ーそれから数時間後。ランチを済ませた俺は、メアリーの元に来ていた。
「ーそれじゃ、今日も宜しくお願いします」
「ああ」
「えっとー」
そして、メアリーは今日も研…『俺』を識る為にいろいろと質問して来る。
「ー…なるほど。『初代殿』が何故『怪力』を身に付けていたかはご存知ではないのですか…」
今日の質問は、俺の特殊能力『怪力』のルーツについてだ。…ただ、祖父ちゃんも何でそんな能力を身に付けたか分からないんだよな。
当人も、ただ『生まれた場所』を探すだけでなく旅の道中で記憶回復の治療は受けてはいたのだ。…しかし、結局『受け継いだ』のか『身に付け』たのかは思い出せなかった。
「…確か、当時は『それ系統の手術』が『まだ』確立さていなかった筈だよな?」
「ー…えっと、『正式』に確立されたのは、20年前になっていますね」
俺の確認に、彼女は素早く検索し答える。
「…となると、やはり『遺伝』の説が濃厚かな?」
「…マスターの場合は、確実にそうでしょうが初代殿もそうとは限らないでしょうね。
…やはり、一度初代殿が行った病院に行きたいですね」
彼女は、非常にワクワクした様子でそう言った。…楽しそうだな。
「…ただ、『航行予定』をこなしながらだと無理でしょうね。…はあ」
…と思ったら、彼女はしょんぼりした。まあ、本当『あちこち』の病院に行ってるからいちいち追って行くのは大変だろう。何より、『最優先の目的』がある以上彼女に我慢をー。
「ーいや、長期的に通院してた病院が1つだけ『あるかも』知れない」
「…っ!?……あ、『あそこ』ですか?」
ふと、我が故郷『ライシェリア』の事を思い出した。すると、彼女も直ぐに察した。
「とりあえず、『後2時間』したら聞いてみるよ」
「あ、ありがとうございます…」
俺が約束すると、彼女は嬉しさと申し訳なさが混じった表情をした。…で、何で『2時間』必要なのかというと『まだ仕事中』だからだ。
「気にするなよ。…てか、『これ以外』も知らない事は沢山あるから1つずつ解明していきたいと思ってたとこだ」
「…血縁者であるマスターでさえも、知らない事が?」
俺が笑いながらそう言うと、彼女は驚きの表情を見せる。
「ああ。…『エージェント』だった事は当然として、『秘宝ハンター』としての顔も『バトンアーツ』の実力者としての顔も、『功績』も『偉業』も何1つ知らなかった。
ー何より、今も尚多くの人に愛されている『プレシャス』のモデルだった事も俺はつい最近まで知らなかったんだ」
「…語らなかった理由は察しが付きますが、記録等もなかったのですか?」
「ああ。…カノープスの方にはいろいろあったが実家の方にはなんにも」
「…徹底されていたのですね」
「…いや、多分ブラウジス閣下の提案だろう。
祖父ちゃん自身で『考えた』とは、正直思えないな…」
「…話しには聞いていましたが、どうやら『それ以上に愉快』な方だったのですね……」
割りとヒドい予想を立てると、彼女はなんとも言えない表情で『オブラート』表現をするのだったー。
ーそして、その後も幾つかの質問に答えた後俺は彼女と分かれて通信ルームに来ていた。
「ーやあ母さん。今大丈夫?」
『うん、大丈夫だよ。どうしたの?』
「実は、ちょっと祖父ちゃんの事で聞きたい事があるんだけどー」
俺は、簡単な経緯を話し『確認』をする。…だが、母さんは少し悩んだ表情をした。
『ー…うーん。私の知る限りだと、お義父さんが病院に通ってた事はないかな。勿論、健康診断は毎回行ったけど、-そこまで-は流石に診て貰ってはないと思う』
「…そっか」
『…あ、ちょっと待って。
ーあなた~っ。今オリバーから通信が来てるんだけど、ちょっと来てー』
『ーん~?はいよーっ』
すると、ふと母さんはちょうど良くバスから出て来た親父を呼んだ。
『ーおう、オリバー。2日振りだな。
