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Seven Mystery⑦-導き出した答え-

 ー…お、どうやら右ルートは無事にクリアしたようだな。

 真ん中のルートを歩く俺は、エアウィンドウに映し出される『結果』にホッと胸を撫で下ろした。…ちなみに、このウィンドウは俺が展開したモノではなくー。

『ー…ドウヤラ、彼ラノ実力ヲ過小評価シテイタヨウデスネ』

 すると、俺の隣を歩く旧式のガイノイドが…正確には『中に居る-管理者-』がぽつりと呟いた。…そう、エアウィンドウはこのヒトが展開してくれているのだ。

『ーせいやっ!』

『良しっ!今だっ!』

 そして、少し遅れて左ルートでも状況は『クリア』する。…勿論、女史と『プラトー』を中心としたチームなのでゲートキーパーの『完全無力化』がなされていた。

 …ホント、右ルートが『最高のチーム』なら左ルートは『最強のチーム』だよな……。

『ー…ドウナッテルンデスカ?ゲートキーパーニハ、-同志-ノ協力ノ元彼ラノデータヲ組ミ込ミバトルシュミレートヲサセテ来タノニ……』

 若干引いていると、彼女も『あり得ない』といった様子でコメントしていた。

 ーさて、何で彼女と歩いているのかと言うと…実は、『これ』が俺への『試練』なのだ。多分、直接『俺という人間』を観察するのが目的なんだろう。

『…貴方ハ、ソノ理由ヲ知ッテイマスカ?』

 すると、彼女はこちらに何度目かの疑問を投げ掛けて来た。さっきからこうして質問されているが、内容はホントにこういった物ばかりだ。

「…ああ、そういえば管理者さんは知らないんでしたね。

『プレシャス』では、最近『ウチの船』で実戦形式のトレーニングをするのが流行ってるんですよ。

 シングルは勿論、男女分、若手ベテラン分、対軍人、対大型エネミー等様々な組分けや様々なフィールドで。

 それが、メンバーの実力の底上げになっているんですよ」

 その疑問に、俺は一切偽りのない解答を返した。…まあ、既に正体がバレているのもあるが『試練』なの正直に答える事にしている。

『…ハイ?……ア、ソウイエバ既ニ貴方ノ味方トナッタ-同志-達ハ-夕方以降ハリンクシナイデ-ト言ッテ来テマシタネ。

 ナルホド、コウイウ理由ガアッタノデスカ』

 それを聞いて、彼女は納得したようだ。…なんか、凄く互いに配慮してるよな。

 ホント、まるで人間のようだ。…そして、そんな存在を生み出す『副産物』って一体?

『試練』なのにゆったりとしているせいか、いつも以上に『謎』について考える。


『ー…確カニ、不思議デスネ。…一体、-ドンナ秘密-ガ隠サレテイルノデショウカネ?

 …オット、向コウハソロソロー』

 ふと、彼女はそんな俺を見て呟いた。…やっぱり、『テリトリー』だからか思考を読まれ易いのかな?

 一方、彼女は2つのウィンドウを注視した。

 ーどうやら、2つのグループは正真正銘『最後の関門』に挑むようだ。…まあ、彼らを『信じる』としよう。

『何が待ち受けているのか』を知っている俺は、じっとウィンドウを見つめたー。




 ◯



 ーSide『レフト』



「ー…あれは……」

『………』

 無事、ゲートキーパーを無力化した左ルートの面々は悠々とゴールしていく。…すると、そのルームの中心には『7つのボックス』がいかにもな台座の上に乗っていた。

 …それを見たクルーガーは、困惑の顔色を浮かべた。

「…お姉様、どうかしましたか?」

「…困りましたね。『あんなモノ』記憶にありません」

『…っ!?』

 彼女の言葉に、メンバーは驚愕する。何せ、『プレシャス』の大ファンである彼女が『見覚え』がないというのだ。驚くのも無理はないだろう。

「…となると、あれは『プレシャス』とは関わりない事か?」

 セドリックは、直ぐに『プラトー』に確認した。

「…いや、そう判断するのは早計だと思います(…そうか、だから『此処の結果』を初代様は教えて下さらなかったのですね。そして、『該当シーン』も当たり障りのないモノに…。)

