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Seven Mystery⑥-限界-

 ー刹那、俺は頭上でバトンを高速で回転させる。

「『乱回』」

 直後、高速の連続突きが降注ぐが一撃たりとも俺に当たる事はなかった。…ふう、危ない危ない。

 戦闘開始から数10分経ったが、相手の『ギア』はかなり上がっており『なかなか』に手強くなっていた。

「『瞬突』」

 おかげで、大分身体は暖まって来たので俺も少しずつ攻めに転じられた。…しかし、まだまだこっちも『ギア』が上げ足りないのでまだ『ヒット』は出せていない。

 だが、既に『攻略法』は見つかっているので焦ってはいなかった。

『ーギア-トリプル-アップ』

 …お、一気に『3段階』上げて来たな。…まあ、『偽装』で隠された『弱点』を連続で狙ってんだから当然か。

 最初は一定時間回避してると『1段階』づつ上がり、その状態の攻撃を防ぐと『2段階』づつ上がっていたのだが、それでも余裕で立ち回る俺にとうとう相手は『本気』を出したようだ。…だがー。

「ッ!(『マズい』…っ)」

 相手は今までと違い一向に動く気配がなかったのだが、俺は『その状態』を見て直ぐさま全力回避を始めた。…っ、『消えた』……。

 勿論、回避しながら相手を視界に入れてはいたのだが…とうとう相手は、俺でも『捉えられないくらい』のスピードで行動を開始した。

「ーっ!」

 それから大体3秒後、相手の気配を目と鼻の先に感じそのままジャンプする。

 直後、真下で相手は高速の突きを放っていた。あのまま進んでいたら、即『ゲームオーバー』だっただろう。


「ー…っ」

 しかし、相手は直ぐさま頭上を跳ぶ俺に向かって突きを放って来た。なので、俺は身体の正面にバトンを構え更に足でそれを挟んだ。

 次の瞬間。2つのバトンは激しくぶつかり合い、俺は後ろに飛ばされた。

「…っと」

 そこから更に数秒空中散歩をした俺は、体勢を崩さず床に着地する。そして、再度全力回避を始めた。

「ーっ!『背衝』」

 直後、背後に気配を感じたので適当に後方に向かって片手突きを放った。…お、離れた。

 どうやら、『弱点』に命中しそうだったのか相手は緊急回避で離れた。

「……っ。

 ーコォォォォォッ!」

 そして、今度は右サイドから気配を感じる。…なので、『リミッター』を少しだけ外し速度を上げる。

 そして、数秒後。相手は俺の直ぐ後ろを通過して行った。…『ギリギリ』か。

 直ぐに『元の状態』に戻しつつ、僅かに冷や汗を流す。

『ーギア……。ギアアップ、キャンセル。再申請。キャンセル』

 すると、相手はまたギアを上げようとするが……どうやら『管理者』と揉めているようだ。

 なので、クールダウンも兼ねて回避スピードを緩めた。…まあ、『実戦』だったら迷わずこの『最大のチャンス』を生かすんだが今は『楽しい時間』だしな。それに、目の前で起こっている『現象』にもちょっと興味があるので観察してみる事にした。

『ギアアップ、カウント設定。10カウント

 ー実行』

 どうやら、『10カウント』の間だけギアアップが許可されたようだ。…直後、視界から相手は消える。

「ー『乱回』」

 多分回避は無理だろうから、俺は足を止めてその場で回転した。すると、直ぐに相手のバトンが弾かれた。…今度は、『上』かな。

「『乱回・剛』」

 次の行動を予測し、足を広げ腰を落とし踏ん張りを利かせながらバトンを頭上で高速回転させる。



 ー次の瞬間。一撃一撃が重く尚且つ高速の連続突きが降注いだ。…っ!『師父』と同格か。…はあ、後どれくらいで『このレベル』に到達するんだろうな。

 俺は猛攻を凌ぎながら、『未来の自分の姿』である相手をチラ見した。…要するに、このアンドロイドは『可能性さえもコピー』しているのだ。ホント、『副産物』由来の『特殊存在』は最高に『面白い』。……?

