ーSide『ガーディアン』
ーオリバーがシュミレーションに挑戦している頃。通信ルームでは、遊撃部隊のオットーとユリアが艦隊司令のイザベラと通信をしていた。
「ー…しかし、まさかハウ中将がこちらの担当とは思いませんでした」
『それはこちらも同じだ。…今、連盟で知らぬ者はいないあのエージェント・プラトーに同行していたのが、君達第1分隊だったとはね』
イザベラとオットー達は、互いに『再会』した事に驚いていた。…元々、この3人は共和国防衛軍に入る前からの付き合いなのだ。
「…あ、先日はお疲れ様でした」
『ありがとう。…はあ、まさか-救援-をする事になるとは思わなかったよ』
ふと、ユリアは『この間の-自爆騒動-』に触れる。…すると、当人は非常に呆れながら言った。
ーそもそも、本来『監視艦隊』はサーシェス等の非合法化組織がパインクト等の危険星系を『抜け道』に使わせない為の部隊だ。
…だが、同時に『連盟の部隊』なので『銀河連盟法』の『緊急事における敵味方問わずの救助活動』を行う事が義務になっているのだ。
『ー…まあ、その後しっかり-航行禁止領域への侵入-と-危険武装-と-違法改造-で拘束してやったがね』
「…でしょうね」
「…やはり、『カノープスレプリカ』を悪用した船でしたか」
イザベラは、データを呼び出し『サーシェス』の人間の末路を語る。…それを聞いて、オットーは当然だとばかりに頷きユリアは予想が当たりため息を吐いた。…実は、イデーヴェスでの一件でサーシェスを『非合法組織』認定した際に、『ウシ』、『トラ』、『ヘビ』、『トリ(ワープ・ガード)』のレプリカを『危険武装』に。『ドラゴンレプリカ』を使った『ルーム増設』は『違法改造』にして連盟の捕獲部隊が取り締まれるようにしていたのだ。
『…いや、その意味では非常に助かったよ。おかげで、相手の-見苦しい言い訳-をスルーしてなんの気兼ねなく営倉にブチ込めたのだから』
イザベラは、非常に清々しい表情でそう言った。
「…あはは。どうやら中将閣下は、以前よりサーシェスに困っていたようですね?」
『…ああ。…以前、前任者殿より-第3監視艦隊-が発足する遥か前から、連中や-協力組織-が此処を抜け道にしていたと聞いた事があったが、実際見て唖然としたものだ。
しかも、つい先日-認定-を受けるまで連中は-迷い込んだ-だの、-宙賊から逃げて来た-だの、とにかく-抜け道-にしている事実を認めようとはしなかった。
…おまけに、時折-仕込み-で宙賊を引き連れて来た事もあったな』
「「…本当にお疲れ様です」」
イザベラは、頭を抱えながら当時の事を思い出していた。…オットー達は、最敬礼しながら称えた。
『…ありがとう。…まあ、今後はある程度余裕を持って監視任務にあたれるだろうし隊員達にも休暇を出しやすくなるだろう』
それを受けて、イザベラは感謝した。そして、任務や現場環境について触れる。
「…なんか、それを聞いてしまうと申し訳なくなって来ますね」
「…ええ。今回、我々は事実上『休暇』みたいなモノですから」
『…まあ、休める時に休むのも任務の内だよ。
ただ、せっかくこういう機会に-交流-をしないのもアレだし…。
ー君たちさえよければ、そしてエージェント・プラトーが良いと言ってくれたらだが攻略が始めるまでの間-こっち-に来ないかい?』
「…っ」
「…そうですね。…早速、彼と隊員に話してみます」
『ああ。それでは、そろそろ失礼するとしよう』
「はい」
そして、2人は敬礼し通信は終わった。
「…さて、そろそろオリバー殿は一回目のトレーニングを終える時間だったな」
「はい」
「では、先に隊員達に召集を掛けてくれ」
「了解であります」
オットーがオーダーを出すと、ユリアは敬礼の後直ぐに遊撃部隊のメンバーをブリーフィングルームに召集するのだったー。
◯
ーあ、しま…。…!?
