「…っ!まさか、祖国に『そんな物』が眠っていたとは…。…陛下?」
「ー…驚いタナ。…もしヤ、我が祖国ガ狙われた理由ハ……」
「『恐れながら、-それ-はないと思います。現に-連中-はその事を知らない筈ですから』」
「…え?」
「…ドウシテだ?」
「クローゼ、『礼のモノ』を」
「イエス・キャプテンー」
お二方は疑問に答える為、『根拠』をクローゼに出させる。
「…これハ、『座標データ』?……っ!まさか、『手掛かり』の1つが祖国を指し示しタノか?」
彼女の出したタブレットの画面を見た陛下は、直ぐにピンと来たようだ。…いや、流石は国家元首と言うべきか。
「ー…っ。
『こちらは、運送会社が集う星-ポターラン-にて回収したチップに記載されていたデータです』」
内心少し驚きつつ、クローゼにアイコンを送る。すると、彼女は要点を押さえた説明をした。
「ーそして、このデータを知る者は銀河連盟のごく一部の人…政治組織だとこちらの帝国宰相クラスの方々しか知りません」
「…な、なるほど。………」
「…『運送会社』……『運び屋』。…いヤ、マサかな……」
それを聞いたお二方は納得し、そして何か『引っ掛かり』を感じたようだ。
「…(…まあ、後回しだな。)
『…と、これはそういった経緯で入手した物です。なので、どうか-お譲り頂きたい-』」
しかし、今聞く事はせず話を進め最後に深く頭を下げた。
「……頭ヲ下げルのは、我々の方だ。
…どうカ、サーシェスの魔の手から祖国を解放シテ欲しイッ!」
「私からも、お願い致しますっ!」
そして、揃って頭を下げられた。…決まりだな。
「『ー勿論ですとも。…ならば、早速動くと致しましょう』」
閣下も、決意に満ちた表情でそう言った。
「…ありがとう、ございます……」
「…感謝スル。
ーいや、しかシまさか『あそこ』にそんなモノが眠ッていたとはナ……」
向こうは共に深い感謝を示すなか、ふと陛下はそう口にした。
「『…と、仰いますと?』」
「…実はナ、『この座標』は我が居城なのダヨ」
「「…っ!?」」
「…なんと。
『…もしや、-国宝-として代々受け継がれて来た物では?』」
衝撃の事実に、俺達はぎょっとする。…そして、閣下は予想を立てられた。
「…その通リダ。…そしテ、代々国王にのみ受け継がれてイル『言葉』がある。
ー『此れを正しく役立てる者が現れる時まで代々受け継いでいくべし』。…ダカら、『あの時』は本当二『言葉』を守る事が出来ないト思ッた……」
陛下は頷き、『言葉』を口にした。…そして、『クーデター』の時を思い出し僅かに震える。
「…陛下」
「スマない…。
ー話を戻ソウ。…肝心の『宝』だが、『宝物殿』の中にあるノダ。そして、そこ二入る為にハ王位継承者の証たル『ブローチ』が必要だ」
そう言って陛下は、端末を開き1枚のフォトデータを見せてくれた。
「…っ!」
「…あの、ひょっとしてその『証』はそちらの国の『メインシステム』の承認キーだったりしますか?」
「…っ!そノ通りだ。…そうか、結局の所『連中』ノ狙いはコレだったのか」
こちらの予想に、陛下はようやく『目的』を理解した。…いや、本当危ない所だった。
「ー…おっと。大変恐縮ですが、そろそろ次のスケジュールが迫っておりますので今日はこの辺りで、お開きとさせていただきます。
…とりあえず、貴方達の『願い』は『こちら』のトップ達に必ずお伝えします」
本当にこの人達を『護れて』良かったと思っていると、閣下の端末が振動する。…そして、閣下は力強く告げた。
「…宜しクお願イいたす」
「お願い致します」
お二方は再度深く頭を下げた。…これから忙しくなるぞ。
俺は『激動』を予感し、強く決意するのだったー。
○
ーその後、閣下達と別れた俺はその足で宙域にある『科学コロニー』に向かった。
「ーマスター。こちらへ」
「ありがとう」
『ウマ』から降りると、クローゼはガイドを始めたのでその後に続いた。そして、少しして研究所の受付にたどり着いた。
