ーSide『ライト』
「ーえ?『皆』で開けちゃいましょうよ」
何とかゴールに入った右ルート攻略メンバーは、左ルートと同じように複数のトレジャーボックスに困惑していたが、やがて『誰が開けるか』について考え出す。…すると、直後アイーシャが思い切った提案をした。
「…いや、どう考えても『足りない』だろうよ……」
当然、ジャスティンは呆れたようにツッコミを入れる。しかし、彼女は引かない。
「いや、『1つに1個』とは限らないと思いますよ?」
「…っ!…いや、だとしても『手掛かり』は圧倒的にー」
「ーそんなの『分からない』じゃないですか」
尚もネガティブな意見を出す彼に、彼女は何故か『自信満々』に返した。…そして、ふと彼女はメンバーを見る。
「1つ聞いてみたいと思っていたんですが、皆さんは『秘宝』は『どんなモノ』だと思います?」
『………は?』
「「……」」
唐突な質問に、メンバーは困惑した。…その中で、イアンとニールは直ぐに考え始める。
「…いや、そんなの誰も分からないでしょ……」
「…だよねー。『今まで見つかった手掛かり』にも、ヒント的なモノはなかったと思うし…」
リーサとホムラは、真っ先に『分からない』と返した。
「…キミの所のキャプテンさんは、なんか掴んでたりしないの?」
「…うーん、どうでしょう?…ただ、お姉様は『-秘宝-は私が今まで集めたあまたの美しいモノよりも、遥かに勝るモノでしょう』と言ってましたね」
そして、アンリはルイゼに聞いてみるが彼女は『はっきり』とした答えは出せなかった。…だがー。
「ー…あ、『そういう事』ですか」
「…流石、お姉様だね」
『……?』
『……っ!』
そのやり取りを聞いたニールとイアンは、ハッとした。…しかし、男子陣はピンと来ていないようだったが女子達は少し遅れて『理解』し、揃ってアイーシャを見る。すると、彼女はしっかりと頷いた。
「…え?なんか、女の子組みだけ分かってね?」
「…確か、マダムのコレクションて『いろいろなモノ』があったよな?」
「…ああ。…『小さなモノ』から、マダムの『拠点』でもある……え?……えっ!?」
「…マジで?」
『……』
そのやり取りの最中、ようやく男子達も質問の『答え』が分かった。…そして、女子達のように彼女を見る。
「…そう。少なくとも『秘宝』は、『かなりのサイズ』だと考えています。
…そんな『秘宝』に至る『手掛かり』は、今まで『途轍ない数』見つかっています。
けれども、未だ誰も発見出来ていないんですよ。
ー私は、単純にまだ『手掛かり』が足りないんだと考えています」
『……』
「…確かに、そう考えられるかも知れないが……。
…1度に『大量』に見つかったというデータは、過去に『1度』としてないんだ。
…流石に、『考え過ぎ』だと思うぞ?」
「でしょうね。私も、そこまで『楽観的』ではありませんし…幸運体質とも思えません」
すると、彼女はその言葉を否定はしなかった。
『……?』
「ですが、何も『まだ見つかっていない場所』だけが『アタリ』とは限らないと思いますよ?」
『……??』
その言葉に、ますますメンバーは困惑した。
「…っ!そういえば、お姉様はこうも言っていましたね。
ー『もしかしたら、-アタリ-を追っているだけでは-秘宝-にはたどり着けない…かもしれない』と。
なので、我々は時折過去の『アタリ』の場所を軽く調査しているのです」
『……っ』
「…つまり、我々には『そうした手掛かり』が配布されるという事ですか?」
「だと思います。
ーそもそも、何で『こんな事』を言い出したのかと言うとですね…実は、『此処のオリジナル』には私達の『祖母』も参加してたんです」
『…っ!』
「マジか…」
「…初耳だねー……」
「まあ、『いろいろ』な事情で『初代キャプテン・プラトー』が単独で攻略したって事になりましたが…。
…で、『祖母』の残したログブックには『ー今思えば、-あそこの管理者-は非常に粋な計らいをしてくれたんだ。だから、私達ハンターは-秘宝-に一歩近付けたんだ。』という記述があったんです。
…つまり、『何かしら』入手しているはずなんですよ。でなければ、こんな風には記録しないと思います」
「…そうだったのか。…あれ?て、事は最初から『知って』たのか?」
「…いえ。…『プレシャス』同様『最後のルーム』についての記述はありませんでした。
ーその代わりに、『今回誘ってくれた奴と-約束-をしたので書かない。