んで、どうした?』
『実はねー』
そして、モニターの映像は半分に分割され親父も表情された。すると、母さんは親父に『説明』する。
『ーなるほど…。…うーん、悪いが俺も母さんと同じだな。何せ、親父…先代は病気とは無縁な上その性格に反して怪我知らずだったからな』
「…わあ、意外。…いや、『経歴的』には当然なのかな?」
親父の話しに一瞬驚くが、良く考えると納得した。
『…だろうな』
『…でも、そうなると後はー』
『ーなんだい。2人して電話に出てると思ったら、オリバーからかい』
後は祖母ちゃんに聞くだけだと思っていると、当人が通信に参加して来た。
「やあ、祖母ちゃん。こんばんは。ちょうど良かったよ」
『ああ。…?どういう事だい?』
「実はねー」
俺は祖母ちゃんに、説明する。
『ー…なるほどね。…でも、何で急にそんな事を?』
『何でも、こいつのクルーのコが親父の-怪力-について知りたいんだと』
当然だが、祖母ちゃんも疑問を抱く。すると、親父が代わりに答えてくれた。
『おや、また増えたのかい?』
「うん。今回は一気に7人増えたよ。
…んで、どうだった?」
『そうかい。…そうだねー』
祖母ちゃんは嬉しそうに笑い、そして記憶のサルベージを始める。
『ー…多分、カイトやアンナと同じであの人が病院に行ってるのは見た覚えが無いね』
「そっか…」
『ただ、あくまでも-私達が見てない-だけで-受けて-はいたんじゃないかい?』
『『…あ』』
「…やっぱり、『その可能性』があるのか」
祖母ちゃんがそんな予想を口にすると、親父達はハッとした。…実のところ、メアリーと話している時からそんな気が薄々していた。
『…となると、例の-友人-の中に-主治医-がいたという事ですか?』
『だろうね。…ただ、予想するのは難しいね』
『…来る人皆、スーツだったからな』
「…ふむ、そうなると次に頼るべき人は『あの人』か」
3人の話しを聞いて、次の『相手』が決まった。
『…?誰だ?』
『…も、もしかして、ブラウジス閣下とか?』
「いや、閣下もお忙しいから報告以外での通信はしないよ。…それよりも、もっと確実で『身近』な人に聞いてみる」
『…なにやら、オリバーの-もう1つの顔関連-みたいだね。まあ、何か分かったら連絡してくれると嬉しいね』
「うん、約束する。
ーそれじゃ、親父、母さん、祖母ちゃん。ありがとう。…お休みなさい」
『『『ああ/うん』』』
最後に挨拶をして、俺達は通信を切った。…さてー。
「ーすみません。休憩中ところお邪魔してしまいして」
そして、俺は『トリ』の中にいるアデル班長の元を訪ねていた。
「構いませんよ。…それで、私に聞きたい事というのは?」
「実はですねー」
俺は詳細と、『とある人物』が知り合いに居るかを聞いてみる。
「ーなるほど、『初代殿』関係の事でしたか。そして、その方の『記憶回復』に携わった方々の事を…。
…いや、本当にエージェント・オリバーは『運が良い』ですね」
すると、彼女は驚愕の表情を浮かべた。…どうやら、ビンゴだったようだ。
「…その方とはどんか関係だったのですか?」
「教官と生徒という関係ですよ。
ただ、今は講師の職をお辞めになっていた筈です。…ああ、勿論現在の連絡先は把握してますのでご安心を」
「今でもお付き合いがあるんですね」
「ええ。…とりあえず、後程『大丈夫な時間』に連絡しますね」
「お願いします。…ちなみに、その方は今どちらに?」
「はい?えっと、確か…ー」
すると、彼女はマイデバイスを確認し始めた。
「…あった。
…今は、『ブルタウオ』の第2都市惑星『ミザナサ』に居を構えてるようですね」
「ああ。確かにあそこは、余生を過ごすには良い環境ですからね。
…っと、では失礼します」
「はい」
とりあえず『ルート』は確保したので、俺は『トリ』を後にするのだったー。