目次
ブックマーク
応援する
いいね!
コメント
シェア
通報

Seven Mystery⑦-ノーマルワールド-

 ーSide『ライト』


「ー…っ。あれは……」

 ガイドに従って、右ルートに入ったアイーシャ達は通路の奥に『トレジャーボックス』を見つけた。

「…どう思う?」

 イアンは、先頭を進むジャスティンに聞く。ちなみに、彼は右ルートのリーダーを任されている。

「…『トラップ』の可能性が高いが、かといってスルーも出来ないだろう。

 ーニールさん、リーサ」

「なんでしょう?」

「何?」

 彼は、後ろにグループ後方にて『ガード』をしているニールと真ん中辺りにいるリーサを呼んだ。

「とりあえず、リーサは『アレ』をダッシュで取って来てくれない?

 そして、ニールさんは『シールド』を彼女に貸与して下さい」

「…っ。任せて」

「分かりました。…良し。

 リーサ嬢、こちらを」

 オーダーを聞いたリーサは、不敵な笑みを浮かべる。一方、ニールは年下の彼のオーダーに文句なく頷いて複数の『シールド』をリーサに丁寧に渡した。

「ありがとうございます」

「起動マニュアルは、分かりますね?」

「ええ。

 …それじゃあー」

 彼女は、それをパイロットスーツのサイドポケットにしまいブーツタイプの『アクセルガジェット』を起動した。

「ーカウント、3」

 3、2、1、GO!」

 直後、彼女は『トレジャーボックス』に向かって素早く駆け出した。…だが、その途中特に妨害もなく難なく彼女は『そこ』にたどり着いた。

「…アレ?なんか、拍子抜け~?」

「…だな。…っ!もしかして、『アレ』を取ったら本番なんじゃね?」

 ホムラは呑気な言葉に、アンリは同意した。…だが、直ぐに『テンプレ』的な直感が頭に浮かんだ。

「…ありそうだな。…全員、『スタンバイ』っ!」

『…っ。了解』

 その予想を、ジャスティンは否定せずメンバーに直ぐに動けるように言った。勿論、彼らは直ぐに構える。

 そうこうしている内に、リーサは『モノ』を開いた。…その瞬間ー。

「ーっ!?…どうやら、『予想』は当たったみたいですね……。

 後ろから、『巨体な球体』が転がって来てます…」

 直後、自前のゴーグルデバイスで『警戒』をしていたルイゼは『嫌な予感しかしない何か』を察知しその情報を青ざめた様子でリーダーに伝える。

「…っ!

 ー全員、走れっ!」

『おおっ!』

 当然、メンバーは全速力で走り出した。…それからさほど時を置かずしてルイゼの警告した『巨体な球体』の迫る音が、彼らにも聞こえて来た。


「ー…で、どうするの?」

「…そのボックスには、何が入ってたんだ?」

「…これよ」

 聞かれたリーサは、素早く『トレジャー』を見せる。…それは、箱のサイズに見合わない程小さな『機械』だった。

『っ!そろそろ来るぞっ!』

「イアン、ルイゼ、分かるか?」

 後ろでは、誰かが接近を報告する。だが、彼は慌てずにメカニックに意見を聞いた。…するとー。

「ーっ!イアンさん、これ『リモコン』じゃないですかっ!?」

「…言われてみれば……。

 ならー」

 イアンは頭に掛けていたゴーグルを装置し、素早く周囲を見渡した。

「…っ!ルイゼ、右の柱にそれを使って」

「了解ですっ!」

 直後、イアンはルイゼにオーダーを出す。そして、言われた通り彼女が『そこ』にリモコンを向けスイッチを押すとー。

『ー来たっ!』

 直後、目の前の『壁』は消え新たなルートが姿を現した。だが、同時に巨体な鉄球も彼らの居る通路に高速で進入して来る。

「全員、走れっ!それと、イアンとルイゼは『探して』くれないかっ!?」

『おおっ!』

「「了解っ!」」

 当然、彼らは再度全速力で走り出した。…しかし、まるで加速装置でもついているかのように球体は平坦な道でもスピードを落とさず接近して来た。

「ー…っ!ルイゼッ!

 ー左方向にリモコンをっ!カウント、5ッ!」

 誰もが、『マズい』と思ったその時。『可能性』を探していたイアンはルイゼに声を掛ける。

「はいっ!」

「5、4、3、2、1、照射!」

 イアンのカウントの後、ルイゼはリモコンを左の壁に向けて使った。直後、一本道のルートの左側に細い脇道が出現する。

「飛び込めーっ!」

『…っ!』

 メンバー全員は、全速力で脇道に飛び込んだ。直後、彼らの目の前を鉄球が高速で通過した。

「……ぁっぶねー」

「ギリギリでしたね…」

『……ふぅ~』

 アンリとニール、それから他のメンバーは心底ホッとしていた。すると、リーサがアンリに近く。

「これ、返しておきますね」

「ああ。ありがとうございます」

 彼女は、借りていたシールドを返しそれを受け取った彼は素早くシールドを収納した。

「…良し。それじゃそろそろ、攻略を再開しよう」

『了解』

 ジャスティンがそう言うと、床に腰を下ろしていたメンバーは立ち上がり彼の後ろについて行った。



 ◎



 ーSide『レフト』



「ー…おや。どうやら、また行き止まりのようですね」

 攻略開始から、いくらか経った頃。『プラトー』を中心とする左ルート攻略チームは

 、何度めかの行き止まりにぶつかっていた。

「…となると、また何らかの『ギミック』を解除する必要があるという事ですか」

『……』

 セドリックが行き止まりの壁に近付きながらそう言うと、他のベテラン達も直ぐに動き始めた。

(…ふむ。どうやら、『ノーヒント』のようですね)

