『ー久しぶりですね、皆さん』
『久しいの』
「お久しぶりですわ、老師、大将殿」
「お久しぶりです」
『…ふむ、その様子だと無事に-回収-出来たようだな?』
互いに挨拶を交わすと、老師はこちらの表情で結果を言い当てた。なので、俺はセリーヌにアイコンタクトを送る。
すると、こちら側にエアウィンドウが展開した。
「はい。此処に眠っていた『手掛かり』は『オリバー』が回収しました」
『…っ!…てっきり、-貴方-が入手していると思いました』
『…まあ、その辺りの事は別の機会としよう。
ーでは、わざわざ-この場-を設けた理由を聞こうか』
すると、案の定お2人は驚いたようだ。しかし、老師は直ぐに表情を真剣なモノに変え本題を聞いて来た。
「まずは、『経緯』からお話しさせて頂きますー」
女史がそう切り出すのと同時に、ウィンドウの映像は切り替わりいくつかの『解析画面』が表示された。…しかし、もう『座標割り出し』が完了したか。彼女も大分、『カノープス』に慣れて来たようだ。
「ーと、いう訳でして今後『プレシャス』はどう動いて行くかを考えたいと思います」
『…なるほど。-チェックポイント-がまた出たか。…しかも、オリバー以外のメンバー全員に』
『…見る限り、かなり広範囲ですね。…ちなみに、女史と貴方はどう考えていますか?」
すると、大将はこちらに聞いて来た。まあ、多分こちらと同意見なんだろう。
「私は、ある程度固まって動いた方が良いと思います」
「…もしくは、連盟の艦隊に動向補佐をして貰うのが良いでしょう」
『…ふむ。どうやら、その2つがベストですね。
となると後はー』
『…割り振りか。…プラトー、お主はこの後どうする?』
「…そうですね。
ー私は、まず先に『パインクト』を攻めてみたいと考えています。…その後で、『ファインドポイント』の探索に加わりたいと思っています」
『『…っ!?』』
「…『攻略方法』を思い付いたのですね?」
こちらの『予定』に大将はおろか老師も驚愕したが…女史だけは、冷静に予想を口にした。
「…まあ、まだ『輪郭』だけですが」
「…フフ、『此処』での経験が生きたようですね」
『…なんと。それほどまでに得難い経験を』
『…羨ましい限りだ。…こちらは、まあ大変でしたよ。…今回は、かなり-デリケート-な所にあったので。
勿論、回収自体は苦になりませんでしたが…-色々とヒヤヒヤしながら-攻略しましたねぇ……』
すると、大将は回収の時の事を大まかに教えてくれた…のだが、なんだか話している内に精神的に疲労が表情に浮かんで来た。…それに、非常に珍しく『イライラ』しているようだ。
『こちらは、なかなかに-ハード-であったな。…まあ、そのおかげか-特にいざこざ-はなかったな。
…おっと、済まない……』
一方、老師は『試練』の事を思い出しこれまた非常に珍しく朗らかな感じだった。…しかし、直ぐに申し訳なさそうに大将に謝った。
ー…多分大将サイドは、『一般ハンター』が暴走気味に先走り『手掛かり』の事を知る人達か、もしくは『彼女達のような守護者』と揉めあわや『回収不可』な事態になりかけたのだろう。…だが、なんとか無事に回収出来たようだ。
『…いえ。こちらこそ、失礼しました』
「…心中、お察ししますわ。…ただ、こう言っては何ですがお2方の方は『まだマシ』だったと思います」
『…っ。…そういえば、そちらは-連中-の魔の手が伸びていたのでしたね』
『…もしや、-誑かされた者-でも居たのか?』
すると、またもや老師は的確な予想をした。
「…ええ。というか、-全員-が一時的に-臨時戦力-に変貌しました」
『…なんと……』
『…嘆かわしいですね。…なるほど、通りで-実行部隊-の事は-詳細不明の部隊-と報道された訳ですか』
真実を話すと、2人は揃って呆れた表情をした。…いや、ホント困ったモノだ。
『…それで、その-不届き者-達はどうしたのだ?』
「そいつら全員、『協力者』になって貰いました。ポジションは『後援会専属のガードチーム』になりますかね」
『…ほう。…全く、見事な采配だな』
『ええ。…確か、後援会は帝国の姫君が会長を務められる訳ですから必ず-正規の護衛-も付くでしょう。
つまり、常に監視の目があるという訳です。…ただ、給料と-手当て-もかなり出るでしょうから-問題行動-は起こさないでしょうね』
…まあ、彼らにとっても『この采配』な悪い話しではないのだ。というか、多分その内『使命感』を持ってやってくれるだろう。
『…おっと、コースが逸れたな。
…とりあえず、-パインクト-に関してはお前に任せる。…ただ、その後は-代理-と-2人-の場所を優先した方が良いと思う』
すると、老師が軌道修正をしてくれた。その上で、表示された『チェックポイント』の何項目かを見てこちらの予定の修正案を出してくれた。…そう。実は、『ちゃんと3人の分』も用意されていたのだ。