 思わずニヤリとしていると、ふと相手の攻撃が緩くなった。…そして、そうこうしている内にー。

『ーカウント0。……ミッション、失敗』

 俺から離れた相手は、そう結論付けた。…その理由は相手のボディの数ヶ所から僅かに上がる煙だ。まあ、『限界』を迎えたのだろう。

「ー『瞬突』」

 なので、すかさず高速の突きで接近し相手の『弱点』を攻撃した。

『ーゲームセット。WINNER、チャレンジャー』

 すると、相手はこちらの勝利宣言をした。…おー。

 その瞬間、俺はそのフロアから『別の』コロシアムの観客席にワープしていた。

「ーお見事です、オリバー」

「やるわね」

 直後、後ろからセドリックさんとカルナさんが声を掛けて来た。…あれ?……あ。

 反対側に目を向けると、『暗い』空気が漂っていた。つまり、ジャスティンさんを始めとした同年代のメンバーはほとんどが負けたという事だ。

「まあ、私達も相当苦戦しましたが…。…女史は『そうでも』ないようです」

 ……?…へぇ。

 何で分かるのかと思い振り返ると、クリアしたベテラン達は皆エアウィンドウを展開していた。どうやら、『他のフロア』の様子を観戦出来るようだ。


 ー…良し。

 シートを見ると、『観戦』と書かれたボタンがあったので押して見る。すると、いくつかのフロアの様子が表示された。

 えっと、今『試練』の最中なのは女史と……あ、シルバー組は全員終わったな。…それと、『プラトー』か。

 ざっと確認し、女史と『彼』のウィンドウを拡大する。

『ーよっ!ほっ!せいっ!ほっ!』

『…っと』

 ちょうどその時、女史は見惚れる程のアクロバティックな動きで相手の『ワイヤー付きナイフ』の連投を躱していた。一方、『彼』は的確に相手の拳を避ける。

『ふう。…おや、もうおしまいですか?』

 あれだけ激しく動いたのに…いや、観る前の時点でかなりの攻防があった筈なのだが女史は全く息が乱れていなかった。…スッゲぇスタミナだな。

『…ふむ。そろそろ-良い-でしょう』

 それは、『彼』も同じだった。…まあ、そもそも『彼』は疲労とは無縁の身体だからな。そして、あの口振りから考えるに今までは『観察』していたのだろう。

『…では、こちらの番ですね』

 女史はそう言うと、素早く駆け出しつつ背中のバックパックでワイヤーを巻き取り散らばったナイフを回収していく。…それに、なかなかに重いあれを背負ってあれだけの『パフォーマンス』だもんな。レベルが違う。

『ギアアップ。…カウント1ー』

『ー隙だらけですよ』

 その動きを見た相手は、すかさず『タイマー』を設定してギアアップをするが…その動作が命取りになった。

 直後、女史はナイフを放ち相手の足と関節に命中させていく。そして、間髪入れずにボルトショックが相手の脚部を襲う。



 ー当然、相手はそこから動く事が出来ず女史の放ったナイフを弱点に受けた。

『ーゲームセット、WINNER、チャレンジャー』

 そして、女史も無事にー。

『ーっ!?』

 その時、『彼』のウィンドウの方から激しい音…まるで高速で動く物体が障害物にぶつかったような不安を煽る音が聞こえた。当然、ベテラン勢でさえもその音に冷や汗を流す。

『ーおっと、失礼しました。-軽く-投げたつもりですが、どうやら想定以上に-軽い-ようですね』

 …まあ、分かっていたが投げられたのはメタリックボディの見た目まんまな重量を持つ相手だ。

「…嘘でしょ?」

「…オリバー、ひょっとして?」

 カルナさんは、壁に叩き付けられた相手を見て唖然とする。そして、セドリックさんは『確認』して来た。

「ーええ。あの人も、私と同じ『体質』です(まあ、俺のと違って『デメリット』はないんだけどね…。…いや、ホント恐ろしい)」

『肯定』しつつ、若干の冷や汗を流す。…実際、祖父ちゃんと2人だけの時はあの『パワー』でサポートしてらしいし……。だから、逆に『武装』を装備させて『セーフティ』にしたんだよなぁ。

「…やっぱりか……」

「…まさか、『ビックリ人間』がもう1人居たとはね……」

 2人がやや引く中、相手は素早く起き上がり周囲を確認する。…何故なら、『彼』は既に高速で動き回っていたからだ。そしてー。

『ーふむ、やはり頑丈ですね』

『彼』は容易く相手の背後に回り込み、がっちりと胴体をホールドした。

『ならば、-これぐらい-なら大丈夫でしょう』

 当然相手は離脱を試みようと肘や足で反撃するが、『彼』ダメージを受けるどころか全く意に返さずそのまま相手を持ち上げ、その頭を再び壁にめり込ませた。


『………』

 いや、マジて容赦ねぇな…。

『ふう。…ミッションコンプリート』

 その光景を見ていた全員が言葉を失うなか、『彼』は弱点をタッチしながら宣言した。

『ーゲーム……セット、WINNER……、チャレンジャー……』

 すると、相手は胸部から『なんとか』ボイスを出しコールしたのだった。

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