「…どう?何かあった?」

 そんな中、『プラトー』は天井やら周囲の壁を確認し…結果『ハイレベルのギミック』だと判断した。

 すると、近くに居たカルナが聞いて来たので彼は首を振った。

「…残念ながら、『特に変わった所』は見られません。

 女史はどうですか?」

「…そうですね。

 …もしかすると、道中で『何か』があったのかも知れませんね」

「…っ。…ですがお姉様。私や他の方も、一応気を配っていましたが……」

「ー…『それらしい物』は見ていませんね……」

『……』

 彼女の言葉に、探索をしていたセドリックや他のメンバーも同意した。

(…どうやら、『ノーヒット』ですか……。…となると、『道中説』が濃厚になって来ますね。

 ーつまり、今まで抱いていた『懐かしさ』は勘違いではなかったという事です)

 …実は、この左ルートに入った時彼は『見覚え』を感じていたのだ。勿論、彼自身『此処』に入るのは始めてだ。

「ー…そうなると、『かなり大きなスケール』で考える必要がありますね」

 彼は、瞬時に『正確なメモリー』を思い出し念のため『遠回り』な説明を始める。


「…と、いうと?」

「…『初代』が遺したデータは、実に様々です。

『誰と会ってどんなやり取りをした』とか、『何処で何を食べた』とかのダイアリー的なモノや、『何処で-手掛かり-を見つけた』とか『何処で-バカ-を成敗した-』とかのログブックまで。

 ー中には、『印象に残っている-建造物-の詳細な-マップ-』なんてモノもありましたね」

「…っ!…『ファン』失格ですね」

 私とした事が、『頭から抜け落ちて』いたようです」

 すると、女史はハッと『何かを思い出し』…少し落ち込んだ。

「…え?…え?」

『……』

「…いや、直ぐに『思い出せる』時点で十分スゴイと思います」

 滅多に見られないであろうその様子に、カルナをはじめベテラン女性ハンター達は困惑する。…勿論、彼は直ぐにフォローを入れた。

 というか、『地の文』での解説を頭の中できっちり『形』にしている時点で相当の『愛好家』なのは言うまでもないだろう。

 だから、彼は若干嬉しくなっていたのだ。…そこまで熱心にそして事細かに、『自分達のログ』を見てくれている『ファン』が居る事実に。

 ーそしてきっと、この場にいない『彼』も同じ反応とフォローをするだろう。だから、彼は直ぐに『行動』出来たのだ。

「…っ。お気遣い、ありがとうございます」

 彼の思いが伝わったのか、彼女は元気を取り戻した。


「…えっと、つまり『プレシャス』に類似するシーンがあるという事ですか?」

「ええ。

 ー現在、我々が進んでいるこのルートはかつて『初代』が『ハンター人生の中で最も苦戦した-ロストビルディング-』の構造と極度に類似しているんですよ」

『ーっ!?』

「…あの、『プラトー・一世』が……」

「…そこまでのモノだったとは……。…なるほど、通りでギミックが『アンティーク』仕様だった訳ですか」

「でしょうね。

 ーただ、実際のは『もっと古いモノ』だったそうですが」

「…『古代文明』のモノって事?」

「…そこまでは(…実際、『データライブラリー』には『該当するモノ』がなかったんですよね……)」

 彼は明言を避け、行き止まりの壁に近く。…その壁は周囲の壁と同じようにタイル張りのような表面だった。

「…さて、話しを戻しまして『正解』を入力しましょう」

「あの、キャプテン・プラトー。

 その役目、私が果たしても宜しいでしょうか?」

 彼は話しのコースを戻し、答えを入力しようとする。その時、ふと女史が名乗り出た。

「分かりました。お願い致します」

「ありがとうございます。

 ー確か、その『ロストビルディング』の構造はちょうどこの壁のように巨体な『四角』…すなわち、『立方体』の集合体だったと記憶しています。…つまりー」


 ーそう言って女史は、壁の一番下の真ん中辺りの『四角』に触れる。…すると、その部分はまるでスイッチのような動作をした。

『……っ』 

「『スタートポイント』はココという訳です。…そしてー」

 そこから女史は、淀みなく『アタリ』のスイッチを押していく。…奇しくもそれは、彼らが通って来た『ルート』だった。

「…と、このように私達の通って来た『ルート』こそ『正解』なのです」

 そして、彼女が最後のスイッチを押すと行き止まりの壁は床に収納されるのだったー。

この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?