ー超広域探索船『アドベンチャーカノープス』。…その中には、現在キャプテン含めたライトクルー11名とキャプテンのもう1つの顔である、『特務捜査官』の専属部隊である『第1独立遊撃部隊』32名が共同生活をしている。
ーさて、今日はそんな大所帯の『ドラゴン』の一日を見てみようと思う。
○
「ー……っ。……~~っ」
その日も、カノープスで一番最初に目覚めたカノンはベッドの上で上半身を起こし、一つ伸びをする。…本来『特殊な出自』のおかげか彼女は睡眠を必要としないが、『フェイク』とか『ルール』とか『睡眠学習』の為にわざわざ寝ているのだ。
そして、彼女は直ぐさまベッドから降り素早く身支度をしていく。それが終わると、彼女は自室を出て通路フロアを経由しコクピットに入る。
(ー周辺に異常無し。カノープス内部システム、『サポーター』、正常。
緊急のメールも無し)
まず、彼女は周辺に広域サーチを掛け安全を確保。次にカノープス内部に異常がないかを確認し、最後にメールチェックをした。
そして、それらのウィンドウを消した彼女は『管理者権限』でオートパイロットシステムを起動し、『ドラゴン』をゆっくりと動かし始めた。
『ーおはようございます。マネージャー・カノン』
『おはようございます、カノンさん』
それから少しして、別フロアに居るメンバーから通信が入る。
「おはようございます、メアリー、ドクタービオラ。
こちらは、既に『準備』が出来ています」
『分かりました』
『じゃあ、朝の清掃を始めましょう』
「了解しました。
ー特殊装甲装備の『トルパー』、及びダイバーチルドレン『ニッチスニーキング』。レスキューチルドレン『スプラッシュ』、GO」
ビオラの開始宣言に合わせ、彼女は各『ホーム』から『最適』のチルドレンをカノープス全域に出動させる。
『ー…あ、来た来た』
『ありがとうございます』
「いえ。皆様、いつもありがとうございます」
『とんでもない。…乗せて頂いているのですから、このくらいは当然ですよ』
『私も、-活躍-の場を与えてくれたので嬉しいですよ』
彼女が心からの感謝を述べると、清掃担当の彼女達はニコニコしながら首を降った。…そうこうしている内に特殊装備…『クリーニング素材』で身を包んだ『ネズミ』と『ヘビ』、それから『クリーニング液』を充填した『ペリカン』による『ドローン部隊』とビオラ及びメアリーによって最適化された『清掃ロボット』が活動を始める。
それを確認した彼女も、『ドローン部隊』と共にコクピットの清掃作業を始めた。
(ー…さて、そろそろ『彼女』がブレックファストの準備を始めた頃でしょうか)
それから30分後。あらかた清掃が終わった彼女は『食料保管フロア』にコールを出す。
『はいっ、こちらロゼです』
「こちらカノンです。おはようございます、ロゼ」
すると、エアウィンドウにロゼが映し出される。
『はい、おはようございます。マネージャー・カノン。
あ、ブレックファストの分はもう運び出してますよ』
挨拶を交わすと、ロゼは『察して』答えた。
ー…実は、やり取り事態はこれで2回目なのだが彼女は初回の時点で『ラーニング』したので、こんな風に慣れた感じで答えられるのだ。
「ありがとうございます。
ーおっと、『皆様』起床されたようですね」
それを確認した彼女の元に、幾つかのサインが届いた。
『ーこちら、クリーニングα。今、トレーニングエリアのクリーニングが終わりました』
『こちらβ。食堂のクリーニング終了です』
「ありがとうございます。
引き続き、宜しくお願いいたします」
直後、『清掃担当』から通信が入った。なので、カノンは2人にもお礼を言ったー。
○
ーさて、こんな感じで『朝早く』から一日が始まるカノープスだが…それから少し時間が流れると、あちこち『騒がしく』なる。例えばー
「ーせいっ!」
「ふんっ!」
俺は落下しながらロッドを振り下ろすと、戦闘班リーダーのクルツ大尉は特殊な形状の警棒でそれを受け止める。…すると、大尉は直ぐに押し返して来たので俺は一旦離れる。そして、直後全力で駆け出し大尉の背後に素早く周り込む。
