『ーこんにちは。帝国国営放送が臨時ニュースをお伝えします。
つい先程、帝国政府より秘宝ハンター同盟-プレシャス-の後援会組織の発足が発表されたました。
代表は、帝国の第1皇女であらせられるリーリエ=ラロア=バーンスタイン殿下。
副代表は、ホワイトメル星系のブリック大統領の子女のユーニ=ブリックさん。
また、代表メンバーも各星系の代表やそれに準ずる方々のご子女との事です。
そして、現在-ホープ-は多くの-ボランティアスタッフ-を募集しているようです。もし、興味のある方は各星系の政府公式サイトの特設ページを確認してみてはいかがでしょうか?
続いてのニュースです。
なんと、あの-伝説の男の後継者-がー』
○
『ーマスター、並びに全クルー、並びに遊撃チームの方々におしらします。
間もなく当船は-パインクト-に到着します』
ニュースを見ていると、船内アナウンスが流れた。なので、ニュースサイトを閉じ直ぐにコクピットに向かう。
「ーあ、マスター。お疲れ様です」
「ああ」
『あ、マスター・オリバー。今大丈夫?』
直ぐにマイシートに座り、脇のモニターを起動する。…と、そのタイミングで整備リーダーのティータから通信が来る。
「大丈夫だ」
『良かった。…今、-あれ-の最新データをシャロンに渡したよ』
「サンキュー。…楽しみだな」
『…だってさ、アイーシャ』
その報告を聞いて、俺はニヤリと笑う。…すると、彼女は後ろに向かって『メインで頑張った当人』に声を掛けた。
『あ、ありがとうございます…』
すると、アイーシャは照れながらアインと共に前に出て来た。
「こちらこそありがとう。…そして、次はいよいよ-リアル-での作業だ。皆宜しく頼む」
『ああ、任せてくれ』
『…はい』
『…お任せあれ』
メカニックの彼女達は頷き、通信は切れる。…その直後、『セカンドアラート(第2級の警告音)』が流れた。
「ー…っ。いよいよか。
クローゼ、カウントアナウンスを」
「イエス・マスター。カウントを開始します。
…カウント30。29、28、27、26……ー」
クローゼはオーダーに応え、クルーと遊撃チームの居るフロアにアナウンスを流した。
「カノン、『グラビティアンカー』の準備は?」
「いつでも大丈夫です」
「良し」
最終確認をして、俺はブースターの出力を下げ始めた。…そしてー。
「ー…10、9、8、7、6、5、4、3、2、1、0」
「グラビティアンカー、展開」
クローゼのカウントがゼロになると同時に、俺はブースターの出力を完全に止めてからブレーキを掛ける。一方、アインはグラビティアンカーを展開させ船体を停止位置で固定した。
「…っ。…こりゃ、凄いな……」
俺はメインモニターに視線を移す。…目の前には余多の『バカみたいに巨大な彗星』が縦横無尽に移動している光景が繰り広げられていた。
「…あれが、『スターストーム』ですか。……知識としては知っていましたが、実際に見るととても圧倒されますね」
「…俺も同じだよ。…てか、秘宝ハンターの誰もナマで見た人はいないだろう」
「…ですね……。…あ、マスター。『監視艦隊』がお見えになりました」
クローゼとそんな話をしていると、銀河連盟の艦隊…この『超危険』な星系を『見張っている』監視艦隊が幾つかの『安全ポイント』にやって来たようだ。
彼らは普段、星系外周から少し離れた地点から監視しているが今回わざわざ『観測』と『記録』…後は『万が一』の時の為に駆け付けてくれたのだ。
『ーこちらは、銀河連盟防衛軍第3危険星系監視艦隊・旗艦-ユイセラン-です』
「こちらは、アドベンチャーカノープス号です」
直後、向こうからコンタクトを取って来たので応答する。…あれ?…気のせいかな?
