ーSide『レディ』
「ーっ」
ゲートをくぐると、また同じようなプレーンなフロアがカルナ、ホムラ、ルイゼ、リーサの前に広がった。
ただ、さっきのフロアと違うのはフロア内に4つの『エアウィンドウ』がある点だ。
「…何んですか、あれ?」
「…とりあえず、見てみましょう」
「…『トラップ』とかじゃないんですか?」
カルナは確認しようとするが、リーサは不審に思い止めようとする。しかし、当人はー。
「ー『トラップ』なら、もうちょっと『上手い偽装』が掛けられていると思うわ。…あれは、あからさま過ぎる」
「…言われてみれば。
んじゃ、大丈夫なんですか?」
分析を聞いたリーサは納得し、少し警戒を解いてエアウィンドウに近いた。勿論、予想を口にしたカルナも彼女の言葉を信じたホムラとルイゼも空いているエアウィンドウに近く。
そして、4人は殆ど同時にエアウィンドウに触れた。
「「「「ーっ」」」」
すると、エアウィンドウに『Your Weapon』と表示されたかと思ったら4人の目の前に愛用する武器と同形の『データウェポン』が出現した。
「…驚きましたね」
「…どうして、普段使いの武装が?」
「なんか、怖くなって来ました…」
「……」
4人は困惑しつつ、とりあえず武器を取る。…すると、エアウィンドウに新たなワードが記載された。
「ー『武装収納』。…なんで、『リアル』での収納場所まで把握されてるのよ……」
「…後でキャンプ・プラトーやお姉様に聞く必要がありますね」
「…え、なんでですか?」
「…あのお二方が、何故?」
「…多分ですがー」
カルナは『その2人と近い予想』を口にする。…その予想に3人はかえって怖くなった。
「…え、マジでですか?」
「…それってつまり、『オメガネ』にかなわないと『ダメ』って事じゃないですか。
「…正直、不安です」
「…まあ、今は攻略に集中しましょう。…『先』の事に囚われ過ぎて『失敗』したら、それこそ『ダメ』ですから」
「…はあ、流石元お姉様の船のクルーですね。…けど、確かにカルナ先輩の言う通りだね」
「…良し、行きますかっ!」
ベテランの言葉に、3人は気持ちを切り替えつつ武装を『収納』した。すると、エアウィンドウは消え壁に『ゲート』が出現した。…その真上には、ご提案に『START』と表示されていた。
「…どうやら、この先から『メイン』のようですね」
「…『ワクワク』半分、『怖さ』半分な感じだね」
「…それじゃー」
必然的にこの中で一番の『お姉さん』であるカルナが合図を出し、4人は一斉に素早くゲートを通過したー。
○
ーSide『アタッカー&フルバック』
「ー『4クロック・3エネミー(4時の方向・敵性個体3)』!」
フルバック(後衛)のニールが的確な情報を叫ぶと、その方向近辺を警戒していたジャスティスが『データ・ハルバード』を構えた。
「そぉいっ!」
そして、『攻撃ドローン』が攻撃範囲に入って来たので彼はハルバードを横に振るう。すると、ドローンは真っ二つに割れ『デリート』される。
「そりゃっ!」
間髪入れずに、彼はその場で一回転する。直後、接近していた2体のドローンにハルバードのエッジがかする。
「ふんっ!」
ドローンは一旦後退するが、彼はすかさず距離を詰め右のドローン目掛けてハルバードのスピア部分を突き刺した。
「ラストッ!」
そして、最後の一体目掛けてジャンプしハルバードを振り下ろす。…すると、ドローンはボディの一部分を開き『銃口』を付き出した。恐らく、レーザーで迎撃しようとしているのだろう。
「ーさせませんよ」
しかし、ニールは素早く手のひらサイズの平べったいディスクのようなモノを彼の方に投げた。
直後、ディスクから『データ・シールド』が展開しドローンから放たれたレーザーからジャスティスを守った。
「サンキューッ!オラッ!」
そして、すかさずジャスティスの痛烈な一撃が最後のドローンを破壊した。…それを見ていたセドリックは思わず拍手する。
「いや、お見事ですね。
ジャスティスンの近接スキルもなかなかですが、ニールも素晴らしいアシストでした」
