その問いに俺は頷く。
「ああ。…この間聞いたと思うが、『宙域実験プラントS-77』が最後の『試練』の場所だ」
…実は、昨日『試練』が終わり『証』を入手せた直後『そこから直接』通信が来たのだ。
「…やっぱり、あそこだったんですね」
「そういえば、この間の平日休暇の日に『プレシャス』の『臨時ミーティング』が行われたのでしたね。…確か、その際に『予想』がされたと彼女から聞きましたが……」
「…正直、そっちより『メンバーシップ』のラウンジで『クルーガーお姉様』を始め『有名人達』に『オゴッて貰った』って事の方が、私達には重要だけどね……」
『……』
「…アハハ……」
「ハイハイ、羨ましいのは分かりますが『圧』を掛けてはいけませんよ」
先輩達や同級生達の『圧』混じりのジト目に、リコは苦笑いを浮かべた。…すると、フェンリーさんが『笑顔』でフォローを出す。
『…はーい』
すると、彼女達は素直に聞き入れた。…『慣れてる』なぁ。流石は、『リーダー』やってるだけはある。
「はは。…もうすぐ、こんな風な『いつもの光景』がまた見れるのですね」
『……っ』
そんな彼女達のやり取りを見ていたハミルトン先生は、ポツリと感慨深い様子で言った。
「ええ。
…少し気が早いですが、完治おめでとうございます」
『…おめでとうございます』
「ありがとう。
…ならば、私もブライト先生にお礼を。
改めて、私の代理を務めて頂き本当にありがとうございます」
「どういたしまして」
その時、ハミルトン先生は握手を求めて来たのでガッチリと握る。すると、先生も力強く握り返して来た。…うん、筋力もほとんど元通りになっている。
「…あ、そうか。…ブライト先生は、そもそも『手掛かり』を探しに来たんだったね。そして、ハミルトン先生が復帰になるって事は……」
『……』
誰かがそれを言った途端、リコとフェンリー以外のメンバーはシュンとしてしまう。
「なに、『一生の別れ』って訳じゃないんだ。運が良ければ、また何処かで会えるさ」
『…はい』
「ハハハ、たった1ヶ月で此処までの信頼を勝ち取るとは。…正直、少し『勿体ない』気がします」
ふと、ハミルトン先生はそう言った。…まあ、『教師に向いている』と言いたいのだろう。
「…そういえば、なんやかんや聞きそびれていましたが……」
「…多分…ううん、これが『最後のチャンス』だろうから」
「後悔は、したくないかな…」
すると、彼女達は思いを言葉にしていく。…そうだな。今まで協力して貰ったから、『答える』のがスジか。
『……どうして、ブライト先生は-秘宝-を求めているんですか?』
「「……」」
リコとフェンリーさんも、言葉には出さなかったが目で聞いて来た。
「…俺が『秘宝』を探すのはー」
俺は、嘘偽りのない『答え』をハミルトン先生と彼女達にだけ聞こえる音量で話した。
『ー……』
それを聞いて、ハミルトン先生と彼女達はぽかんとしていた。…まあ、『大層なモノ』を予想していたのだろう。
「…なんか、『意外』と言うか……」
「…実に、『兄さんらしい』ですね」
少しして、フェンリーさんとリコは真逆の感想を述べた。
「…なるほど。『そんな目的』があるのなら、『実際に手に入れて』みたくなりますね」
「でしょう?」
一方、ハミルトン先生は俺の答えに『納得』した様子になるのだったー。
○
ーSide『管理者』
ーイデーヴェスの宙域を漂う、大量の『実験プラント』。その内の1つ、『S-77』…『ノーマルワールド』のマザーコンピューターは役目を終えてから長い年月経つと言うのに、未だに稼働していた。
勿論、『管理者』が動かしているからだが…。
『ー観測レーダーニ反応アリ。-中規模船団-ガ接近シテイマス。
-チェック-開始。……確認完了。船団内ノ人間全員、-証-ヲ所有シテイマス』
(…とうとう、来ましたか。…実に、『長かった』)
報告を聞いた『管理者』は、ようやく『役目』が果たせる事に『喜び』を感じる。…それだけの時間、『管理者』は待っていたのだ。
『船団、後8分で到着する模様。発着ゲート、オープン。誘導ライン、照射』
外部カメラの映像では、2本の光の『ライン』が船団の方向に照射される。それを確認した船団…『プレシャス』はひと船ずつ迅速かつ丁寧にラインの中を徐行し始めた。
(…本当に、『今までの-資格なき-人達』とは随分と違いますね。…『礼節』、『実力』は勿論、『とてもクール』です)
『今まで』とは違う『彼ら』の姿勢に、『管理者』は非常に好感を抱いていた。…正直な所、到着と同時に『託しても』いいぐらいだと『管理者』は考えているが、『友人との約束』に従い『管理者』は『試練』の準備を『最後まで』やりきった。
『ー船団、プラント入場開始』
(…おや?『かの船』の姿が見えませんね)
船団のプラント入りを見守っていた『管理者』は、その中に『最注目存在』であるカノープスが居ない事に気付く。
(…『彼』が来ていない筈は……。…まあ、何方かの船に乗っていると考えるのがー)
『ー報告。-超大型船-接近。コノプラントゲートデハ通行不可デス』
『管理者』がそんな予想をしていると、警告のメッセージが表示された。…同時に、カメラが切り替わる
(ー……あれが、『ドラゴン』の全貌ですか。…近代の戦艦より一回りは小さいですが、それでも……。…ですが、何故『コアシップ』で来ないのでしょうか?
…まあ、とりあえずー)
『管理者』は、システムを通してメッセージを送る。すると、『ドラコン』から一隻の小型船が出て来た。
(…あれは、確か宙域用の『ウマ』ですね。……もしかすると、彼は『警戒』しているのかも知れませんね)
地上で起きていた『トラブル』は、当然『管理者』も認知していた。…だから、『もしもの時の保険』として『万全の状態』で来たのだと予想した。
(…やれやれ。やはり、『秘宝』には『トラブル』が付き物ですね。
ーだからこそ、『彼女』は『最後の関門』として『あれ』を考え出したのでしょう)
『ー小型船、入場完了。ゲート、閉鎖。
続いて、-分散案内-ヲ開始シマス』
『管理者』が『自分』のモデルとなった『友人』の事を考えている中、カメラの向こうで『プレシャス』メンバーが続々と船からから降りて来た。そして、突如出現した『案内』に若干戸惑うが、直ぐに中心人物っぽい女性が指示を出し『グループ』分けをしていく。
その後、『プレシャス』は複数のグループに別れて3つのルートに進入して行った。
(…おっと。
ーそれでは、『第7の試練』を始めるとしましょう。
果たして、彼らは『どんな答え』を出すのでしょうか」
多分、この『管理者』に顔があるならきっと『ワクワク』していただろう。そのくらい、『管理者』は感情が昂っていた。
(…さて、まずは『どちらのグループ』から見ましょうかね?)
『管理者』の前には新たに3つのウィンドウが展開し、右には『証』の数が少ないグループ。
左には、『証』がそこそこあるグループが表示されていた。
…そして、真ん中には全ての『証』を持つ『ブライト』が表示されているのだが『管理者』は左右のどちらかかで悩んでいた。
ーつまり、『彼』は最後に見る…いや、直接『答えを聞く』つもりなのだろう。
(…やはり、『まだ見ていない部分』が多い所からモニタリングしましょう)
『管理者』はそう決めて、右のグループのウィンドウを拡大表示したー。