ーSide『ライト』
『ーっ!?クソッ…』
『…っ!?マジか…』
右ルートを進むメンバーは、今まさに『壁』に直面していた。勿論、『それ』はただの壁ではなく鋼鉄の巨躯だった。
そして、『それ』は身体から伸びる無数のマジックアームでメンバーを次々と拘束し天井からぶら下がる『ケージ』に閉じ込めた。
(…くそ、これで残るは俺を含めて8人。『あっち』はまだか!?)
段々と追い込まれていく状況に、ジャスティンの焦りは募らせながら反対側に居るメンバーを見る。
『ー…っ。…良し、-2段目-終了っ!」
『-3段目-お願いしますっ!』
その内の2人…イアンとルイゼは、フロートしながらタイル張りのような壁を上から次々『タッチ』していた。
当然、ただ闇雲にスイッチを押している訳でもなくきちんと『正解』しか押していない。
「ー次は、右は1、5、9、12、14っ!
左は3、7、9、13、18っ!…っ!」
その2人に、アイーシャは的確なオーダーを出していた。…何故なら、彼女が『最適任』だからである。
それは、単に『プレシャス』のファンだからという話しではない。
「ーっ。ナイスシュートッ!(…それにしても、恐るべし『ファン』だねー……。)」
「どうもっ!」
何せ彼女は、敵のマジックアームをショックガンで的確に撃ち抜きながらオーダーを出しているのだ。
…つまり、完璧に『答えを暗記』しているという事だ。
彼女の左サイドでマジックアームを捌いていたホムラは、称賛の裏側でその『愛情』に若干引いていた。
「ーっ!『シールド』、展開しますっ!」
そして、『3列目』の入力が終わり『4列目』に入る時…『ゲートキーパ』は残りのメンバーに差し向けていたマジックアームを一旦引っ込めた。
ーそれを見たニールは、予め床にばら蒔いておいた『シールド』発生装置をリモートで起動した。
「ー…っ!大丈夫だと分かっていても、ビックリしますね……」
直後、極太のポールのような形状の『ゲートキーパ』は上段から複数のショックビームを放って来た。だが、それらは全てシールドによって防がれた。
それを見て、アンリは冷や汗を流しながらコメントする。
「…ホント、『あの人』は良く1人でこれを何とか出来たよね……」
そしてリーサは、『初代プラトー』に畏怖を感じていた。…つまり、この状況もまた『プレシャス』のワンシーンに類似しているという事
だ。
「ーああ、ちなみに『オリジナル』では『ギミック解除』と『バトル』は別々のシーンとして描かれていますよっ!…どうやら『管理者』によって『ミックス』されたようですねっ!」
すると、『5段目』のオーダーを終えたアイーシャはすかさず『知識』と私見を口にした。
「…でしょうね」
「いくら『彼』が、『ハチャメチャ』な実力と『サポーター』を持っていたとしても流石…っ!?」
その言葉の途中、リーサはゲートキーパを見てぎょっとした。…何故ならー。
「ーっ!?嘘っ!『ファイナルパート』に飛んだっ!?」
直後、ゲートキーパが『短くなって』いるのを
見たアイーシャも驚愕する。…その姿は本来、ゲートキーパが『追い込まれた』際に見せる『最終形態』なのだ。
「…っ!…まさか、『ギミック解除』が半分越えたからかっ!?」
「可能性大ですっ!
ーニールさん、直ぐにシールドを解除して下さいっ!」
「…っ。了解ですっ!」
アイーシャのオーダーにニールは一瞬躊躇うが、彼女を信じシールドを解除する。
『…っ!?』
「…なっ……」
「…嘘だろっ!?」
『…ふぇっ!?』
『ね、姉さんっ!?』
「…っ!?ちょ、大丈夫なのっ!?」
「説明プリーズッ!?」
当然、地上のメンバーは勿論ケージの中に囚われたメンバーでさえも驚愕する。
「イアンとルイゼは、『作業』を続けてっ!