「ーっ!ようこそナイヤチ科学研究所へ。
私、当研究所所長のクローデルと申します」
すると、威厳ある壮年の男性…クローデル所長が出迎えてくれた。
「初めまして。特務捜査官のプラトー三世です。こちらは、『サポーター』のクローゼ」
「お初にお目にかかります」
「本日は、お忙しい所お時間を割いて頂きありがとうございます」
こちらも名乗り、少し申し訳なくなりがらお礼を言う。…実は、『出来れば直接顔を合わせてお話をしたい』と伝えた所本当に面談の場を設けてくれたのだ。
「いえいえ。
さあ、どうぞこちらへ」
所長は首を振り、『彼女』の待つルームへと案内してくれる。
「ーアルジェント君。入るよ」
『ーっ!は、はいっ!』
そして、さほど時間も掛からずに目的のルームに到着する。…いや、本当に若い研究員のようだ。
「ー……っ」
「失礼します」
「失礼致します」
中に入ると、パープル系の短い髪の女性が居た。…彼女は、こちらを見て固まっていた。
「ーアルジェント君。…そんなにじっと見つめては失礼だろう?」
「っ!?す、すみませんっ!」
いつまでも固まる彼女に、所長は柔らかく注意する。…直後、彼女はハッとして謝罪して来た。
「お気になさらず。…こう言ってはなんですが、『慣れています』から」
「……。
ーわ、私は研究員のエリゼ=アルジェントと申します。…担当は、『アンチドーテ』になります」
ニコニコしながら返すと、彼女は少し呆気にとられた。だが、直ぐに簡単な自己紹介をする。
ー『アンチドーテ』。…すなわち、『解毒剤』の生成が得意という事。それは、言い換えると『毒物や毒性ガス』に詳しいという事だ。
事実、彼女は『それ関連』の資格や検定の『最上級認定』を所有しているマジの『天才』なのだ。
「ー初めまして、アルジェント研究員」
「初めまして」
今朝届いた彼女の経歴を思い出しつつ、軽くお辞儀をする。
「さあ、お二方。どうぞ、お掛け下さい」
「「ありがとうございます」」
そして、俺達は対面に座った。…すると、直ぐにクローゼは研究員の『履歴』の入ったタブレットを取り出し、それを表示する。
「…さて、本題に入りましょう。
ーまあ、既に第1分隊の隊長と副隊長が賛成していて医療班も『天才』と絶賛しているので、『決意』や『技能』については今更私から聞く事はありません」
「………」
「私が知りたいのは、『貴女』という人物です。
そして、私の上司である宰相閣下も『それ』が知りたいと仰っていました」
「……っ」
「……」
それを聞いた2人は、緊張した様子になった。…どうやら、重く受け止めてしまったようだ。
「…あ、すみません。
聞きたいのはあくまで、『趣味』とかそういうのです」
「……え?」
「…あの、どうしてそんな事を?」
だから、速やかに誤解を解いた。…まあ、今度は困惑してしまった。
「え、出来ればこちらにお越し頂いてからも『趣味』を続けられるように為ですけど?」
「……」
「…そ、そこまでして頂いて良いのですか?」
彼女は唖然とし、所長は恐縮しながら聞いて来た。…だからー。
「ーいや、だって長い時間閉鎖空間での生活を強いてしまうんですから、少しでも快適に過ごして欲しいと思うのは当然ではないですか?
ああ、ちなみにウチの船には『バスエリア』や『エクササイズエリア』も完備してますよ」
「…ウソ……」
「…それは、随分と快適ですね」
こちらの『流儀』を語ると、彼女は驚愕と期待の混じった顔をした。一方、所長は何とかそうコメントした。
「(…ああ、ほとんど研究所か寮で生活してるからこういう待遇を『予想』してなかったのか。)
…という訳で、『趣味』を教えて頂けるとこちらとしてもありがたいのですが?」
「……っ。…えっと、『ホロムービー』と『データノベル』です」
なんとなく、今までのライフスタイルを予想しつつ改めて聞いてみる。すると、彼女は少し恥ずかしそうに答えた。