ーSide『ガーディアン』
「ー総員、敬礼っ!」
翌日。予定通り、遊撃部隊の『第1陣メンバー』はトライグウィンに乗艦した。
そして、艦内のブリーフィングルームに案内された彼らは向こうの艦長並びに乗組員が総出で出迎えられえた。
「ー第1遊撃部隊の皆さん。ようこそ、トライグウィンに」
「出迎えありがとうございます。本日より3日間、宜しくお願い致します」
艦長とオットーは敬礼を交わし、それからメンバー達は自己紹介していった。
「ーこれにて、歓迎式を終了する。『制圧担当』の者以外は作業に戻れっ!」
『はっ!』
それが終わると、艦長はオーダーを出した。すると、制圧担当…ウェンディーの前のポジションのようなメンバーが遊撃部隊の前に整列しそれ以外の乗組員は駆け足で解散して行った。
「それでは、後の事は彼ら『制圧部隊』に任せてあるので私も失礼します」
「はっ!ありがとうございますっ!」
『ありがとうございますっ!』
そして、艦長も足早にルームを去りそこにはオットー率いる第1陣メンバーと制圧部隊のみが残された。
「ー…さて、まずは自己紹介させて頂きます。
私は、第3危険星系監視艦隊第6宙海制圧部隊隊長のオーラム=グリムウッド少佐であります」
「宜しくお願い致します。少佐」
「それでは、トレーニングルームにご案内致します」
「宜しくお願い致します」
互いに敬礼を交わすと、向こうの隊長と様々な容姿の男女で構成された制圧メンバーは二列になって先行して歩き始める。
そして、オットー達も素早く二列になってその後に続いた。
「ー此処が、普段我々がトレーニングをしているルームになります」
それから、艦内を移動する事数分。制圧部隊とオットー達はトレーニングルームに到着した。
「それでは、早速朝のトレーニングを始めましょう。
…確か、そちらの『メニュー』も『連盟防衛軍仕様』でしたよね?」
「はい。構いません」
「分かりました。…では。
ーこれより、朝のトレーニングを開始するっ!第6制圧部隊1班並びに第1遊撃部隊1班、整列っ!」
『サー、イエッサーッ!』
向こうの隊長は確認の後、『モード』を切り替えそれぞれの部隊にオーダーを出した。勿論、彼らは直ぐ返答し整列するのだったー。
ーそして、それから更に1時間後。
「ーそこまでっ!」
数人単位に別れての模擬戦をしていると、隊長が終了の合図を出した。
『ありがとうございました』
すると、彼らは互いに礼と握手を交わし速やかに整列し直す。
「これにて、朝のトレーニングを終了するっ!各員、『身だしなみ』を整えた後作業に戻れっ!」
『サー、イエッサーッ!』
「ー…では、遊撃部隊の方々は『整え』が終わり次第また此処に集まって下さい」
終了宣言の後、隊長はまた『モード』を切り替え遊撃部隊に言った。
『はっ!』
『ありがとうございます』
彼らはルーム内に併設された更衣ルームにて汗の処理と着替えを素早く済ませ、軍服…ではなくカノープスモデルの作業ウェアで再度集合した。
「ー…いや、羨ましい限りですね。
カノープスのユニフォームを身に付けられるなんて…」
遊撃部隊の格好を見た向こうの隊長は、羨望の眼差しを向ける。…実は、この隊長『も』なかなかの『ファン』だったりする。
「…まあ、あくまで『レプリカ』ですがね。無論、例えレプリカであっても非常に身に余る光栄です。
ー…ただ、『今回』に限っては『この方』が良いと判断したので袖を通させて頂きました」
その反応に、イリーナは恐縮しながら事情を説明する。
ー…というのも、今回『一次調査』をするにあたり軍服を着ていると『彼ら』が萎縮…あるいは『予想外の行動』に出てしまうかもしれないので、オリバーと相談し『じゃあ、-用意しておいたアレ-お貸ししましょう。その方が、より-判別しやすい-でしょうから』…となったので、遊撃部隊用は急遽このレプリカモデルのユニフォームを着れる事になったのだ。
「…『レプリカ』ですか?…いや、『見掛けた記憶』がないのですが……」
すると、向こうの隊長は首を傾げる。…流石ファンを名乗るだけあり、『販売サイト』はちょくちょく確認しているようだ。
「…あ、やっぱり分かります?
