ーSide『レディ』
「ーっ!………はあーーーー」
無事にゴールにたどり着いた瞬間、また『フロア』が光に包まれた。そして、気が付くと『安全』な迷宮の通路に戻っていた。…その瞬間、ホムラは緊張の糸が切れたのかガクッと脱力し深い安堵のため息を吐いた。
「…大丈夫ですか?」
「……なんとか」
「いや、ホントヤバかったですね……」
「…ええ」
ルイゼは片膝を床に付けるホムラに肩に手を乗せ心配する。…一方、リーサとカルナも冷や汗を流していた。
ー何せ、さっきまで彼女達は『サイレント』のフロアに挑んでいたのだ。勿論、『スニーキング』のシューズは事前に配布されていたが……それだけしかなかったのだ。
しかも、マップは『ノイズ』が発生しやすい『データ・フォレスト』なのだ。…そして、『エネミー』も大型で獰猛な『原生生物』がフロアの至るところに配置されているともなれば、いかに彼女達が緊張感を持って行動したかが分かるだろう。
「…確か、制限時間はなかった筈だから少し休憩をー」
ホムラの消耗を見たカルナは、『ルール』を思い出し休憩を提案する。…ベテランである彼女も、若干精神的な疲労が蓄積されていたのだ。しかし、いざ休もうとした時またまた彼女達の前に『アイテムボックス』が出現した。
「…皆は、休んでいて」
「…すみません」
「お願いします…」
「…します」
暫定的なリーダーである彼女は、3人にそう言いアイテムボックスに近いた。…既に床に座り込んでいた3人は申し訳なさそうにしていた。
「ー……っ(…なんというか、凄く『手厚い』わね)」
そして、慎重にアイテムボックスを開けた彼女は『中身』を見て…少しぽかんとしてしまった。…だが、『今必要』なのは確かなので一応安全かどうかチェックし『それら』を持ってメンバーの元に戻った。
「皆。大変有難い事に、『回復アイテム』が入ったよ」
「「「……へ?」」」
「はい、ホムラ」
「…あ、ありがとうございます」
当然、その言葉に3人は唖然とするがリーダーは気にせず一番近いホムラに『アイマスク』と『大きめのクッション』を渡した。…とりあえず、彼女はそれらを受け取る。
「はい、ルイゼ。…んで、これはリーサね」
「「…ありがとうございます」」
そして、残りのメンバーにもそれを渡した。その後彼女はアイマスクを装着しクッションをお尻の下に引き寛ぎ始めた。…すると、彼女の周囲に『優しい光のエフェクト』が発生する。
「「「………。…っ」」」
その慣れた様子に3人は顔を見合せるが、とりあえず使ってみる事にした。…すると、目元とお尻はほんのりと『温かく』なり若干の眠気が発生する。
「……あふ。…っ」
それに抗う事の出来なかったホムラは、壁に寄っ掛かろうとした。すると、いつの間にか『柔らかい背もたれ』が出現していてー。
「「「「ー…………っ」」」」
数分後には、4人共すっかり回復していた。…そして、彼女達が立ち上がった瞬間『回復アイテム』はその場から消えた。
「…いや、マジでスッキリした」
「…それにしても、何で『回復アイテム』が?」
ホムラはすっかり元気を取り戻していたが、リーサは首を傾げる。…その答えは、カルナが持っていた。
「多分、『次が最後』だからでしょう」
「…はい?」
「…どういう事ですか?」
「『こういうゲーム』には良くあるでしょう?『ボス戦前のセーブ&リカバリースポット』みたいな感じのエリアが」
カルナの口からは、意外な言葉が次々と出て来た。実は、彼女は『サイバーゲーム』を趣味にしているのだ。だから、このチームは此処まで攻略出来たのだろう。
ちなみに、メンバーの3人もそこそこゲームをやるが彼女のように『様々なジャンル』はやっていない。…そもそも、『こっち』のキャリアも凄いので比べる事事態間違っているのだ。
「…あー、そういう感じですか……」
「…つまり、『製作者』の『手厚いサポート』って事ですか……」
「…うぅ、なんか気が重くなって来ました……」
その予想を聞いた3人はガックリと肩を落とすのだったー。
ーSide『ガイ』