「ー甘いっ!」
けれど、大尉は振り返らずにショックガンの銃口だけをこちらに向け射ってきた。…うーん、相変わらず反応速度が高いな。
俺はショックビームの着弾予想地点を素早く抜け、そのまま大尉の周りを周回する。…直後、背後で小規模の『ドーム』が発生する音が聞こえた。…さて、どうするかな?……良し、今日は『コレ』で行ってみよ。
俺は走りつつプランを高速で練る。そして、再度大尉に攻撃を開始する。勿論、大尉も迎撃を始めた。
「ー『エレキサイド・シールド』、『バードサイド・ブースト』、オン」
直後、こちらに向かってショックビームが飛んで来た。…しかし、今度は回避せずロッドにオーダーを出す。
すると、ロッドの右半分…『ショックガン』の方がイエローの光を放つ。同時に、左半分…『バードガン』は白い光を放った。
「せいやっ!」
そして、俺はその状態でロッドをビームに向かって勢いを付けて投げる。…次の瞬間、『バードサイド』からブースターが吹き出しロッドは更に加速する。
「ーっ!」
数秒後、ロッドはビームの中に飲み込まれるが『エレキサイド』から発生するエレキバリアに守られているので、ロッドはビームの中を難なく駆け抜けた。
「『キャンセル』ッ!」
それを見た大尉は、直ぐにビームを消す。…初見時、向こうは見事に驚愕してくれたおかげで、結果勝ちに繋がったのだが2回目以降は『直ぐに消し警棒ではじく』という、実に的確な対応でなかなか『チャンス』に繋がらないので、最近はやってなかったが…。…果たして、『コレ』はどうかな?
こちらが内心でほくそ笑むなか、大尉は警棒を構えた。…なので、既に駆け出していた俺はー。
「ー『オートパージ』ッ!」
「ーっ!?……」
俺が思い切りオーダーを出すと、ロッドは空中で『分解』し元の2つのビームガンに戻る。…しかし、大尉はかえって冷静になり警棒を振り上げー。
「ー『スパーク』ッ!」
そのタイミングで、俺は3つ目のオーダーを出す。直後、ショックガンは全方位に放電を開始した。
「ーっ!?」
だが、大尉は咄嗟に身を翻し後方に向かって走り出した。
「ー『オートリターン』」
それを見張らい、バードガンにオーダーを打数。すると、バードガンは『ワープフィールド』を展開し『自ら』俺の手元に戻って来た。
「『フロートシュート』」
そして、大尉にバードガンを向けトリガーを引いた。直後、フロート効果のあるビームが大尉目掛けて飛んで行く。
「ーっ!しま……」
数秒後、ビームは大尉に命中しその体を浮遊させた。
『ーおおっ』
そこまでの流れを静かに見ていた他のメンバーは、思わずリアクションをした。
「ー……はあ。お見事です、エージェント・オリバー」
『ーターゲット、ルーズ』
空中に浮遊した大尉は、やや落ち込んだ様子で称賛してくれた。…すると、コールが流れた。
「ー『ダウン』」
なので、俺は速やかに降下のオーダーを出した。
「ーいやはや、『手元』を離れても機能するのは理解していましたがそのシステムをあそこまで上手く活用するとは…」
少しして、降りて来た大尉が感想を呟く。
「まあ、今のも『初見』だからこその戦術ですよ」
「…全く、貴方には本当に驚かされる。
ーさて、諸君。今の戦闘はきちんと記憶したな?」
『イエッサーッ!』
感心していた大尉は、瞬時に真剣な表情になり他のメンバーを見る。勿論、全員素早く返答した。
ー要するに今の戦闘は、『レプリカ武装を所持した敵』との戦闘を想定した訓練だ。…勿論、俺にとっても得られるモノが多いトレーニングなので、非常に有難かったりする。
「では、トレーニングスタートッ!」
『サーイエッサーッ!』
すると、彼らはグループを作ってトレーニングを始めた。
「ありがとうございました。エージェント・オリバー」
「いえ。お役に立ててなりよりです。…では、少し早いですが私はこれで」
「ええ」
本当はまだまだ参加していたいが、『キャプテン』としての仕事があるので断りを入れてトレーニングフロアを出た。…さて、一旦クリーンにしないとな。
だが、目的のフロアに行く前に俺はシャワールームに向かうのだったー。