…それに、『大丈夫』ですよっ!…むしろ、『シールド』を展開している方が『危ない』んですっ!」
「…は?」
「…どういう……っ」
彼女の言葉に、メンバーは首を傾げる。…だが、そうこうしている内にゲートキーパは完全に『形態変化』を終え『1段』の状態になった。
「…『短く』なったとはいえ、それでもかなり大きいですね……」
「…小型の偵察船くらいはあるな……。…っ!」
メンバーは、尚も存在感を放つゲートキーパをじっと見ていた。すると、『それ』はゆっくりとフロートする。…そして、その場でクルクルと横回転を始めた。
「…あれは、何をしてるんだ?」
ジャスティンは、『6段目』の指示が終わったのを確認し彼女に質問する。
「『シールド』を探しているんですよ…。…そして、見つけた瞬間『破壊行動』に入ります」
「「…っ!」」
『『…マジですか?』』
「「…それでか……」」
「…なるほど。つまり、逆に言えば『それ』さえなければ『一応安全』という事ですか?」
アイーシャの語る理由に、メンバーは驚きつつも納得した。すると、慎重派のニールが念のため確認をする。
「ええ。…ですが、あくまでも『一応』です。
ー破壊行動に入らなくとも、『あの形態』自体相当に厄介です。…っ!」
肯定はするが、その『強さ』を良く知る彼女は注意を促した。…そして、ちょうどその時ゲートキーパーは『検知』を止めた。
「…皆さん、いつでも動けるように。
ーそれと、後ろの2人はここから『最優先ターゲット』になると思うので今まで以上にヘイト管理に気を付けて下さい」
『『っ!?』』
『分かったっ!』
彼女が忠告した直後、ゲートキーパーは更に浮遊し真っ先に『ギミック解除』担当の2人の元に向かった。
「ー行かせるかっ!」
「その『性質』、利用させてもらいましょうっ!」
すると、ジャスティンとニールはゲートキーパを挟み撃ちにするように取り囲んだ。そして、ニールは言葉の通り『シールド』を自分の下に発動させる。
『ーシールド検知、デストロイ開始』
次の瞬間、ゲートキーパーは警告音を発し行動の切り替えを宣言した。
「…っ!あれは、『エネルギーネイル』っ!?」
「マジか…」
ゲートキーパーは、下部から大量のマジックアームを出したのだが……先程までとは違い全ての指先に鋭利な『エネルギーネイル』が展開していた。
ーそして、それらは全てシールドに向かって伸びて行く。
「(…だが、これで注意は…いや、待て。)。…せいっ!」
ニールは油断せず、更に3つのシールド装置を味方の居ない3方向に思い切り投げリモートで起動する。
ー直後、最初のシールドはあっさりと破壊された。
『ーシールド再検知、デストロイ続行』
だが、シールドがまた発生した事でゲートキーパーはその場に留まり続け…彼の懸念通り、側面と上面からもマジックアームを出した。
「…ナイス判断っ!それじゃー」
『ー…良しっ!-7段目-完了っ!』
『-ラスト-、お願いしますっ!』
そして、ジャスティンはそのタイミングでゲートキーパーに攻撃を仕掛けた。…一方、ギミック解除担当の方はいよいよ最後の段に突入した。
「最後は、多いよっ!
ー右が、1、3、5、7、9、11、13、17、19、23っ!
左が…っ!」
オーダーの最中、彼女はゲートキーパーが床に落ちるのを確認し……『その場所』から全速力で待避する。
『ーっ!?アイーシャさんっ!どうしましたっ!?』
「大丈夫っ!
ーアンリさんっ!ホムラさんっ!リーサさんっ!『5カウント』後に、私の居た場所に一斉攻撃をっ!」
「「「…っ!了解っ!」」」
3人は戸惑うが、彼女を信じて行動を開始する。
「ーカウント5ッ!」
5、4、3、2、1、アタックッ!」
そして、ホムラのカウントの後3人は『そこ』に向かって攻撃を放った。
ー直後、『そこ』から巨体なエネルギー体が飛び出したが3人の攻撃によりそれは破壊される。
「…『エネルギードリル』まで……」
『それ』は、エネルギーネイルと同じくドリルのフォルムをした『エネルギー体』だったのだ。
「…そうか。床に落ちたのを利用して、『下』からあれで堀りすすんだのか……」
「…いや、どんなプログラムをインストールせれてるのよ……」
「ー大丈夫かっ!?」
「ええっ!」
3人は、ゲートキーパーの性能に驚愕する。…そんな中、ジャスティンとニールは駆け付け無事を確認する。
勿論、アイーシャは笑顔で応えた。
「…すみません。まさか、『落下後』の対応があそこまで迅速だとは……」
「…てか、教えてくれよ……」
ニールは申し訳なさそうにしているが、ジャスティンは文句を言った。
「…実は、『空中に居られる』たら『手が付けられなく』なっていたので結果オーライなんですよ。
だから、あえて言いませんでした。すみません」
「…っ!」
「…はあ。まあ、それならしょうがないな」
『ー危険判定。リミットブレイク』
『ーっ!?』
そんなやり取りをしていると、ゲートキーパーは先程とは違う警告音を出し床に突き刺していたアームを切り離した。…そして、下部から獣のような4つの足パーツを出した。
『ー皆さん、-落下-に備えて下さいっ!』
『ーそして、全速力で-ゴール-にっ!』
そして、ほぼ同じタイミングでルイゼとイアンが全体通信でメッセージを送った。
『ーっ!うわっ!』
直後、メンバーを捕らえていたケージと行く手を塞ぐ『壁』も消えていた。…要するに、2人は『それぞれ1つずつ』解除していたのだ。
『ー捕虜解放確認。アサルト』
次々と床に着地し、奥に逃げるメンバーを見たゲートキーパーはブースターを展開した。
「ーっ!逃がさない気かっ!」
「大丈夫ですっ!
ー『男性方』は、『エネルギードリル』に集まって下さいっ!そしてー」
『ーっ!?…応っ!』
「「了解っ!」」
焦るジャスティンに、アイーシャは自信満々に告げる。…勿論、彼らはその言葉を信じてそこに向かい『オーダー』を遂行し始める。
ー直後、ゲートキーパーは高速で駆け出す。
『ー来たぞっ!』
『引けぇぇぇぇぇぇーーーーっ!』
『おりゃあああーーーっ!』
それに合わせて、男性メンバーはスクラップになった『ドリル』を左右から渾身の力で引っぱる。…すると、ゲートキーパーは勢いを殺されー。
『ーしゃあっ!』
『今だっ!』
勢い良く、『反対側』に吹き飛ばされた。これは、アーム自体に弾性の性質があるからだ。
そして、その隙にメンバー全員が安全に『ゴール』に入るのだったー。