「ーそれにしても、2人は随分と色々なジャンルをやっていたんですね」
「まあ、始めたきっかけは純粋に『目立ちたい』というモノでしたが『活動』すると決めてからは、『トレーニング』目的でしたね」
「ですね。…まあ、『趣味半分』って感じですが」
回復を終えたセドリック、ジャスティスン、ニールの3人は再び迷宮を進んでいた。その最中、セドリックはまた2人の『経験』に興味を持っていた。
すると、2人は簡潔に答えた。
「…なるほど。…ふむ、君達の話を聞いていたらなんだか私もやりたくなって来ましたね」
『遊びながらトレーニングが出来る』という感想を持ったベテランは、ポツリと呟く。
「良いと思いますよ」
「ですね。セドリックさんなら、短い期間でレコード更新もあり得ますよ」
「はは、ありがとう。
では、今後は此処のように『サイバーアクティビティ』がある星系に行った時にでも息抜きがてらトライしてみます。……?」
若手2人の言葉を受けた彼は、笑顔で応えた。…その時ふと、彼は足を止める。
「…どうしました?」
彼から緊張感を感じたジャスティンは、意識を切り替え確認する。一方、ニールは武装ウィンドウからシールドを取り出した。
「…どうやら、『ゴール』のようです」
「「…っ」」
その言葉に、2人はより一層集中した。…経験上『そのままゴール』は出来ないと知っているからだ。
「…やはり、2人が同行してくれていて良かった。
その様子だと、『最後の関門』があるようですね?」
「はい」
「間違いないでしょう」
「…なるほど。
ちなみに、『どんなの』か予想は出来ますか?」
「…そうですね……」
「うーん…」
セドリックの質問に、2人は考え込む。…直ぐに答えられないのは『パターン』が多すぎるからだ。
「…ひょっとして、『幾つもパターン』がありますか?」
その様子から、セドリックは正確な予想をしたので2人は頷いた。
「…そうですか。
ーでは、悩んでも仕方ないので行くとしましょう」
「「…っ。了解」」
そして、セドリックは実に『ゴールド傭兵』らしい大胆な決断をした。それを聞いた2人は驚いたりその豪胆さに敬意を抱きながら頷いた。
ーその後、今までより広い通路に出た3人は『いかにも』なドアの前に立つ。
「…うわー、凄く『分かりやすい』ドアだなー……」
「…あれ?でも、『反応』がないですね?…道中、『キー』や『ヒント』は入手しなかった筈ですから近いた瞬間『バトル』がー」
その『所々サビのイラスト』の施された巨大なドアを見たジャスティスは、苦笑いを浮かべる。…しかし、いつまで経っても『バトルイベント』が発生しない事にニールは此処までの過程を振り返りながら首を傾げていた。…その時、『何か大きなモノが落ちる音』という非常に『分かりやすい』SEが背後から聞こえて来た。
「「……」」
「…ほう。なかなか『凝った趣向』ですね。
まるで、若い頃見た『アドベンチャー系のホロムービ』のような展開だ」
若手2人はビビるが、『こういう事に激慣れしてる』ベテランゴールド傭兵は過去を振り返り懐かしむ余裕を見せた。
「「………。…っ」」
2人は、ベテランと同行出来た幸運に感謝しながら『それ』が来るのを待った。…そして、『それ』は姿を現した。
「「「ーっ!」」」
直後、巨大でメタリックな『それ』は突如大ジャンプし彼らの頭上を通過してドアの前に立ち塞がった。当然、3人は構えるがまるで『ジャイアント』のようなシンプルなデザインの『それ』は何もして来なかった。…それどころかー。
『ーマズハ、迷宮クリアオメデトウゴザイマス。
サテ、恐ラク予想サレテイルト思イマスガ後ロノ-ゴール-ニ進ミタイノデアレバ-私-ヲ倒シテ下サイ』
ジャイアントロボットは彼らを称え、そして『挑発』をする。…つまり、このジャイアントロボットこそが『ゲートキーパー』なのだ。
「分かりましたー」
すると、セドリックは既に出していた『データ天気ライフル』のセーフティを解除してゲートキーパーに向ける。
「それでは、『攻略』を開始しましょう」
「「了解!」」
彼が開始を告げると、2人は力強く返事をするのだったー。