『それが終わり次第、-近い場所-の者達のサポートを頼む』
「分かりました。
…後はどう割り振るかですが、とりあえずは解析が終了してからです。…多分、『明日の日の出』くらいまでには終わるでしょう」
『そうか…』
『…相変わらず、凄まじい性能ですね』
「…では、今日はこの辺りで終了として続きは明日の『昼頃』としたいところですが…お2方は、大丈夫でしょうか?」
『ああ。こちらは、まだ解析に時間が掛かるから問題はない』
『こちらも同じくです』
女史の確認に、2人はOKを出した。…まあ、俺達『代理』も旅立ちの準備を始めないといけないからな。
「では、以上でミーティングを終了します」
『ああ』
『マダム、プラトー。失礼します』
そして、女史がそう言うと老師と大将は通信を終えたのでウィンドウが消えた。
「…お疲れ様でした、女史」
「いえ。…では、私もこれで失礼しますわ」
すると、女史は席を立ち通信ルームから出て行った。
ーとりあえず、『上司』にも報告しないとな。
「ーマスター・プラトー。マネージャー・カノンより報告です。
『間も無く、防衛軍本部に到着します』」
「分かった。
じゃあセリーヌ。『用意』を頼む」
「畏まりました」
それだけ言うと、彼女は素早く『準備』を…『報告書』を専用タブレットにインストールし、それを俺に差し出した。
「ありがとう。
…それじゃ、セリーヌもゆっくりしててくれ」
「…っ。はい、そうさせて頂きます」
それを受け取り、俺は彼女の見送りを受けて通信ルームを後にしたー。
◯
ーSide『カノン』
ーそこは、『ドラゴン』の数々のフロアの中で数少ない『遊び心』のない機能性最重視のフロアだった。
そのフロアはとにかく無機質で、中心には大型の機械が設置されていた。そして、それを取り囲むように『-7つ-の銀色のカプセルベッド』がセッティングされていた。
『ー………』
そこから少し離れた場所にある端末で、カノンと『セブンガーディアン』の5人はオリバーの『最重要オーダー』を遂行すべく『作業』をしていた。
「ー失礼します」
すると、そのフロアに先程までオリバーのサポートをしていたセリーヌが入って来てカノンの横のスペースに座りる。そして、彼女も他の5人と同じ『作業』…とは言っても、傍目から見ると単に座っているだけだった。
ー勿論、そんな訳はなく5人の座る椅子も『端末の一部』なのだ。…その証拠に、モニターには彼女達の『パーソナルデータ』が表示されていく。
「ーお疲れ様です。シャロン」
「貴女が来たって事は、もう着いたって事だよね。…相変わらず、『オートパイロット』のスピードがケタ外れですね」
それから少しして、一足先に作業を終えたカノンは『シート型端末』をOFFにしてから彼女を労う。…ちなみに、彼女も『シート型端末』に座っているがウィンドウには『何らかの数値』が表示されていた。
一方、彼女の左に居るアンゼリカは『ドラゴン』の性能に改めて惚れ惚れしていた。
「…流石、『私達の何倍も大きな-存在-』なだけはあるね。…よし、終わり」
「ええ。…こちらもですね」
ティータとロゼも、激しく同意していた。すると、一番乗りで此処に来た2人の作業は終わったようだ。
「お疲れ様です。2人共、仕事があるなか『急に』お呼び立てしてすみませんでした」
「気にしなくても大丈夫だよ」
「とんでもありません。…この『作業』は、私達が『本当の意味』でこの船のクルーになる為に必要な事ですから」
カノンが申し訳なく謝罪すると、2人は揃って首を振った。…そう。実は今まさに『セブンガーディアン用の新しいボディ』の『設定』が始まっているのだ。
「…しかし、まさか『リーダー』までもが『入れてくれ』と言うとは思いませんでしたね……」
「…ですね。…しかも、『確定1位』の速さで」
その後ろの方では、メアリーとシャロンが『リーダー』の『頼み込み』にコメントしていた。…若干、シャロンは自分の『レコード』が抜かれた事を気にしていた。
「「あ…」」
そんな話しをしている2人のデータ入力も、無事に終了した。
「じゃあ、私はこのまま『リーダー』の入力をやりますね」
「ありがとうございます、メアリー」
「私も手伝おうか?」
「大丈夫。シャロンは『例のやつ』に専念して」
「了解!じゃ、お先に失礼します」
『はい』
「では、私達も行きましょうか。お先に失礼します」
「うん。それじゃあね」
『お疲れ様』
シャロンが元気良く返事をし、フロアを出て行く。それに合わせてロゼとティータも出て行った。
「…さあてとー」
それを見送ったメアリーは、リーダーのデータを入力していったー。
ーそれから更に少し経った頃にはアンゼリカが。その数分後には、メアリーの『代理入力』とセリーヌの入力が終わった。
…その直後、中央の端末は『本格的』に動き出したのだったー。