『……?どうかされましたか?』
ふと、モニターに映る艦長に『見覚え』を感じた。ただ、向こうはこちらに見覚えはなかったようだ。
「…失礼しました。…少し、『知り合いの軍人』にー」
『ーっ!…いえ、多分エージェント・プラトーの勘違いではないと思います』
「…はい?」
『申し遅れました。
私は、ユイセラン艦長を務めさせて頂いております-イザベラ=ハウ-中将であります』
「…っ!ユリア少佐の親族の方でしたか…」
『はい。いつも、妹がお世話になっています』
「とんでもない。ユリア少佐には重要な場面だけでなく、いろいろと助けられていますよ」
『それは良かった。…っと、すみません。
ええと、頂いたスケジュールだと今日から数日間は攻略シュミレーションでしたよね?』
「はい。間違いありません」
『了解しました。それでは、これより哨戒航行を開始します』
「宜しくお願いします」
そして、通信は切れたので俺は早速シャロンの元に向かったー。
『ーダイブ、スタート』
それから少しして、俺はシュミレーションマシンからバーチャルの世界に入る。
「ーおお…」
数秒後、目の前に広がる景色に俺は思わず感動の声を出した。…何せ、すっかり馴染んだ『カノープス』のコクピットがそこにあったのだから。
『ーどうですかマスター。何か相違等はありますか?』
「文句の付けようがないな。見事だよ」
すると、シャロンが確認して来たので俺はパイロットシートに座りつつ称賛の言葉を送った。
『良かった…。…それでは、本題に入るとしましょう
ーセリーヌ。お願いします』
『ーはい。分かりました
マスター。此処からは、私セリーヌがご説明させて頂きます』
アナウンスはセリーヌに切り替わり、同時にウィンドウが展開する。…そのウィンドウには、とある『オペレーションネーム』が付けられていた。
『今回のパインクト攻略プランは…通称-スターサーフィン-と名付けさせて頂きました。
その由来は、あの彗星群の内の1つをサーフボードに見立てて-サーフィン-をするからです』
「……マジか。…全く、随分と『シンプル』かつ『面白い』プランを考えるじゃないか?」
実に簡潔で非常に『ワクワク』するプランを聞いて、気付けば自然と笑っていた。
『…やはり、マスターならそう仰ると思っていました。
では、詳細な説明をさせて頂きますー』
ここまで来る間に、俺の事を随分と理解した彼女はやれやれといった感じに言う。そして、彼女は続きを説明し始めた。
その内容もまた、非常にシンプルだった。…まあ、当然『実際やる』となると超ハードなコントロールテクニックが必要になるが。
『ー…以上が、-スターサーフィン-の概要となります。
此処までで、何かご不明な点はございますでしょうか?』
「大丈夫だ」
『畏まりました。
それでは、後はシャロンに任せますー』
『ー了解です。
ではこれより、オペレーション-スターサーフィン-のシュミレーショントレーニングを開始します。
マスター、まずはこちらをご覧下さい』
すると、ウィンドウにはパインクトの全体図と『時間』が表示される。
『先程のセリーヌの説明にもありましたが、本オペレーションは非常にシビアな-タイムスケジュール-になっています。
…つまり、1秒の遅れが失敗に繋がるばかりか最悪-星-になるかも知れないという事を、良く頭に入れておいて下さい』
シャロンは、非常に心配そうな様子で忠告してくれる。…まあ、本当はこんな危険な事はしてほしくはない筈だ。でも、その気持ちを抑えてこうしてプランを考えてくれている。…だからー。
「ー君たち2人には、最大の感謝を。…そして、心配掛けてすまない。
だが、この先も『こういう事』には何度も遭遇するだろう。『秘宝』関連にしても、『エージェント』関連にしてもな」
『……』
「…でも、俺は『大丈夫』だって信じてる。
ーだって、『君達』や『サポーター』。更には『彼ら』が居るから。
この先に確実に待っている困難や辛い事も、全員で力を合わせれば必ず乗り越えられる筈さ」
『…はい』
俺が力強く自信満々に語ると、彼女は少し明るい様子で頷いたのだったー。