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七人目-消えない不安-

『…サア、オ受ケ取リ下サイ』

「(まるで『ナイト』のよな畏まり方だな。…え、まさか『そういう意味』も含んでたりする?)ありがとうございます」

 俺は彼女の行動の理由を推測しつつ、『それ』をそっと受け取りチップケースに入れポケットの1つにしまう。…だが、彼女が立ち上がる気配はなかった。

『…ソレデハ、非常ニ身勝手デスガ-最後-ニ私ノ願イヲ聞イテ下サイ。

 ー私モマタ、-私達-ヲ生ミ出シタ大元デアル-秘宝-ヲ見テミタイノデス。…ソシテ、叶ウナラバ-貴方ガ手ニスル瞬間ヲメモリノ奥底ニインプットシタイ……。…ダカラ、私ヲ貴方ノ船ノクルーニシテ頂ケ無イデショウカ?』

 彼女は、真剣な眼差しでこちらを見上げた。…いや、まさか此処まで『プレシャス』寄りな願いを抱いていたとはな。しかも、『後継者』である俺が『1番乗り』になる事も望んでいるときた。

 俺は、彼女に非常に好感を持った。だから、彼女に満面の笑顔を向ける。

「ーああ、良いぞ。…ただし、『条件』がある。

『何』だか、『分かる』よな?」

『…っ!』

 彼女はハッとし、直ぐに立ち上がった。『良く見ている』だけあって直ぐに『必要以上の礼節』は不要だと思い出したからだ。

「そう。

 ー俺達は、『上下』はあれど『主従』じゃないんだよ。…『そういうの』は疲れるからな。

 まあ、肩肘張らずに行こうぜ。…えっとー」

『ー…ソウデスネ、私ノ事ハ-エステル-トオ呼ビ下サイ』

「分かった。これから宜しくな、エステル」

『ハイ、コチラコソ宜シクオ願イシマス

 マスター・オリバー』

 彼女はそう言って、深々と頭を下げて来た。…まあ、このくらいなら良いか。

『…デハ、ソロソロ-同胞-ノ方達ガ心配スル頃デショウカラ一度皆様ノ元ヘオ送リシマス』

「すまないな。…っとー」

 気を利かせてくれた彼女に、俺は『大切』なモノを渡す。

『ー…っ!』

「お、良く分かったな。

 ご察しの通り、そのチップの中に契約書が入ってるから後で記入しといてくれ。…それと、他のコ達のように『一時的なボディ』は用意する必要はない。

『3日後に迎えに行くから』、待っててくれ」

『…ッ!ワ、ワカリマシタ。…ソレデハ、転送シマス』

 またもや察した彼女は、とても『ワクワク』した表情になりながら俺を転送してくれた。 


『ーっ!』

 直後、俺は『入り口』に居た。…すると、先に戻っていたメンバーが一斉にこちらを向く。

 ーなので、俺は頷き先程手に入れたばかりの『ロストチップ』を見せた。

『おおっ!』

「ーお見事です。キャプテン・ブライト」

 その瞬間、メンバーは興奮したり称賛の拍手を送ってくれたりした。そして、女史とベテラン勢は共に出て来て惜しみのない拍手をしてくれた。

「ハハハ、ありがとうございます」

「さあ、『この地』での目的は果たしました。

 明日からは、『旅立ち』の準備を始めましょう!

 ーそれでは、解散っ!」

『はいっ!』

 女史は締めの言葉を言い、終了を宣言する。すると、メンバーは順々に自分の船に乗って行く。尚、俺や一部のメンバーは『ウマ』に乗る。…まあ、『偽装』したカノープス本体を出しても良いが『ドラゴン』のシステムがフルで使用出来なくなるからな。

 ーけど、流石に『ハードにバタバタ』な状況では『横取り』はしなかったか。

「ー…どうやら、プラトー氏の『予想』は珍しく外れたようですね」

『連中』が来なかった事にホッとしつつ、シートフロアに入りシートに座る。

 すると、ライトシートに座ったアイーシャさんが同じくホッとした様子で声を掛けて来た。

「まあ、『その方』がありがたいですよ。…このまま『一生フェードアウト』しないですかね~?」

「……いや、ホントそれ」

 やれやれと言った感じで『まずあり得ない希望』を言うと、レフトシートに座ったイアンさんがうんざりとしながら同意した。

「……。…お姉様は、どう考えていますか?

