「キャプテン・グリフォン。どうぞ」
「はい。
私が聞きたいのは、その『7人の責任者』の担していたプラントの実験内容と位置です。…おそらくですが、その中に『6つ目』と『7つ目』に関わるモノがある筈です」
ゆっくりと立ち上がったグリフォンさんは、『これから先の試練』を予想する為の質問をした。
「…学長先生って、『他の所』の内容って知ってますか?」
「ええ。実は、他『6ポイント』の研究人員とは良く休暇日にこの首都宇宙港の大衆酒場やフードコートで呑んだモノです」
「なるほど。…その人達とは、今も?」
「勿論、『今も交友関係』が続いていますよ。
ー何せ、彼らは今や『私と同じ』や準ずる立場の人間ですから」
「…っ(まさか、学長やコース主任になっていようとは。…よほど、『実験プラント』での日々が素晴らしいかったんだろう)」
「さて、まずは私が勤務していた『スペースファーム』の事をお話ししましょうー」
そう言って、学長は簡潔に答え始める。まあ、その内容は完全に今までの『試練』を連想させる内容だった。…だが、此処で『面白い事』に気付く。
「ーそして、『C-67』…通称『コピープラント5』では『様々なアースプロの動きをトレースさせたアンドロイド、ガイノイドを元となった人物と競わせる』という実験が行われていました。
ちなみに、お察ししました方も居ると思いますが、この実験プラントがあったのも『第7惑星』の近辺になります」
そう。今までの実験プラントも全部第7惑星の近辺にあったのだ。…狙ってるな。…ただ、さっき見た時には比較的『新しい』建造物しかなかった事を考えると、やっぱり『条件』が満たされないと『見つからない』仕組みになっているんだろう。
…それにしても、ホント色々な事やってるよな。多分、その実験は『テラフォーミング』に転用されたのかな?それか、アンドロイド・ガイノイド用の『ラーニングシステム』だろうか?
「そして、7つ目の『S-77』…通称『ノーマルワールド』ではかなり異色の実験が行われていました」
『……っ』
学長の前置きに、女史やメンバーは息を飲む。…『ノーマル』と書いて『ノーマル』ではないとか、どんなフェイントだよ。
「そこでの実験は、他の全プラントと比べても『かなり楽』なのです。
ー何せ、基本的に『普通に生活』するだけなのですから」
『……え?』
メンバーは耳を疑った。当然だ。まさか本当に『ノーマル』な実験だったとは。…だがー。
「勿論、『課題』やバイタルチェックもありますがそれ以外の部分は本当に『地上と変わらない生活』を送っていたそうです
当然、『職員』の基準も『健康的な生活を送れる人』や『生活アドバイザーの資格持ち』となっています」
…だろうな。……しかし、これは『困った』ぞ。
その内容を聞いた俺達は頭を抱える。
何せ、『想像がつかない』のだ。
「……ありがとうございます。学長殿」
「いえ。…というか、肝心な所でお役に立てずに申し訳ありません」
グリフォンさんは礼を言うが、学長は申し訳なさそうに謝罪した。勿論、女史は真っ先に首を振る。
「とんでもありません。
学長先生のおかげで、当初の目的である場所の特定は可能となりました。『そこから先』は、我々次第でしょう」
『……』
その言葉に、メンバーは頷いた。…まあ、例え予想出来たとしても『合ってる』かは実際やってみない事には分からいもんな。第一、今までだってほぼ『実力テスト』みたいなモノだったし多分『最後の試練』も『日頃から備えていれば』案外、あっさりと乗り越えるのかも知れない。
「…はあ、やはり貴方達は凄い方達だ。いや、『秘宝』を追い求める人達というのは本来『こうあるべき』なのかも知れませね」
「「……」」
こちらが誰一人として、『臆して』…むしろ『楽しそう』にしているのを見て、学長はそうコメントした。…少し離れた所に居るロランとリコなんかは呆気に取られながら周りのメンバーを見ていた。
それだけ、俺達は『独特な集団』なのだろう。
「…さて、他に質問のある方は?」
『……』
『終わり』の雰囲気になっているが、一応聞いてみる。だが、案の定挙手をする人は居なかった。
「それでは、以上で質問を終わらて頂きます。
学長先生、誠にありがとうございました」
「皆さんを代表し、私からもお礼を言わせ下さいませ。
感謝致しますわ、学長先生」
「…どういたしまして」
女史と俺の礼を受け、学長は珍しく照れながら返した。…さて、お暇をー。
「ーさて、堅苦しいお話しは此処までです。
次は、『楽しく』語らいましょう」
速やかに立ち去ろうとしていると、ふと女史がパンと手を叩きそんな事を言う。…ちょっと待て、今『何時』だ?