ー実はこれ、素材こそ一般的なモノですが『サル』によって生み出されたユニフォームなんです」
「…っ!?」
衝撃の事実に、隊長は仰天する。…まあ、故に遊撃部隊にとっては身に余る光栄なのだ。
「…通りで。…というか、『サル』のパイロットが見つかっていたのですね……」
「ええ。イデーヴェスでの任務の際に」
「…なんと。…っと、失礼しました。
それでは、『ゲスト』の元へとご案内します」
「ありがとうございます」
向こうの隊長はそう言って歩き出したので、遊撃部隊のメンバーはその後に続いた。
「ー失礼しまーす」
そして、特に何事もなく『ゲスト』の元へと到着した彼らはまずディノーと顔を合わせた。
「あ、どウモ。…えと、貴女方ガそうなんデスか?」
「ええ。
私達は、『カノープスのサブクルー』です」
彼の確認に、『代表』であるイリーナは『ライト』に答える。
(…凄い。何処からどう見ても、女性『船乗り』だ)
それを後ろから見ていたウェンディは、『自然』な感じでやり取りをする彼女を見て改めて、その実力の高さに驚愕する。
「…やはリ。…それで、『我々』になんノ用デスか?」
「…そう警戒しないで下さい。私達はただ、『貴方達の事』が知りたいだけですよ。
ー『貴方達の故郷』を『救う為』に」
「…っ!」
(…あ、もう言ってしまうんだ。…まあ、『本心』で言っているのだと思うけど少なからず計算も混じってるだろうな)
「…貴方達のキャプテンは、『答えを出すのに時間が掛かる』と言っていましたが?」
「でも、『NO』とは言ってなかったですよね。
だったら、『YES』と同じですよ。
だから、いつでも動けるように『準備』をしておこうと思った訳です」
「……」
その返答に、彼は『意外』だと言いたそうな顔をした。
(…え?そんなに驚く事?…いや、ひょっとすると『彼らの常識』だと……ー)
「ーおや?何かおかしな事を言いましたか?」
彼女がとある予想を立てていると、イリーナは『幸い』と思い聞いてみた。
「…えと、恥ずかシナがら『こちらの船乗り』を見たのは今日ガ始メテでして。
…ソノ、私の知る船乗り達と『相当違う』ので驚いテしまいました」
(…やっぱり)
「…ちなみに、『どんな感じ』ですか?」
「…そうですねー」
彼女は、自然な流れで『最重要項目』の1つを聞く。…すると、彼は思い付く限りの事を話してくれた。
(ー…うわー。まさに『ワーカー』だなぁ…。…てか、まんま『あの連中』だよね……)
振る舞いや特徴を聞いたウェンディは、『思い出したくない顔ぶれ』を思い出してしまい辟易とした。…当然、イリーナや他のメンバーも顔に出てしまった。
「…なるほど。…はあ、まさか『あの連中』の事をまた聞く事になるとは思わなかったな……」
「…もしや、面識ガあるのですか?…いや、貴女達モ『秘宝』を追っているのナラバ出くわしても不思議デハないですが……」
だから、イリーナはあえて本音を口に出す。…それを聞いてまた彼は驚いた。
「…まあ、その通りです。
ただ、『もう顔を合わせる』事はないでしょう。
ー何せ、そいつらは今頃『監視付き』で『債務返済』に追われているでしょうから」
「……はい?……一体、何をしたラそんな状況ニ?」
「そうですねー」
イリーナは連中のしてきた事をざっくりと話した。…すると、彼は心底衝撃を受けた顔をした。
「ー…なんト。『サーシェス』に媚びへつらうばかりカ、加担まで…。…そんナ連中が、我々の国にたかっていたのか……」
「…心中お察しします。
…まあ、さっきも言いましたが連中は相応の『報い』を受けていますので安心して下さい」
「…はい。…あの、もしかしなくとも連中の罪を白日の元ニさらしたノハ……」
「ええ。我等がキャプテンです」
「やはり……。…本当に、我々はラッキーだ。
…そうダ。貴女達の『準備』の件ですが、どうか他の人達も役立て下サイませんカ?」
(…来た。…まあ、『そうなるように』話しを持っていったのだから当然だけど)
そして、遂に向こうから申し出て来た。これで、自然に『一次調査』が出来るだろう。
「勿論です。むしろ、こちらからお願いしたいと思っていました。
…そうですね。では、『1人ずつ』で大丈夫ですか?」
「…はい」
イリーナはニコニコしながら頷き、その顔で『切り出す』。…すると、彼は『察し』つつ了承した。
「ーじゃあ、許可は出た事だし早速始めよう。
ディノーさんは、お仲間に連絡しておいて下さい」
『了解』
「…分かりました」
そして、遊撃部隊のメンバーはルームを出て『一次調査』を開始するのだったー。