 やはり、『諦めない』のでしょうか?」

 すると、前に座るルイゼさんは隣に座る女史に問う。

「…っと。…まあ、『あの不届き者』達が『手を引く』とは到底思えませんね」

 女史は、慣れた様子でシートを反転させこちらを向き…非常に真剣な様子で答えた。…多分、この場に居ないベテラン勢は勿論老師や大将も『あり得ない』というだろう。

『ー発進シマス』

 それとほぼ同じタイミングで、リムジンレッグは発着場を出発する。…はあ、面倒臭い事この上ないな。

「…ですよねぇ」

「…はあ……」


「…そうなると、『消火』がある程度終わったタイミングで『ストーカー』が始まるのでしょうか?」

「…その可能性は十分にあるでしょう。

 とりあえず、後で『キャプテン・プラトー』と『私達ベテラン』とで今後の方針を決めようと思います」

「…そうですか」

 …まあ、ある程度固まって動いて貰うか連盟の艦隊と合同調査って形にしといた方が『ある程度』は安全だろう。

『ー間モ無ク到着致シマス』

 そうこうしている内に、『リムジン』は『ドラコン』に到着した。

「…では、私はこれで」

『お疲れ様でしたっ!』

 すると、早速女史はシートから立ち上がり足早に降りて行く。…さてー。

「ー皆さんはこの後どうします?

 私達は、『お手伝い』があるので降ります」

 その後ろ姿を見送っていると、唐突にアイーシャさんが切り出した。

「そうですね…。…あ、そういえば『お引っ越し』の準備をしないといけないんでした」

「…ああ、そろそろ『スピカ号』のリペアが終わる頃でしたね」

 釣られてルイゼさんも立ち上がる。…はあ、女史のクルー達とも此処でお別れか。実際、優秀だから助かってたんだがな。まあ、『抜けた穴は直ぐに塞げる』から問題ないんだが。

「…オリバーは、どうする?」

「私は、『このまま此処に居ます』よ」

 イアンさんの『念のため』の問いかけに、俺は何食わぬ顔で言う。

「じゃあ、『一旦お別れ』ですね」

「ええ」 

「さようなら、オリバーさん」

「はい、さようなら」

 そして、3人も降りたので俺は1人切りになった。…だが直後、ルームの入り口が開く。


「ーお疲れ様、カノン」

「マスターこそ、お疲れ様でございます。そして、おめでとうございます」

 俺達は互いに、労いの言葉を掛け合う。すると、カノンは拍手をした。

「ありがとう。

 ーそれで、通信の準備は?」

「既にセリーヌがセッティングを完了しております」

 俺は、変装しながら立ち上がり『一応』確認する。勿論、何の問題もなかった。

「…いや、ホント助かるな」

「ええ。有難い事です」

 新たなクルーを称賛しつつ、俺達はシートルームを出る。直後、通信ルーム前の『通路』に出た。

「じゃあ、『後は任せた』」

 そして、俺は彼女に『ロストチップ』を渡した。…新たな座標の解析は勿論、『例のモノ』を生み出して貰う為だ。

「お任せ下さい。それでは、失礼します」

 それをそっと受け取った彼女は、一礼し直ぐ近くのドアに入ったので俺も通信ルームに入った。

「ーお疲れ様です、キャプテン・プラトー」

「お疲れ様です、マスター・プラトー」

 すると、中にはさっき分かれたばかりの女史とセリーヌが居た。

「お疲れ様です、キャプテン・クルーガー。

 セリーヌ、セッティングありがとな」

「勿体ないお言葉…」

「フフフ…」

 セリーヌに労いの言葉を掛けると、彼女は非常に嬉しそうにした。そのやり取りに、女史は優雅な微笑みを浮かべる。

「(…『同性ファン』で真剣に与えられた役割を果たしてているからか、まるで自分の船のクルーみたいに思っているんだろうな。)

 ーセリーヌ、繋げてくれ」

「畏まりました」

 とても心地よい空気だが、俺は気持ちを切り替えてオーダーを出す。すると、直ぐに老師と大将がモニターに映し出された。

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