俺はまたもや操作ミスをしてしまい…直後、乗り掛けた彗星から振り下ろされた。…そして、次の瞬間『真下』から来る彗星に衝突されてしまい、コクピットは赤く染まりそこそこの振動が発生した。
『ーミッション、フェールド』
…はあ。また『失敗』か。
そして、ウィンドウには何10回と見たせいですっかり見慣れてしまった『失敗』の文字が表示された。
『…残念でしたね』
すると、シャロンが慰めの言葉を掛けてくれた。…やれやれ、今日はカッコ悪い所ばかり見られてるな。……あ。
ほんの少し、情けなさを感じていると地元で良く聞いていたチャイムが鳴る。どうやら、今日はここまでだな。
『ーそれでは、ログアウトを開始します』
「ああー」
瞼を閉じると、直ぐに『ログアウト』が始まり…気付けばリアルに戻っていた。…ふう。
「「ーお疲れ様でした、マスター」」
マシンが開き起き上がると、シャロンとセリーヌが声を掛けてくる。
「あ、マスター。そういえば先程、遊撃部隊のレンハイム少佐よりご伝言を承りました。
ー『相談したい事があるので、シミュレーションが終わり次第-隊長陣用のミーティングルーム-に来て貰えないでしょうか』…との事です」
「(…何だろう。)分かった。
これから向かうと伝えてくれ」
「畏まりました」
セリーヌは頷き、直ぐにメールを送信してくれた。
「…んじゃ、行って来るな」
「「はい」」
そして俺は、シミュレーションフロアを出て遊撃部隊のセクションに向かった。
「ーっ。お疲れ様です、エージェント・オリバー」
ルームに入ると、オットー隊長とユリア副隊長が敬礼して出迎えてくれる。
「すみません、お待たせしました」
「いえ。こちらこそ、お疲れの所お越し頂きありがとうございます。
…それでは、早速本題に入るとしましょうー」
そして、互いに座り彼は監視艦隊のハウ中将からの『提案』について説明してくれる。
「ー…なるほど(なんか、向こうの方々に気を遣わせてしまったようだな。…次から、気を付けてようっと。)。
勿論、私は構いませんよ。むしろ、是非ともそうして頂ければと思います」
「ありがとうございます。
では、早速中将殿に連絡をー」
ーあ、ちょうど良いからお礼でも……。…っ!
ナイスタイミングと思い、直ぐにプラトーに変装する。…そんな時、デバイスが『専用メロディ』を流した。
『ーこちら、ユイセラン!済まないが、直ぐにエージェント・プラトーに……っ!』
「どうされましたか?ハウ中将」
中将は慌てた様子で通信をしてきたが、俺が居るのを見て驚いた。
『…っ。…たった今-不審な船-の反応をキャッチしました。
ですが、直ぐに-対処-しますのでどうかご安心をー』
「ーそれは『ちょうど良かった』。
実は、こちらもたった今『とある反応』をキャッチしたようでしてね。…っと、ちょっとクルーから『報告』が来ているので失礼します。
ーカノン、『どうだった』?」
俺は断りを入れ、カノンからの通信に出る。
『通信中に失礼致します。
マスター、-レプリカ-です。…ただー』
彼女は、『今非常に来て欲しくない方』の名前を告げる。…だが、少し気になる事も報告した。
『ー…という訳なのですが、いかが致しますか?』
「…とりあえず、『プロ』に任せよう」
『畏まりました。…それでは、失礼致します』
「ーすみません」
カノンとのやり取りを終え、再びモニターを向く。
『…いえ。…それで、一体-何の-反応だったですか?』
「どうやらその『不審な船』は、我がカノープスの『レプリカシステム』が搭載されているようです」
『……はい?』
「「……え?」」
まあ、当然中将達は唖然とした。…俺も彼女達の立場だったら間違いなく同じ反応をしていぢろう。
『……っ、ほ、本当なのですか?』
「ええ。非常に信じ難い事ですが。…ただ、『ウシ』と『トラ』は搭載しておらず、『ヘビ』と『トリ』だけの船のようです。
…それと、これまた信じ難い事なのですがその船からは『救難信号』が出ているようなのです」
『…な……』
「…いや、どう考えても『トラップ』では?」
更なる信じられない情報を伝えると、中将は唖然としオットー隊長は呆れながら予想する。
「…俺もそう思いたい所なのですが……。
ーこの『ドラゴンの-判別システム-』によると、『シロ』判定なんですよねぇ……。
『ーっ!?』
「…そんなシステムまで……」
「……」
「…中将殿。私と『カノープス』を信じて『保護』して貰えないでしょうか?」
「「……」」
『…分かりました。
直ぐに-保護活動-を開始します。一旦失礼します』
中将なほんの少し悩んだ後、こちらの提案を飲んでくれた。そして、通信は切れた。
ー直後、カノープスの『真反対』に位置する艦隊が動き出す。…それから少しして、『要救助船』がこの超危険な宙域に来た。
ー…お、早い。
艦隊は直ぐに船の進路を塞ぎ、合図を送る。…すると、あちらも止まるが『白系統の信号弾』を発射した。…シグナルランプがないのか?……やっぱり、『外』って文明が『スロー』なんだな。
そんな事を考えていると、艦隊はハッチを開き誘導用のシグナルビームを打ち出した。…そして、あちらは非常にゆっくりと艦隊に近付き無事に収容されるのだった。