「あはは…。恐縮です」
「まあ、『これ』で日々身を守って来ましたので…」
ベテランの称賛に、ヤング2人は若干照れていた。…そんな中、ふと『果てしなく広い草原』が光り出した。
「「「っ!」」」
3人は身構えるが、草原は『元の薄暗い通路』に戻るだけだった。…実は、先程まで彼らはこの通路を進んでいたのだが突如『果てしなく広い草原』に変化したのだ。
「…ホント、サイバー空間って何でもありですね」
「…そう考えると、様々な『非現実的』な事象が『リアル』に存在している『彼』の船は相当凄い存在ですね」
「…恐らくですが、あの船はー」
「「ーっ!」」
セドリックが『予想』を始めようとすると、ふとポップな『SE』がどこからか聞こえた。そして、次の瞬間彼らの目の前に『いかにもなボックス』が出現した。
「…いや、ホント『ゲーム』ですね」
「…此処の『プログラマー』は実に良い趣味してますね」
その現象…言うなれば『ドロップシーン』に若手2人は思わずニヤけた。多分、子供の頃この手のジャンルのモノをプレイしていたのだろう。
「…少し、羨ましいですね。
私が子供の頃は、こういった類いの娯楽は一握りの富裕層のモノでした。
まあ、故郷の近所の『その子』は自慢ついで私のような一般家庭の子供達に使わせてくれるとても優しい子でしたが」
「なるほど…」
「…いや、凄く『ご近所』に恵まれていますね。私には、そっちの方が羨ましいです」
セドリックが当時の事を嬉しそうに懐かんでいると、ニールは少し曇った表情でそう言った。…それに気まずさを感じたジャスティスはー。
「ーと、ところで、『アレ』には一体何が入っているんでしょうね?」
「…とりあえず、確認してみましょう」
セドリックも、気まずさを感じていたのかそそくさとボックスに近いた。勿論、慎重に。
「ーっ。すみません、気を遣わせてしまって」
「…色々と大変だったんだな」
少しして、ニールはハッとして2人の後を追いかけ申し訳なさそうにした。すると、ジャスティスは同情の目と言葉を向ける。
「…ええ」
「……?」
ニールは、ただ頷くだけだった。…一方、セドリックは中身を見て固まっていた。
「…どうしました?」
「…これ、『どうする』と思いますか?」
ジャスティスが確認すると、ベテランの彼は『見慣れているかも知れない』若手2人に『それ』を見せた。…それは、一見すると小さな『なんの変哲のない立方体』だった。
「…どう見ても、ただの四角い物体ですね」
「……あ、もしかして『あれ』じゃないですか?」
「…あ、そうかも」
ニールが指を立てながら言うと、ジャスティスはハッとした。…セドリックの予想通り、どうやら心当たりがあるようだ。
「…えっとですね。多分ですが、特定条件下でオート発動する『サポートアイテム』だと思います」
「ほう。…例えば、どういう『シチュエーション』で?」
「そうですね。基本的には、『ピンチ』な状況ですね。
突如リバーに落っこちたりした時は
『ホバークラフト』。高所から落下した時は、『パラシュート』とかがオートで出てきます」
「…このサイズのモノに。いや、『サイバー』だから出来る芸当か。
しかし、そんな『シチュエーション』が起きるとは随分と『スリル』なゲームをプレイしていたんですね」
一例を聞いたセドリックは、再びまじまじと立方体を見つめた。そして、多分『王道RPG』や『スポーツ系』を好んでプレイしていた彼は驚きながら2人を見た。…恐らく、今は危険の伴う『傭兵』をしている彼も幼少の頃は『怖がり』だったのだろう。
「まあ、そういうのが多かったってのもありますね」
「私の通っていた『エレメンタリスクール(小学校)』ではゲームの成績=人気者みたいな風潮がありましたから。必然的に、こぞってプレイしていました」
「…はあ、やはり羨ましいですね。
ーおっと。それでは、攻略を再開するとしましょう」
「「ラジャー」」
またしても、若手2人を羨むベテランはふと意識を切り替える。直後、2人も直ぐに意識を切り替えるのだったー。