ーそして、今日も特に何事もなく過ぎていき『船内時間』はそろそろ『夜』になろうとしていた。
「ー…ふう」
『アッパーバス』にて1日の疲れを取った俺は、リビングフロアにてのんびりしていた。
「「ー…あ、お疲れ様です」」
「お疲れ様~」
すると、アイーシャとアインが入って来た。…2人は、先程バスに入っていたからかほんのりと湯気が立っていた。
「……と」
「……」
そんな『ユアガリ美人』な2人は、凄く自然な流れで俺の両隣に座る。…なんか、ライトクルーになって以降互いの『距離』が縮まった気がする。
「ーあ、お疲れ様です。
2人は、何か飲みますか?」
まあ、美女2人に挟まれるのは悪くはないので特に問題はない。…と、そんな中カノンが小さな2段カートを押しながらやって来た。
「ありがとうございます。…じゃあ、アイスティーをお願いします」
「…私は、レモネードを」
「畏まりましたー」
カノンは、素早く準備をし俺達の目の前のテーブルにそっとドリンクの入ったグラスを置いた。
「「ありがとうございます。……」」
2人は、自分の前に置かれたそれを取りまず一口飲む。
「本当、美味しいですね…」
「…うん」
「まあ、『ブランド品』だからな。…勿論、提供するカノンの腕もあるけれど」
「恐縮です」
「ー…はあー、気持ち良かった~」
「ですねぇ」
「…あ、お疲れ様です」
そんなやり取りをしていると、ティータとクローゼとアンゼリカとロゼが入って来た。
「お疲れ様」
そして、当然のように彼女達も俺の周囲に座る。…はあ、まさか『こんな羨ましがられる日々』がやってこようとはな。
「メアリー達は、まだ作業中ですか?」
「ええ」
この状況に男として幸せを感じていると、カノンは此処にいないメンバーの事に触れる。すると、クローゼは直ぐに答えた。
ーメアリーと達には、今『パインクト攻略』の為の『プラン』と『シュミレーション』を制作して貰っているのだ。…そして、その作業はいよいよ最終段階に入っている。
「…とりあえず、『プラン』に組み込まれてる『サポーター』は今日も『元気』だったよ」
それを聞いて、ティータは俺に教えてくれる。
「ありがとう。…この後、トラブル等が発生しなかったら『連盟標準時間』の16:00頃には『外周領域』に到達する筈だ。
そして、そこでシュミレーションを数日繰り返してから『開始予定時間』に攻略を開始する」
『……』
それを告げると、全員真剣な表情で頷くのだったー。
○
ーとまあ、最近はこんな感じで1日が過ぎていくのだが……今日は、それだけで終わる事はなかった。
『ーこんばんは。エージェント・オリバー』
「こんばんは、閣下」
そろそろ就寝時間になるので、『作業』をしているとふと通信が来た。…相手は、上司のブラウジス閣下だった。
『すまないな、こんな時間に』
「いえ、お気になさらず。…何かありましたか?」
『いや、任務要請ではなく-情報共有-だ』
気を引き締めて聞くと、閣下は首を振る。…なんだろう?