 …実は、『此処のオリジナル』の情報は完璧では無いんですよ。…何せー」

 聞かれた当人は、その予想を否定する。…その内心では、『過去のやり取り』の真意をようやく理解しているのだった。そして、その情報を共有する。

「ー…っ。なるほど、通りで『心当たり』がない訳ですね」

「…何で、おたくのところの『初代様』はそんな事を?」

 クルーガーは納得するが、カルナはやや不満そうに聞いて来る。

「…それは、『答えが全部分かっていたら-面白くない-』からでしょうね」

「…『面白くない』?」

「…先程も言いましたが、此処は初代が最も攻略に苦労した場所の『コピー』です。

 けれど、それは『最も攻略を楽しんだ場所』と言い換えれる事が出来るんですよ。

 …だから、『後に-誰か-が似た場所』を攻略する時に『楽しんで』攻略して欲しくて敢えて『最後の答え』は記録に残していなかったんただと思います」


『……』

「…まるで、『こんな場所』があると知っているかのような考え方ね」

「…まあ、確かに『達成感』は半減でしょうね」

 理由がある程度分かったメンバーは、納得したようだ。…すると、クルーガーはパンと手を叩く。

「ーそれでは、『誰が開けるのか』決めましょうか?」

「ですね(…あれ?なんだか、『楽しそう』ですね?)」

 そう言う彼女の表情は、先程までの困惑した様子からまるで『彼』のようにキラキラと輝いていた。つまり、心の底からこの状況を『楽しみ』始めたのだ。

「…うわ、『ヤル気』に満ちたお姉様を見るのは『凄い久しぶり』ですね。…ならば、私達もー」

『ええ…』

 カルナをはじめ、付き合いの長いベテラン女性陣は、滅多に見られないその表情を見て同調するように『ワクワク』した顔になっていく。

「…やれやれ。『クールな攻略』を心掛けて来ましたが…今回は久しぶりに、『若い時』のようなハートで行くとしましょうかね」

『ああ…』

 その空気は、やがてベテラン男性陣にも伝播し彼らはまるで『若手』のような興奮感を顔に出した。

「……(ああ、やはり『この方達』は素晴らしい人達だ。この方達で構成される『プレシャス』ならば、いつか必ずー。……あ、ひょっとして?)

 ーでは、私は『左端』のを担当しましょうか」

 そんなメンバーを見た『プラトー』は、改めて『期待』を抱く。…その時、ふと『今まで』膨らませていた『仮説』とこの『状況』が、頭の中で上手い事混ざり合い『確信に近い予想』が生まれた。…だから、彼は自信を持ってトップバッターとして名乗りを挙げる。

「…っ!…理由は?」

「その前に1つ、皆さんに『ノベル』には書かれていない事をお話ししましょう。

 ー実は、『此処のオリジナル』を攻略したのは初代だけではないのです」

 セドリックの問いかけに、彼は『衝撃の前置き』を口にした。


「えっ!?そうなんですかっ!?」

 当然、大ファンのクルーガーは興奮の混じった驚きのリアクションを見せた。

『……』

「…っ。…失礼しました」

 すると、ベテラン達は揃ってぽかんとした。…なので彼女はコホンと咳払いをする。だが、その表情はキラキラしたままだった。

「ええ。確か、『ご同僚の方達』や『公にするといろいろと-障り-のある-有志-の方達』との共同攻略という形でした」

『…っ!?』

「…へあっ!?」

「…それは確かに、『気を付けて描写』しないといけませねぇ……」

 大まかな説明だけでかなり『ヘビー』な真実に、流石のベテラン勢も驚愕した。

「…で、大事なのは此処からなんですが。

 ーなんと、『全員』が『満足する結果』に終わったのですよ」

『……え?』

「…つまり、それだけの『手掛かり』があったという事?」

「いいえ。そこには『1つ』しかありませんでした。そして、それを手に入れたのは初代です」

『……?』

 カルナの質問に、彼は首を振る。そのせいで、メンバーは混乱した。

「…っ!なるほど、『そういう事』なのですね」

「…え?……え、本当に?」

「……ですが、そう考えるのが一番自然です」

『……』

 だが、クルーガーは『気付いた』。それに続くように他のメンバーも気付いていく。

「…ね?なかなかに『面白い答え』だと思いませんか?」

『……』

「ええ。…その上とてもー」

 彼の確認に、メンバーの驚きと『ワクワク』は更に高まり…クルーガーに至ってはとても美しい微笑みを浮かべるのだったー。

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