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志望-戻り始める日常-

「ーお願いします、どうか私を『ライトクルー』にして下さいっ!」

『目的のルーム』に入ると、『待ち合わせ』の人物は古代文明より伝わる伝説マナー『ドゲザ』で俺に頼み込んで来た。

 ーさて、何でこんな状況なのかというと…。

 まず、今日の業務は昼までだったので『とある場所』に行こうとしていたのだが、ロゼが急に『カノンよりメッセージが来ました。-直ぐに、地上基地へ向かって欲しい-との事です』と言ったので急遽地上基地に行く事になったのだ。

 そして、いつもは『変装』の為に使わせて貰っている情報班の業務ルームに入ると、サンライトイエローの髪をサイドテールにした気弱そうなガイノイドのヒトがいきなり『志願』して来たのだ。

『………』

「…えー、『フェーズ』跳び過ぎじゃないですか……」

 当然、居合わせた情報班の人達も同行してくれたロゼも皆唖然とし俺も若干困惑していた。

「…えっと、とりあえず頭を上げてください」 

「…は、はい……」

 とりあえず、彼女の前に腰を下ろし『ドゲザ』をキャンセルさせる。すると、彼女はオドオドしながらも素直に頭を上げた。

「(…良かった。…『オッケー出すまでは意地でも頭を上げないタイプ』じゃなくて。)

 ーロウ中尉。申し訳ありませんが、隣の休憩ルームをお借りします。宜しいでしょうか?」

『面倒なタイプ』でない事に内心ホッとしつつ、ロウ中尉に許可を求める。

「構いませんよ」

「ありがとうございます。

 ーじゃあ、『契約』についていろいろとお話しを聞いたりお話する事があるので場所を変えましょう」

「…っ!は、はいっ!」

 まあ、困惑はしたが『願ってもない状況』なので直ぐに切り替える。すると、彼女はパアッと明るい顔になり急いで立ち上がった。…てか、どう見てもフェンリーと『同級生』っぽい外見だよな。

 今まで『ライトクルー』になった『セブンガードナー』はタイプの違う成人女性な外見だっ4が、彼女は『ハイクラス(高等部)』な外見だった。…まあ、『ミドル(中等部)』の外見の『サブ・メカニック』も居るからさほど意外ではないが。

 先に彼女を休憩ルームに入れつつ、『個性』について考える。…というか、良くこんなバリエーションがあるよな。それも、『研鑽の銀河』故だろうか?


「……あの?」

「ああ、すみません。どうぞ、奥の方にお掛けください」

 若干深く考え始めてしまったていると、彼女は不安そうにしたので思考を止めソファーに座るように言った。

「…は、はい」

「…っと」

 彼女は言われた通りの場所に座り、俺はテーブルを挟んだ対面に座る。

「…そうだ。まだ、『名前』を聞いていませんでしたね」

「…あっ。…失礼しました。

 ー私は、『メアリー』と申します」

 ふと、名前を確認すると彼女はペコリと頭を下げスッと名乗った。

「なるほど(…レスポンスが早いのはありがたいが、どうゆう由来なんだろうか?確か、『友人』の名前とも違っていたし…)。

 では、マリアベルさん。本日は、『ライトクルー』に志望して頂き誠にありがとうございます。

 …ところで、どうしてこちらがスカウトする前に志望されたのですか?」

 気になる事はあるが、とりあえず前置きをしてから本題…『ゲリラ的な志望』をして来たのか聞いてみた。

「…えっと、その……。

 ーじ、実は、『貴方』の事を『研ー』…調べたくて……。それで…、『今までのパターン』から考えて私にも『スカウト』が来ると予想し、ならば、志願したら許可が出ると思いまして……」