『実は、つい先程銀河連盟議会にて-後援会-の設立が承認された』
「…っ。ようやくですか…」
『ああ。中心メンバーもある程度は揃っているので、メディアへの正式発表も近々行う予定だ。
後は、ボランティアスタッフだが…。そちらは、御披露目の後募集をする事になっている』
「…どのくらい集まるでしょうかね?」
『…さてな。ただ、会長や中心メンバーが相当な-大物-なので-お近づき-になりたいと思う者達が集まるのは、想像に難くない』
「…ですよね~。…まあ、『書類選考』と『リモート面接』があるから『それしか考えてない輩』は弾かれるから大丈夫でしょうが」
『…それでも、-警護-の事を考えるとかなりふるい落とす必要がある。
後は、-守る為の措置-だが…。…いや、君が-アレら-を送ってくれて助かった』
すると、閣下は感謝して来た。…実は、この前の『任務』で押収した数タイプの『レプリカ』を送っておいたのだ。…まあ、『こっち』のキャパを少し圧迫していたので『何かに活用して下さい』というメッセージを添えて送ったのだが、役立ってなりよりだ。
『それに、-彼女-と-2体-を派遣してくれたおかげでより安全が増した。ありがとう』
「まあ、彼女…アイリス嬢には『表向き』参加して貰う予定でしたから」
そう。現在、アイリスと『サル』と『ヒツジ』(両方チルドレン)はルランセルトに行っているのだ。…まあ、後援会への入会は『カモフラージュ』の意味だけでなく『ガード用小物づくり』や『ネームバリュー』という理由もあるのあるのだが。
『…そうだったのか。…いや、見事な采配だ。
…ただ、それでもやはり-不安-はある』
「…『サーシェスカンパニー』ですね。…現在、『情報班』には継続的に『そちら関連』の情報を最優先で集めていますが」
『ああ、情報局から報告は受けている。…しかし、今の所は-大人しい-ようだ』
…まあ、今も『消化活動』が忙しいだろうから他の事に手は回らないのだろう。…だがー。
『ー…エージェント・オリバーも同じ考えのようだな』
「…ええ。あの会社が、このまま『何もしない』とは思えないです。
ーおそらく、今この時も『恐るべき計画』を進めていると考えるべきです」
『…やはりか。
…まあ、帝国に居る間は万全の警備で安全確保が出来るが……。
ー問題は、-外-に出た時だな』
…やっぱり、一番の懸念材料は『そこ』か。…会長であるリーリエ皇女殿下は物凄い『行動派』だから、『プレシャス』のPR活動なんかはリモートではなく『リアル』で行いたいと考えているのだ。
…当然、そうなると星間移動や星系間移動もする訳だ。勿論、その際も厳重な警護が作くだろうが…。…『レプリカ相手』だと、正直『厳しい』かも知れないな。
『…実はな、皇女殿下は-御披露目-の2日後から-ワイドPR活動-を開始したいとお考えなのだ』
「…っ。…本当、活発なお方ですね……。…さすがに、『帝国本土内』ですよね?」
『ああ。…それに、最初の第2都市が終われば-一旦-はお戻りになると仰っていたな』
「そうですか……え?『一旦』…?」
思わず聞き返してしまうと、閣下は非常に困った様子で頷いた。
『…そうだ。その後も、-活動-は頻繁に行う予定だ。
…確か、皇女殿下がご提出された-予定表-だとオーガストの頭から-本土外-に出られる事になっている』
「……(『頻繁』に出るのか)。…ちなみに、殿下は最近の情勢を把握しておられるのですか?」
『勿論だ。…ただ、その上で殿下はー』
すると、閣下は映像データを再生した。
『ー混迷を極める今、連盟の人々は不安を抱いて日々を過ごされている。だからこそ、明るいニュースを…-希望-を届けるお手伝いがしたい』
「(…多分、これは『俺』へのメッセージだろう。はあ、イチ『エージェント』としては情勢不安…『襲われるかも知れない』状況の中で『外出』はして欲しくないが、『プレシャスの代表』としては拒否は出来ないな…。)
ー閣下、もし殿下にお会い出来ましたらお伝え下さい。
『貴女の勇気に最大の感謝を贈ります』…と。そして『貴女と志を同じくする方々は-我々-も出来うる限り助力を致します』と」
『…分かった。必ず伝えよう。
…では、-プレシャス-も-可能な限り-は警護をしてくれるのだな?』
「『お三方』と協議をした上でですが。…まあ、多分快諾してくれるでしょう。
…とりあえず、私が率先して動きますので予定表を見せて頂けますでしょうか?」
『ありがとう、同志オリバー…。…予定表だが、そちらの-船内時間-の翌日にコピーを転送する』
「了解です」
『…それでは、連絡事項は以上だ。
ー同志オリバー。…どうか気を付けて』
「ありがとうございます、閣下」
最後に、閣下は心配そうに言ってきたので俺は自信満々に返したー。
ーこうして、いつもとは少し違うナイトタイムの後カノープスの1日は終わるのだった。