』代表兼『カノープス』キャプテンの、オリバー=ブライトです」
「「ーっ!?ええええーーーーっ!?」」
名乗った直後、ヒューバートとアルジェントさんはようやく理解し驚愕の声を上げる。
「…やはり、『そうでした』か」
「……?」
一方、リーベルトさんは特に驚いていなかった。それどころか、納得していた。…そのリアクションに、アイーシャはこちらをガン見してくる。
「ああ、やっぱり『気付かれて』いましたか」
「…はい?」
「…え?…マジで?」
なので、俺は簡潔に答える。…まあ、当然2人は驚愕する。
「…『気付かれる』と分かっていながら、私の申し出を受けて下さったのですか?」
すると、彼女も少し意外な様子だった。…ああ、『あの話』は伝わってないのか。
「「ー………」」
そんな事を考えていると、未だ『事情を知らない2人』なようやくプリーズから回復し困惑の眼差しを向けて来た。
「おっと、コースアウトしていましたね。
ー『この真実』は、貴方達3人を信用して明かしました」
「「「………」」」
「…『どうして?』と考えるのも、無理はないです。
当然、『理由』は2つあります。ただ、『それ』は別々に語るとしましょう。
ーでは、お次は貴方達の番です」
「……。…っ」
すると、俺の右に座っていたイアンが手元にあるタブレットを3人の元に運んで行く。
「ありがとう」
「…うん」
「「「………」」」
すると、またまた3人は唖然とした。…いや、本当に『理解』が早い。
「とりあえず、『契約内容』を読んだ上で許諾の部分にチェックを入れそしてサインをして下さい。
ーでないと、この2人に関する事は一切お話出来ませんので」
「「「…っ」」」
3人はハッとし、速やかにタブレットを手に取り中身を読み始めた。…そしてー。
「ー確認しました」
「…私もです」
「…み、右に同じくです」
「では、サインをお願いします」
3人はタブレットを置いたので、今度は左に座るアイーシャがペンを持って行った。
「ありがとう」
「いえ」
「「「……。…っ」」」
3人はこちらのやり取りを非常に気にしていたが、直ぐにサインをした。
「ー…では、回収しますね」
やがて、3人がサインを終えたので自分で回収し確認する。
「ーおめでとう。
今この瞬間より、『ミリアム』と『エリゼ博士』は晴れて『カノープス』のクルーに。
『ヒューバート』は『プレシャス』のメンバーとなった」
そして、俺は3人をファーストネームで呼びつつ新たな仲間の誕生を喜んだ。
「おめでとうございます。これから、どうぞ宜しくお願いします」
「…宜しく」
「ありがとうございます。誠心誠意、『役目』を果たします」
「自分も、『組織』のお役に立てるよう精一杯頑張ります」
「…わ、私もです」
ランスターの2人も歓迎の言葉を口にする。それを受けた3人は、決意の言葉を返した。
「…では、今日はこの辺りで解散としましょう。
ーまあ、直ぐに『顔を合わせる』事になるでしょうが」
「「……」」
「……え?」
俺は一応終わりの言葉を告げるが、直ぐに『やれやれ』という気持ちになりながら予想を立てる。…それを見て、ミリアムとヒューバートは緊張しエリゼ博士はぽかんとする。…あ、そういやー。
「ー…『キャプテン』。私から彼女に説明しましょうか?」
「頼んだ」
すると、ミリアムは進んで説明を引き受けてくれた。…今までそういう役割をして来たから、スッと行動出来るんだろう。
「承知しました。
…えっと、とりあえず『落ち着いて』聞いて下さいー」
そして、彼女は予め冷静でいるように言った上で『これから起こる事件』の事を説明する。
「ー……っ、………」
当然、聞かされた当人はギョッとする。…けれど、『前置き』のおかげで直ぐに落ち着いた。
「…すみませんね。本当は、『バタバタ』が落ち着いてから『この場』を設けたかったんですが、先に済ませた方が『いろいろと』スムーズに対処出来ると判断したので」
「…い、いえ……」
「…『ボス』は何も悪くありませんよ。
ー全部、『アイツ等』のせいです」
マジで申し訳なく思っていると、ヒューバートはフォローは入れ…若干『ピリピリ』しながらそう言った。
「ええ、彼の言う通りです」
すると、ミリアムも同意する。…彼女は笑顔だったが、何故だかルーム内の温度が僅かに下がった気がした。
「…あ、あの、1つ確認したいのですが……」
そんな空気の中、ふと博士は挙手をした。
「何ですか?」
「…もしかして、『サーシェス』って『あのカンパニー』の『再生』した姿なのですか?」
そして、博士は非常に大事な『予想』を口にした。…流石、『ファン』の方だ。
「…っ。……」
すると、ヒューバートは『同胞』が見つかって少し機嫌が直りニコニコした。
「ええ、私や『上』はそう考えています。
ー全く、『しぶとく』て嫌になりますよ…。……おっと」
俺はその予想を肯定し、深いため息を吐く。そんなタイミングで、不意に俺とランスターの所持する『カノープス』端末がコール音を奏でる。
『ーマネージャーより、全サポーターへ-緊急通達-致します。
…-モンスターエッグ-が-ふ化-を開始しました』
俺達は素早く通信に出ると、『マネージャー』(カノン)は真剣な様子で緊急事態の報告をした。