…もし、今-お前さん-がこれを読んでいるのなら自分で答えを見つけてみる事だ。
ーその方が、きっと-面白い-』とね…」
彼女は、懐かしむように語るのだったー。
○
ーそして、右ルートでも左ルートでも全員で7つのボックスを開けた。すると、中には全員分の『証』が入っているた。…お見事。
『…素晴ラシイ。…非ノ打チ所ノ無イ完璧ナ-答エ-デス』
メンバー達に称賛の拍手を送ろうとしていると、隣を歩く『管理者』は惜しみない拍手と称賛の言葉をメンバー達に送った。
「ええ。…どうですか?彼らは、アナタの『お眼鏡』にかないましたか?」
『勿論デストモ。
ーアノ方達ニナラ、-モウ1ツノ手掛カリ-デアル-ファインドポイント-ヲ託ス事ガ出来マス』
彼女は微笑みながらそう言い、別のウィンドウを展開し何らかのオーダーを出した。…というか、何で彼女は『真実』を知っていたんだろうか?もしかすると、これもまた『特殊な出自』に関係しているのか?…お。
『ー…良し。……サテ、ソレデハイヨイヨ-貴方ヘノ最後ノ質問-ヲ始メマショウカ』
また新たな疑問が生まれた時、ウィンドウの向こうではメンバー達が何処かに転送される。
多分、『ファインドポイント』…すなわち、『過去に-手掛かり-が見つかった座標データ』が記録されたデータチップの受け取り場所に転送されたのだろう。…それを確認した彼女はふと足を止めてこちらを向き、先程までの柔らかい表情から非常に真剣な様子に切り替わりそう質問して来た。
『―貴方ハ、何ノ為ニ-秘宝-ヲ求メルノデスカ?』
「…っ!(…また、『ファン歓喜不可避』なシチュエーションだな……)」
その質問に、俺は興奮する。何故なら、『この問いかけ』はホロムービーは勿論劇にもなった超有名なシーンだからだ。
「(…ホント、良い『ファン』だよな~。)そうですね。理由は『2つ』あります。
1つは、『祖父の願い』を彼に代わって果たす為。…アナタも知っていると思いますが、祖父は失った記憶を取り戻す為『生まれた場所』を探していました。
…ですが、結局その願いは『生まれながらの枷』によって道半ばで諦める事になりました。
だから、私は『祖父の生まれた場所』に行きその光景を『星』となった祖父に伝えたい。…そう思ったから『あらゆる願い』を叶えるとされる『秘宝』を探しています」
『………』
『1つ目の理由』を言い終え一旦言葉を切るが、彼女は真剣な表情を崩さず無言だった。
なので、俺は直ぐに続ける。
「もう1つは、非常にシンプルです。
ー『秘宝』がどんなモノなのか、知りたいから探すんですよ」
『…っ』
「だって、未だ銀河中の人達を惹き付けそして探し出そうとしているんですよ?どんなモノか、気になるじゃないですか」
『2つ目の理由』に彼女は表情を崩したが、俺はそのまま心底ワクワクしながら語る。
『…-マサカ、自身ノ出世ヨリ知的好奇心ガ勝ルトハ……-。…今漸ク、-託シタ方-ノ心情ヲ理解シマシタ』
すると、彼女は『まさに答えを聞いた存在』のセリフを引用しつつ…いわば、『同業者』ともいうべきその存在と同じくぽかんとした表情になっていた。
勿論、俺が『祖父と同じ答え』を『本気』で言っているのを『理解』しているからだろう。
『…流石ハ-後継者-デスネ。
ー合格デス。…デハ、早速-コチラ-ヲオ受ケ取リ下サイ』
なんか、彼女は凄く感心しながらクリアを宣言した。そして、スーツのポケットから例のケースを取り出しこちらに差し出した。
「ありがとうございます。……」
ケースを開けると、中には『7』と刻印された最後の証が入っていた。…長かったな。
『…ソレデハ、続キマシテー』
ケースを閉じ、一旦ポケットにしまうと彼女はまた何らかのオーダーを出した。…直後、彼女と俺の間にコンソールが出現した。
『ー我々ガ長年守ッテ来タ、-秘宝-ニ到ル-手掛カリ-ヲ託シタイト思イマス。
…オ手数デスガ、-全テノ証-貴方様自ラセットシテ下サイ』
「分かりました」
彼女は少し申し訳なさそうに言って来るが、俺は気にせず…むしろより一層ワクワクしながらコンソール上の『番号の振られた7つの窪み』に『証』を順番に1つずつはめていく。
ーそして、最後の『証』をはめるとコンソールは床に収納され代わりに厳重に保管された『ロストチップ』が出現した。
『ーロック解除』
彼女がオーダーを出すと、『シールドガラス』は消えた。それを確認した彼女は、そっとチップを手に取り…唐突に俺に跪いた。