なんとなく、女史の『心遣い』を察しデバイスで時間を確認する。…予想通り、間もなくランチタイムになろうとしていた。
「そういえば、貴方達はランチはどうなさるおつもりでしたの?」
「…地上の定食屋で済ませるつもりでした(あ、完全に『そう』だな)」
「なるほど。…ふむ、雨は落ち着いたようですがリコリスさんが居るとなると……」
「…へ?」
…ホント、気配り上手な方だ。雨天の移動で彼女のお気に入りのよそ行きの靴や服が雨で汚れるのを気に掛けてくれているのだ。
「…もし、宜しければ此処で一緒にランチをしませんか?
勿論、『皆さん』の分は私が持ちますので」
『へっ!?』
…いや、マジで『女傑』。まるで、息を吐くかのように提案したぞ。
その申し出に、学長さえも驚愕した。…当然だ。だって、『慣れている』俺もちょっと驚いているのだから。
「…いや、お心遣いは大変ありがたいのですが流石に申し訳ないですよ……」
「ならば、『情報提供』のお礼という形と『出会い』の記念という形でなら受け取っていただけますか?」
「……っ」
「学長先生。女史は一度決めたら、絶対に『引かない』方です。…此処は、ありがたくご厚意を受け取るとしましょう」
「ふふ、キャプテン・ブライトは良く分かっていらっしゃいますね」
「……分かりました」
そのやり取りを満た学長は、少し諦めたように提案を受け入れた。…まあ、多分『オゴられる』事に慣れていないというのもあるかも知れないな。
「さ、それでは好きな『メニュー』を選んで下さいね」
「「「っ!」」」
学長との『ネゴシエーション』が終わると、女史は俺達の前にエアウィンドウを展開してくれた。…おお、流石メンバーシップ制の高級ラウンジだけあってなかなかのメニューバリエーションだな。……あれ?
『………』
メニューを見ていた俺達は、ふとある事に気付いた。…どれもこれも、『お手頃価格』なのだ。
「お気付きになったようですね。実は、此処のラウンジは他の所と違って『奢る方・奢られる方双方にとって-負担-にならない価格設定』がされているのですよ」
「…へ?」
「…驚きました……。普通、『こういう所』って、地上の高級レストラン並みのお値段だと思うんですが……」
…まるで女史のような、気配りの達人だな。…となると、びっくりするくらい『融通が利いた』のも?
当然、兄妹は唖然としていた。…一方、俺は『入る時のサービス』について考える。
「察しが良いですね。ですが、考えるのは『頭に栄養が行き渡ってから』でも十分間に合うと思いますよ?」
「…それもそうです。ほら、皆さんもなるべく早く選んで下さい。
…とはいえ、メニューが多いのですぐには無理でしょうから午後のスケジュールで考えてみて下さい。
ちなみに、私達はこの後も宇宙港の『シアタースペース』とかで時間を潰すつもりです。
つまり、パン系の『軽食』にしようと思います」
一旦考えるのを止めて、メニューを選ぶ。だが、他の4人は未だに悩んでいたのでちょっとしたアドバイスを出した。
「…本当に、理路整然としていますね。ならば、私もこの後の事を考えて軽食にしましょう」
「…私は、キャプテン・ブライトと同じ物をオーダーします。その方が、『ハズレ』ない気がするので」
すると、学長と少尉は直ぐに答えを出した。…何か、やけに信用されているな。
「…じゃあ、私は『スイート』寄りの『これ』にします」
「…私は、『食べ応え』のありそうな『これ』を」
一方、リコリスとロランはそれぞれ好みを反映させたメニューを選んだようだ。…じゃあ、俺は『シーフード』がふんだんに使われた『これ』だ。
「決まったようですね。
それでは、オーダーをします」
「「「ありがとうございます」」」
「「…あ、ありがとうございますっ!」」
そして、最後に女史がオーダーを出したので俺達は礼を述べた。…その後は、リーズナブルな絶品メニューを食べながら『色々』な事を女史やメンバーと話し合うのだったー。