「そうでしたか(オイ、今『研究』って言わなかったか?…それに、こっちが出向くのを『待ちきれない』から志願したって言ってるようなモノじゃないか……)。

 ー随分と、パンチが効いている方ですね」

「ーっ!…あはは、お恥ずかしい限りです……」

 なんとなく直接感想を伝えたら、彼女は頬をポリポリしながら赤面する。…うん、気弱な外見に騙されそうになるが彼女も『ウチ向き』な性格してる。

 そう分析出来たので、俺は次の質問をした。

「…で、どういう部分が気になったんですか?」

「…そうですね。

 ー知っての通り、私は『同胞』達の協力の元貴方達を『コピー』しました。

 身体能力は勿論、バトルスタイルや『思考パターン』等も。…その中で、私は貴方の『思考』に興味が引かれたのです」

 …と、最後には彼女は若干興奮した様子で言った。多分、隠す必要がなくなったからだろう。


「(…多分、きっかけは『連続エラー』だろう。あれは、単純に『無理をしない為』なんだが

 …。…そこに『何かある』と気付くあたり、『副産物』由来の存在はやっぱり『面白い』。)…なるほど。

 …では、『審査』の結果をお伝えしましょう。

 ーこれから、宜しくな。メアリー」

「っ!はい、宜しくお願いします!」

「んで、肝心の『ポジション』だが…。

 君には、コピーロイドの製作経験を生かしたポジション…主に『スニーキングミッション』のサポートをして貰うつもりだ。勿論、1人ではなくセリーヌやシャロンと共同でな。

 まあ、今の所そういった『オーダー』はないから『基本的には自由』にしていて構わない」

「…っ。…分かりました」

『察した』彼女は、『探究欲』丸出しの笑みを浮かべるのだったー。



 ○



「ーあ、ブライト先生。こんにちは」

『こんにちは~』

 数10分後。俺は、当初の予定通り『目的の場所』…病院に来ていた。すると、受付フロアでフェンリーさん達と出くわした。

「こんにちは。…どうやら、『目的』は同じようだね?」

「…あ、ブライト先生もハミルトン先生の事を聞いたんですか?」

 すると、ついこの間『事情』を知ったリコが聞いて来る。…そう、実は昨日の夜『トリ』から通信があり『患者達のリハビリが完了したので、一般病棟に戻す』と報告を受けていたのだ。

「正解。いや、ホントビックリしたよ…」

「…あはは、私達なんて授業以外の時はずっと気が逸っていましたよ」

「…でも、良かったです……」

 正直な感想を言うと、グループの生徒達は本当に嬉しいそうな感想に感想を口にした。

「(…ホント、良い先生だな。)…さて、それじゃ『行こう』か」

「……え?面会の申し込みが…」

『……?』

 しみじみそう思いつつ、生徒達に声を掛けて受付…ではなくそのまま病棟行きエレベーターに向かい始める。当然、彼女達は困惑した。するとー。

『ー面会予約サレタ、ブライト様デスネ。ハミルトン様ノ病室ニゴ案内致シマス』

「ありがとうございます。…ほら、行くよ」

 エレベーターホールの方から、案内ドローンが飛んで来た。…それを見て、彼女達は更に混乱するがとりあえず呼び寄せた。


『……っ!』

 直後、彼女達はハッとし早歩きで近いて来る。

「…あ、すみませんが、彼女達も『追加』でお願い出来ますか?」

『問題アリマセン。少々オ待チ下サイ。

 ー面会人数、変更完了。ソレデハ、改メテゴ案内致シマス』

 …おわー、急遽人数が増えたのに見事な高速対応だな。やっぱ、都会の病室って凄いな…。

 俺はまたもや田舎思考を出しながら、状況が飲み込めていない彼女達と共に案内ドローンの後に続いた。

「ーこんにちは。ブライト先生、皆さん」

『……』

「こんにちは、ハミルトン先生(…おお)」

 そして、俺達はハミルトン先生の居る一般病室に案内されたのだが…入った瞬間、生徒達は固まり俺は改めて心底感嘆した。

 ー先生はドア付近のベッドに『腰掛け』て居たからだ。…つまり、ほぼ完全に身体は『元通り』になったという訳だ。

「…先生、お久しぶりです」

「そうですね。大体、1ヶ月ぶりくらいでしょうか」

 まず、生徒の代表としてフェンリーさんが挨拶する。…その声は、少し震えていた。

 すると、先生は非常に優しい声で返した。…

 はあ、深い絆を感じるな。

「…本当に、もう、大丈夫なんですか?」

 続けて聞いたのは、リコだ。…まあ、『原因不明』の症状が快方に向かっているんだから当然だろう。

「ええ。私や他の先生達も、ほぼ日常生活を送れるところまで回復しました。

 ただ、一応念のためもう2~3日様子を見るそうなので復帰は今週末くらいでしょうね」

「…っ。……本当に、良かったです……」

 その回答に、彼女はうっすらと涙を流した。…余程、嬉しいんだな。


「……」

「…こら、先生が困ってるだろう。

 でも、こうして元気な姿でお会い出来て良かったです。

 ーこれで、何の気兼ねなく…そして安心して『次の場所』に行く事が出来る」

『……っ』

 その言葉に、生徒達はハッとした。…そういえば、なんかタイミングが合わなくて伝え忘れていたな。

「…そうか。だから、『直接話しがしたい』と言って来たんですね?」

「…すみません。朝早くに連絡してしまって」

「構いませんよ。…『寝過ぎた』せいか、目が覚めるのが早くなってしまいましたし」

「…ああ、それでー」

「ー…ちょ、ちょって待って下さい……。

 …もしかして『兄さん』、『最後の場所』を見つけたんですか?」

 そのまま和やかに会話をしていると、リコが話しに割り込んで来た。

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